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「V.A. - Footsteps In My Bubble, Pt.1 Mixed By CH.0」 リリース記念 インタビュー Vol.3 - FINAL-

4月1日より一般発売開始されたJazzy Sport KyotoのミックスCDシリーズ第一弾「V.A. - Footsteps In My Bubble, Pt.1 Mixed By CH.0」をリリースしたDJ CH.0のインタビュー最終章!Vol.1ではCH.0がDJになるまでの経緯、Vol.2ではこれまでの活動について、そしてVol.3の最終章では今回のMix CDのコンセプトについて伺いました。

ジャケ写_アートボード 1

- 今回のミックス「V.A. - Footsteps In My Bubble, Pt.1 Mixed By CH.0」のコンセプト 


JSK: 前回のインタビュー Vol.2で「衝撃の上書き」をしたいというパンチラインが出たのも記憶に新しいですが、今回のMix CDに関してもそう言った気持ちがあって制作したのですか?

CH.0: もちろんそういう気持ちもあったんですけど、それを意識してやろうとしていたのはコロナ以前のことなんですよ。それまでは現場でどれだけその衝撃を残せるか、みたいなところに躍起になっていた時期だったので、今思えば結構肩にちからが入ってたんですよね。どうやって上書きしてやろうか、みたいな(笑)。けれどコロナ期に入ってからそういう力んだ感覚は無くなっていったんですよね。


JSK: それは現場でDJする数が減って自然に、みたいな感じですか?

CH.0: 何がどう影響しているのかは分からないですけど、聴く音楽も自然にクラブミュージックから離れていくことが多かったですね。基本的に家でかけられない音楽は買わない、聴かないみたいな感じで。そういった空気感の中でいかにして衝撃を残すのかが、今回自分に課したテーマだったのかなと思いますね。


JSK: 今回Mix CDをお願いするにあたって、ざっくりとしたコンセプトと「CH.0君の気分に合わせた感じで」とだけ提案させてもらいましたが、迷いなくパッとテーマは決まりましたか?

CH.0: 最初はめちゃくちゃ悩みましたけど、なんとなくの完成形が見えたのは早かったですね。そこから内容を詰めていく作業にはかなり時間がかかりましたけど、最初から絶対家で聴ける内容にしよう、生活に寄り添えるものにしようというのはあって。というのも、そんな作品は絶対この時期じゃないと作らないだろうな、と思ったからで。この時期だからこそっていうのは絶対残したいと思ったので、その想いが色濃く出てるんじゃないかと。

JSK: タイトルの「V.A. - Footsteps In My Bubble, Pt.1 」でも「Bubble(自分の殻、狭いコミュニティ)」と付いていますが、それもコロナ禍で意識したのですか?

CH.0: そうですね、この一年あらゆるものと距離を置くこと、狭い空間で生きる事を強いられて。でも自分の中ではどこかその状況を楽しんでいた節もあって、特に今回制作を始めた時は、丁度緊急事態宣言が出るとか出ないとか、世の中的にも一層緊張感が増していた時期だった。普段よく遊んでいた友達とも会わなくなったし、お気に入りの曲をシェアするっていう事もあまりしなくなった。さっき昔を振り返って、自分が良いと思った曲が本当に良い曲なのか、いつも友達にシェアして確かめてたって話をしたと思うんですけど、その確認の作業っていうのもこの時期は一切なかったんですよね。あくまで自分自身が好きかどうかっていうめちゃくちゃパーソナルな判断基準に則って作ったというのがあったので、そう意味ではやり易かったと言うか、もうこれしかない、っていう確信にも似た感覚がありました。


JSK: 今回「カバーMix」という、ド直球じゃないテーマにした理由は?自然に出てきた感じですか?

CH.0: んー、まあ、それは自分の天邪鬼な性格からじゃないですかね(笑)。あとはやはり最初に制作のオファーを受けた時にもらった、東京をはじめとするメンインストリーム的な流れからは離れた京都=B Side的な立ち位置から発信するというコンセプトは、自分の性格とも合っていたので、そのテーマに抗わずにやれたというのはありますね。それで、 年代、ジャンル問わずテーマに沿って作るとしたら、カバーかなって思ったんですよ。自分自身やった事ないし、あまりやっている人も少ないはずだからこそ、やる価値があるかな、と。けれど、考えついた瞬間、正直面倒臭そうだな、と思ったんですよ(笑)。例えばこの曲をここで入れたいと思っても、カバーじゃなかったら入れられない訳じゃないですか。それが、いつも通りにいかないすごい大変な作業だったんですよ。選択肢が一気に狭まったので。いつも1時間のMixを録るのに最低200曲くらいから選ぶんですけど、今回は100曲ないぐらいの中から選ぶしかなかっただけに、自分で作ったルールにがんじがらめになるっていう瞬間は結構あって(笑)。だからこそ誰もやりたがらないだろうし、じゃあやってみるかと腹を括りました。


JSK: 今まで色々とMix CDをリリースしてきた中で、今回のテーマは難しかったですか?


