グラン・ブルー

いつもと違う風景だった
いつもと同じ道を歩いているのに
目の前を通り過ぎていく人々が
蛹から羽化した蝶のように無垢に見えた
それは無音の落雷だった
気づけば僕は水の上に立っていた
足は温かくて頭は冷たかった
遠くから手が伸びてくる
細長くて色白の
誰の手なのかわからないけれど
暖かくて優しくて
いい香りがした
僕はその手を掴むと
暗い海の底へと引っ張られた
不思議と息苦しくはなくて
懐かしくて
いつまでもここにいたいと思った

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