「UP TO U mixed by IIDA」 リリース記念インタビュー [後編]
先日全国発売開始された「UP TO U」のミックスを手がけたIIDAのインタビュー前編では今までの音楽遍歴について伺いましたが、後半では今回のミックスの制作秘話〜コンセプトについてを伺いました!
JSK:この企画が持ち上がった時、自ら温めているコンセプトとして、スロージャムになったきっかけはあったのですか?
IIDA: いつかは一回まとめたいなと思っていたのがスロージャムだったんですよね。けれど、BONGBROS RECORDSから出すのはちょっとレーベルカラー的にも違うかな…と思っていたんで、いつかそういう企画物のMIXの話があったらやりたいなとやんわり考えていました。京都だけか分からないですけど、現場でスロージャムを朝方にかける文化っていうのが少なくとも自分の周りにはなかったですし、実際にスロージャムのレコード買っている人も周りにいなかったんですが、2年前ぐらいに呼んでもらった大阪のダンサーのイベントで朝方5:30にまだ結構な人数のお客さんが残っててスロージャムでみんな踊っているっていう衝撃の現場がありまして。意外とみんなこういうの好きなんやと思い、それで改めて一回まとめたいなと思っていたんで、今回の企画の話をもらった時に僕から内容の一つの案として候補に出させてもらいました。
JSK: スロージャムのレコードを熱心に買っている時期があったのですか?
IIDA: どちらかというと現場向きのレコードでは無いので、熱心に探すというよりは、タイミングで見つけたら買うという感じで。スロージャムの12"とかって結構プロモオンリーとかが多くてアルバムには入っていて知ってたけど、実は12”で切られていたとか、そういうのを見つけた時に買うという感じですね。
JSK: 実際今回スロージャム・ミックスを作ってみて感じたことはありましたか?
IIDA: 実際作ると決まってから考えると、頭の中で入れたい曲はめちゃくちゃあって、入れたい年代もさまざまだったので、レコード見ながら並べてみて頭の中でイメージ作っていったんですけど、実際録ってみたらめちゃくちゃ難しかったですね。頭の中で考えていたものが全然ハマらなくて、これはちょっとえらいことやな、と。
JSK: 具体的にはまらなかった部分は?
IIDA: MIX全体の流れもあるんですけど、やっぱり大きかったのは音の質感が全然違う点ですね。今回2000年代も何曲か入れようと思ったんですけど、音が違いすぎて録り始めてすぐに全部削ぎ落としました。90年代だけならまだサクッとまとまってたと思うんですけど、80年代の曲も流れ的にどうしても入れたい!ってなった時に、その年代って生バンドでやっている曲もあれば、機材がどんどん発達していく年代だったと思うんで、マスタリング技術もバラバラで、レーベルによっても音質が違うし、大手のレーベルでも音が悪いとかザラにあるといった感じで、MIXしてみて聴いた時、音の感じが全然違って違和感があったので、最初に入れたいと思ってた曲も泣く泣く削ぎ落としましたね。
JSK: 出来上がって実際に理想的なものはできましたか?
IIDA: 理想的な曲が入れれなかった点は悔しいですけどね…絶対入れようと思って海外から買ったレコードの曲も削ぎましたし、もっと曲数入れたかったんですけど、 スロージャム特有の後半で込み上げてくるところを入れたい曲なんかもか結構あって、HIPHOPのMIXと違ってサビでバンバン変えるっていうのができなかったんで、フルで入れた曲もありますし、今までの固定概念が崩れましたね。いろんな意味で勉強になりました。過去一番悩まされたMIXだと思います。いつも録り始めてからだと大体3日ぐらいでMIXはできるんですけど、今回は2週間ぐらいかかった上に、2回は丸々ごろっと作り変えたりしました。なぜか分からないけど、どうしてもBpm60あたりから始めたかったというのがあって(笑)、2回録ったけど、聴き返してみたらなんか違うなってなって、一からやり直して。それで元々後半の流れで入れるつもりだったBpm70あたりから始めて、内容も結構変えて、やっとまとまった感じでしたね。
JSK: マスタリングをgrooveman Spotに頼む上でイメージ共有はしたのですか?
IIDA: それは特にしてないですね。毎回MIXのマスタリングを依頼する人はそのMIXの内容、曲の感じを分かっている人にお願いするので、スロージャムでマスタリングって考えた時にグルスポさんしかいないかなと。一曲一曲のどういう部分が良いとかも一番分かってくれていそうなので。先に打ち合わせしてしまうと、僕の中でそのイメージが先に付いてしまって、自分の考えや曲のイメージが変わってしまいそうだったので、逆に出来上がってからしか話してないですね。なので、答え合わせじゃないですけど、マスタリングされたものが返ってきて初めて話す、みたいな。
JSK: いつもMix CDをマスタリングする上ででこういう部分に重きを置きたいっていうポイントってありますか?
