見出し画像

野間真さんインタビュー#03~水野あおいさんの芸名の由来~

日比谷シャンテでおしゃべりの仕事も

――水野あおいさんをどう育てようとしていったかの話に戻りますが……
「水野あおいという名前で活動を始めて、92年夏ごろからレッスンを始めているはずですね」
――91年夏に履歴書をみて、出会って…
「91年に出会ってそれでレッスンをしながら、ぼちぼち92年ごろから日比谷シャンテをやっていたかな」
――そうですね。
「92年の夏ごろまではあまり動いていなかったかな。何かやろうとは思っていましたけれど、地道に半年なり1年なりかけて… 92年の夏過ぎぐらいから、日比谷シャンテでおしゃべりをする仕事を始めたと思います(※92年10月から日比谷シャンテのサテライトスタジオでDJとして出演開始)。
 その頃から『歌姫伝説』に出て、カバーを歌うような活動を始めた気がします。だから、そうしたライブで歌う、実際に歌える場所があったっていうのはすごく良かったと思いますね(※92年11月から『歌姫伝説』ライブに出演開始)」
――本人的にも、お客さんの前で歌って活動しているって感じですね。
「そうそう。その頃『歌姫伝説』では、やはり大塚久恵とか、浅山、菊池もいたかもしれませんけれど、乙女塾の中でソロデビューとかをしなかった女の子たちを「歌姫」の池野さんが集めていたわけですね。そういう子たちの中に混じって出て、乙女塾の何期生、何期生とみんなが言っている中で、ひとりだけ乙女塾でないから「あおいちゃんは10期生」とか言って… 8期までしかないんですよ、「10期生?ふーん」なんて、そういう無邪気なやりとりをしながら…」

――ほうほう。
「92年の夏ごろから、センチュリーレコードと三木プロの三木さんとで、そういうユニットを作ろうと考えているんだと、野間さんもアドバイザーで入ってくださいよ、と言ってきたから、それはどうもどうも、水野あおいっていう子がいますよって言ったら、いやあれはちょっと、って三木さんが言うんですよ。あれはちょっと、って言って、まあそうですかって雑談をしながら、Fairy Tale(フェアリー・テール)という形が出来上がってきて、まあ、3人の中の1人ということで入ったんですね。
 当時MOMOCO CLUBに大河内庸子って本名で出たことがあるんですね。それもあって、MOMOCO CLUBの3人でいいんじゃないですかって言ったんだけど、三木さんはMOMOCO CLUBで揃えなくていいとかなんとか言って… 千葉麗子とかに声をかけてましたね」

MOMOCO CLUB・3248番 大河内庸子さん
『MOMOCO』1992年1月号 

――それはまた傾向がぜんぜん違いますね。
「ぜんぜん違う。綺麗どころがお好きだったんでしょうね。まあ、やっぱり一般の感覚の男性には、水野あおいは受けない、受けにくいっていう感じはありましたよね。でも、それはもう僕は昔から自覚はしているので(笑)」
――前にお伺いしたときにも、『BOMB!』のある編集の方に紹介したら、この子はちょっとなあ、と言われたとおっしゃってました。
「そうです。みんな言うんですよ」
――皆さん、ホントに見る目がないですね。

水野あおいさんの芸名は?

――水野あおいという芸名はどなたがお付けになったんですか?
「水野あおい、はですね… (あおいちゃんにも)相談したと思いますが、最初に考え付いたのは僕だと思います」
――かなりストレートな名ですね。
「そう、あの…ストレート… そうですね。綺麗な名前にしたかったというのと、あおいというのは、彼女すごくちっちゃいんですよ、152㎝ぐらいしかないんですよね。だから、あおいだったらぜんぶ半角で表記できるかな、と思った」
――最初から半角というコンセプトがあったですか?
「それはちょっと思ったんです。や・ ゆ・ よ、とか、つ、とか、半角のひらがなを使ったひらがな名前だとちょっと楽しいかな、と思いましたね」
――あおいですって書くときに本人は今も半角で書いてますね、Twitter(X)とかでも。
「ああ、書いてます?」
――そのコンセプトが野間さんの中にあって、本人にも相談して命名して、それをずっと今も引き続きやっている…
「そうか、そういうことだね。要するに自分はちっちゃいよってことを表しているんです(笑)。ひらがな3文字、半角のあるひらがなっていうことでね」