Ch.0: 今まではガチガチに新譜Hip HopでまとめたMixだったり、HouseとHip Hopを融合させたようなMixだったり色々作りましたが、今回がダントツで一番縛りがきつかったですね(笑)。とにかくがんじがらめになってました(笑)。めっちゃキツかったですけど、その分楽しさもありましたね。今思えば答えが明確にあったのは一つ救いでした。まずはカバーであれば何でもありというルールが一つあったのと、今回はBPMもあまり縛られずにいこうと思ったんですよ。いつもはHouseだったらパーティーを通してBPMをキープするし、Hip HopもBPMを合わせて繋ぐというのが基本の中で、今回はそんな基本さえも取っ払ってやろうと思って作りました。というか、そこも縛っていたらもう一生完成しないと思って(笑)。なので、自分の中のマナーを一回ぶち壊すしかなかった。だからこそグルーヴっていう筋が自分の中で一本通っていればそれでOKという。それも自分だけのめちゃくちゃパーソナルな感覚ですけど、そこを大事にしたかった。


JSK: そういう意味ではBPMとかテンポ的な縛りも取っ払った今回のミックスは新しい挑戦でしたか?特に後半、タイミング良く曲を入れて温度感を操作するMixだなという印象がありました。


Ch.0: 前からやりたい気持ちはあったんですけど、形として残せていなかったんですよ。それはきっかけというか、心に残っている言葉があって。以前、KID FRESINOとDJパーティーをやっていた流れで、ある企画で1時間のDJミックスを提供することになり、2人でガッツリ制作した事があって。その時自分は結構BPMに縛られがちというか、テンポキープは基本でしょと思っていたんですけど、FRESINOに「DJはBPMに縛られすぎなんだよね」っていう風に言われて。彼はラッパーだからかちょっと離れた位置からDJの見方をしていて、それに結構喰らって。確かにBPMに縛られすぎかもしれない、と。けれど、それを体現できていなかったんですよ。それからその言葉がずっと残ってて、今回やってみようと思ったんです。今じゃPCを使えば曲のBPMは簡単に合わせられるけど、それをやらない分、選択肢は無限。でも目の前には100曲しかないという矛盾の中で(笑) ストックの中にグルーヴ的な繋がりがないとまた新しい曲をディグるっていう作業の繰り返しでしたね。


JSK: 今回のミックスの聞きどころは?

Ch.0: なんですかね(笑)。ムズいですね(笑)。まず元ネタを知らない曲は入れないというルールを課したんですよ。説得力に欠けるかなと思って。知ってた曲はピックアップして、それからアーティスト毎にディグったり、元ネタは知ってるけどこの曲のカバーって存在するのかな、と調べてみたり。もう後半はヤケクソで(笑)多分これカバー入ってるんじゃないか、っていうアルバムを作業の合間にひたすら流し続けて、カバー曲がかかったらピタッと作業が止まって(笑)。その中から入れている曲もあります。元々カバーアルバムとされている作品はすぐ思いつくんですけど、実はカバーを一曲入れていますっていう曲はネットで調べてもピンポイントでなかなか出てこないと思うし、昔の記憶を辿ってみたりして、その辺の寄せ集めというか。それを自分の感覚で一本にしたという感じですね。


JSK: かなりあがきましたね(笑)。そんな中、短い猶予の中で(ごめんなさい!)できたとは思えないクウォリティでした!

Ch.0: あがきましたね(笑)。後半なんの戦略もなかったですからね(笑)。時間もなかったのである程度計画的にやらないと間に合わないって思って。いつもは確実にいけるぞってなってから作るんですけど、今回はいけるかわからんけどいってみようっていう。その分後戻りは出来ない恐怖はありましたけど、なんとか形にできて良かったです(笑)。


JSK:トータル的な自己評価はどうですか?

Ch.0: それはやっぱり誰かに聞かせるまでは分からないですね(笑)。自分では良いと思ってるんですけど。半信半疑です。早くみんなに聞かせたいですね。


JSK:めちゃくちゃ良いオチ (笑)! (詳しくはVol.1参照)。半信半疑の中での自己評価は?

Ch.0: 自分ではこの期間で出せるベストを尽くしました。入れられなかった曲も沢山あるので、それはPt1.と名付けられたタイトルの奥底に隠れた意味を各々感じ取って頂いて…。もしPt.2をやるのであれば、すでに一度手を付けたんで一回目よりは簡単にできるかな、と。でもそんな事言ってたらダメですね(笑)。またそう言うと自分自身の発言でがんじがらめになるので、ここではちょっと控えめな発言をしておきます(笑)

Speaker: CH.0 
Interviewer: Phennel Koliander 
Editor: Yukari BB (Jazzy Sport Kyoto)

〈コメント〉まず1曲を大切にミックスする姿勢に共感。往年の名曲カバーが多く収録されていながら、知らないアーティストばかりで驚きました(収録されているSADEの某アーティストのカバーはすぐゲットした)。こうやって優れた楽曲は世代を超えて受け継がれて行くのですね……。賞味期限なしと断言させて貰いたい、音楽へのリスペクトが伝わってくる良質ミックス!- DJ Mu-R

ch0アー写

〈CH.0 プロフィール〉1993年京都生まれ、京都在住のDJ。ヒップホップのCDコレクターであった兄の影響を受け、16歳のときターンテーブルを手にする。以降、ヒップホップクルー<DRIP>を結成後、DJとしてのキャリアをスタート。2016年、C.O.S.A. × KID FRESINOのツアーDJを務めた後、KID FRESINOや日本横町と共にDJパーティー <Off-Cent> をオーガナイズし、各地を転戦。最近の仕事では、サウスロンドンのラジオステーション <Balamii> でラジオMIXを手掛けた他、レコードストア <pinks vinyl> のディレクターを務めるなど、他分野にまたがって自らのスタイルを表現している。2021年、レコードレーベル <Onda Bubbles> を設立。



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