IIDA: 今回に限っては良い意味で古くさい感じにしたかったです。元の音の質感にもばらつきがあるので、その辺りも含めて時代感が感じられるMIXにしたいっていうのはありましたね。ただでさえ12"とLPでも音が違いますし。さっきの話でも出ましたが、今回はここまで音にばらつきがあるのかっていうのは録ってみて改めて思いましたし、今までのMIXの考え方とかが見事に打ち崩されましたね。過去にこの手のMIX作った人達って凄いなとも改めて思いました。
JSK: 特に思い入れある曲は?
IIDA: 流れの話なんですけど、MIXの頭5曲ぐらいまでは僕の中ではMIXの掴みだと思っていて、からのJohnny Gill / My,My,Myあたりからは僕が好きな「これやろ」っていう流れで行って、そこからはレコードでしかないような曲も入れていたり。この曲っていうよりかは今回のMIXは全部僕の好きな曲なので、全部聴いて欲しいですね。
JSK: 自己採点は?達成感はありますか?
IIDA: 85点。笑。いや、そんなないかな。正直もっと入れたい曲もあったし、ここまで悩むとは思っていなかったんで。難しかったですね。
JSK: どういう時に聴いて欲しいとかあります?
IIDA: 個人的には夏の夕方〜夜をイメージしました。そうやって自分はイメージしましたけど、それは人それぞれで。タイトルの話でもあったように「Up To U」= あなた次第。なので、聴く人それぞれにハマるシチュエーションがあると思います。色々と行動する事が難しい世の中ですけど、ドライブとかでも是非聴いて欲しいですね。
JSK: スロージャム=エロさみたいな概念が崩されたミックスのように聴こえましたが、聴かせ方は意識しましたか?
IIDA: 聴かせ方という点は特に意識はして無いですね。本当に自分が好きな曲を入れた感じです。選曲の時に意識したのはあくまで"スロージャム"。スロージャム≠バラード。個人的にスロージャムとかR&Bを選ぶ時、買う時ってメロディーとか歌い回しとかでチョイスする事が多いんですが、HIPHOPでいうところの3大プロデューサー、DJ Premier、Large Professor、Pete Rock、がR&Bで言ったらTeddy Riley, Babyface, Jam&Lewisに当たると思っていて、僕はその中でもBabyfaceが好きで。Johnny GillのBabyfaceプロデュースの曲も入れてますし、最後の曲もBabyfaceですし。Babyfaceは歌も歌えて作詞もできてプロデュースもできるし、何やらしてもグッとくるものがありますね。そう言う点が"エロさ"では無いのかも?あとはやっぱり根がHIPHOPなんで、ビートは多少あった方が良いとかっていうのも、自然とそう聴こえる点なのかもしれないですね。一曲目のGuyの曲も最近HIPHOPでサンプリングされてたりするし、それこそ前回のJSK Mix CD第一弾のCh.0のミックスでも今回収録したJanet Jacksonの曲がサンプリングされた曲を入れてましたよね。その点は個人的にCh.0のミックスからのJanet繋ぎで収録してバトンを繋いだつもりでいるんです(笑)。気付いてくれる人いますかね?
JSK: ベースがHip Hopだからこそ選んでいるスロージャムの選び方?
IIDA: そうですね、H-townは2pacと同じネタとか、サンプリング・ソースとしても聴いてもらえるんじゃないかな、と。自然とそういうふうに選んでるんでしょうね。後は単純に良い曲だから選んでるっていうのもありますけど。作ってみて思ったんですけど、今回は自然と男性ボーカルものが多くなりました。もっと"エロさ"を求められたMIXにしようとしていたら自然と女性ボーカルが多かったかもしれないですね。あとはもう少しバラード寄りの曲を使うとか。結局のところは何やってもHIPHOPのDJなんで、そのジャンルのセオリーはあると思うんですけど、どのジャンルやってもこの人はHIPHOPの人だって分かる人には分かってもらえるMIXだとは思います。そういった"発見"をこのMIXにも何個か入れておいたので気付いて貰えたら嬉しいです。
JSK: タイトル「Up To U」に込めたコンセプトは?
IIDA: 「Up To U」= あなた次第。個人的にMIXを作る時は何となくイメージカラーを決めるんですけど、今回イメージカラーがなかなか浮かばなくて…いろいろ考えたんですが、イメージカラーとしての解釈は聴いてもらう人にイメージしてもらおうという意味も込めて「Up To U」と付けました。最初はジャケの色をセピアにしたいと思っていたんですけど、それは当初一曲目に入れたいと思っていたBabyfaceの曲が収録されているアルバムがセピアだったんで、そのイメージを勝手に連想していたんですよね。けど、その曲は出来上がってみたらまさかの最後の曲になりました(笑)。MIX録り終わるまでの2ヶ月はとにかくずっと頭の中でBpm60-70の曲がループしてて頭おかしくなりかけてましたけど、終わった今はその反動でHIPHOPばかり聴いてます(笑)。
Speaker: IIDA
Interviewer: Phennel Koliander
Editor: Yukari BB (Jazzy Sport Kyoto)
IIDA - UP TO U
Format: Mix CD
Cat#: JSKMIX-002
Distribution: Jazzy Sport Distribution 独占流通
Artwork Design: die (Jazzy Sport)
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