語彙力なんて必要ないのかもしれない


僕が人生で度肝を抜かれた小説の一つにアゴタ・クリストフの『悪童日記』がある。

この小説にはいわゆる「固有名詞」というものがほとんど出てこない。双子の悪ガキが主人公なのですが「ぼくら」とか「ぼくらのうちの一人」という言葉で表現されている。地名も「大きい町」や「小さい町」という言葉が使われていて町の名前すら出てこない

こんな小学生でも理解できる程度の語彙力しか使われてないのに、世界に衝撃を与えるような物語が生まれるのだから言葉というものは「伝わる」ことが全てなのだなと思う

わざと小難しい言葉を使ったり言葉のボキャブラリーを増やそうと努力するよりも、自分が好きな言葉を磨いていくことの方が物書きにとっては大切なのかもしれない。ブルース・リーも言っていたが「一万の技を覚えるよりも一つの蹴りを一万回、練習しろ」と。一を知るものは全を知るのだ

愛の言葉を千回ささやくよりも「愛している」と一言いって抱きしめるほうが千倍伝わる。「会いたい」というたったワンフレーズの言葉はどんなラブレターよりも胸を貫くことができるのだから。


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