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第3回 薬にならずともよい植物たちの書

植物に関する書物といえば、長らく中国由来の薬用植物の研究書がメインでした。
しかし、戦乱の世を脱した江戸時代になって初めて、薬などの実用性を持たない園芸植物にも光が当たり始めます。そして時代を通して、競うように多くの「園芸書」が刊行されました。今回はその一端のご紹介です。

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ご覧のとおり、園芸書にも「育て方について」「斑入り植物について」など、それぞれ特色があります。また、「朝顔の花」「万年青(オモト)の葉」など、時代によって人々の関心を集める草花も変わっていきました。園芸家はこうした書を読みながら日々研究を重ねたのでしょう。

ちなみに、ご紹介した書は国立国会図書館のデジタルコレクションで読むことができます(ページ下部にリンクがあります)。
『草木奇品家雅見』『草木錦葉集』は、現代の図鑑ではあまり見かけないような斬新なレイアウトで、ページをめくるたびに見入ってしまいました。
写真にその姿を残すことが叶わなかった時代。目の前にある葉の模様、鉢まで含めた佇まいまで写し取ろうとした筆致に、それを見つめた人たちの熱いまなざしをつい重ねてしまうのでした。

(笹井さゆり)

【参考文献・Webサイト】
青木宏一郎『江戸の園芸-自然と行楽文化』ちくま新書
国立国会図書館「描かれた動物・植物 江戸時代の博物誌
国立国会図書館デジタルコレクション「花壇綱目
国立国会図書館デジタルコレクション「草木奇品家雅見
国立国会図書館デジタルコレクション「草木錦葉集
国立公文書館「江戸の花だより


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