――履歴書をみて誠実な感じで取り組もうとしている、とさきほど言われましたが、森下純菜さんも『アイドル冬の時代』のインタビューで「私はライブで最初に『やっほっほ~』、最後に『バイチャッチャ』というのが自分のスタイルで、今もずーっと変わらずやってますけど、あおいさんは『水野あおいです。よろしくお願いいたします』って、名前の後に必ず丁寧な挨拶をするんです」と言ってます。
「あ、はいはい」
――彼女の性格なんですね。
「そうですね。真面目な人なんですよね」
――彼女は自分の才能をひけらかさないんですよね。歌上手ですね、いつまでも歌姫として活躍してくださいとか声をかけると「いやいや、私はそんな存在じゃありません」と謙遜するんです。桃井はるこさんから、私の精神的支柱でしたとか言われても「いやいや、そんなめっそうな」とか。いつも謙遜しているんです。
「はいはい」
――そうでありながら、歌っているときは、すらっと舞台を大きく見せますよね。
「そんなに激しく踊るわけでもないし、別に何ということもないパフォーマンスなんですけれど… 歌がとにかく上手なんですよね」
――伸びやかな声で。
「今でもあの声で歌えているなんて話を聞いたから… うん、すごいと」
――振り付けは型が決まっていて、毎回同じ型にはまって歌っているんです。ある意味では面白みがない……
「まあまあ、そういう考え方ありますよね」
――面白みはないんですが、例えば他のアイドルだとアレンジしながら、歌うごとに振り付けも少しずつ変えながら歌っていたりもするんですが、彼女の場合はずっときちんと同じ振り付けなんです。だけれども魅せるんです。最初から完成されているような感じです。
「そうですね。お客さんを煽る、なんてことはないし。そういう人ではないんですね。マイクを向けるとか、あるいは客席に飛び込むとか、そういったパフォーマンスはない」
――ないです。
「定番というか、型にははまっている。様式美という感じですね」
――様式美という言葉はいいですね。
「アイドルとしての自分の役割っていうのをはみ出さないんだな」
――黄金律というか、そういうものを…
「出してくれる人ですね。歌詞間違えることないしね」
――たしかに間違えることないですね。すごいです。いや、やはりインタビューするといろいろ話が広がりますね。で、あおいの芸名は半角を最初から探していたんですね。
「あおいというひらがな表記がすごく似合いそうだな、っていうのがあって、結果的にはちっちゃいという彼女の特徴をあらわすのに適していた感じでしたね。やよいでもよかったわけですね、そういう意味ではね」
――やよいだと、少し古風な感じが…
「まあ、そうなんですね。あおいが先に決まってから(苗字の)水野です。あおいちゃんと呼びたい感じの雰囲気を持っているなと思っていて、次に苗字を探して… まあなんとなく芸能人は水に関係する名前がいいのかなと思って、水野あおいになったわけです。綺麗じゃないですか、やはり」
――最初にストレートな名前だと失礼なことを言ってしまったのですが…
「そう、”みずのあおい”だからね。本人の見た感じとしてはそういう透明感よりも、もしかしたらもう少しミルキーな感じかもしれないですけど、とりあえずよかろうという話ですね」

水野あおいさんのMC

野間さん、少し思い出し笑いをしながら、
「そういえば面白かったですねえ。例えばライブをやるときに、曲順とかの話をしながら、ここはこうしよう、ここでこうしようと言うんだけど、ゆったり目な曲を入れると、彼女は1曲でいい、って言うんですよ。2曲だとみんな寝ちゃうから(笑)、寝ちゃう寝ちゃうって言って1曲で済ませる、ということを言われたことがあります。それと、曲順はそれで決まったとして、3曲歌うとMC、2曲歌うとMC、衣装替えとかになるじゃないですか。そのMCのネタは必ず相談に来ましたね」
――あ、そうなんですか。
「はい。それはやっぱりね。全体の曲順とかは、マネージャーのKくんが決めたりしていたんだけど、MCだけは僕に聞きに来る。どんなことを話せばいいかというのは。別に一字一句原稿をつくるわけではないんですけど、こんな話をして、たぶんお客さんはこんな風に来るだろうから、こんな風に返すとよろしいのではないかと。そのような話はけっこうしましたね」
――野間さんがコンサートやイベントのことをよく知っている、そういう意味での信頼感でしょうか。
「そうかもしれませんね。やはりお客さんをみて話す、お客さんの反応でこう来たらこう返すみたいなところはよく話した気がします。実際それで当たりますから。やっぱりMCは重要なんですよ」
――そうですね。
「それは今の地下アイドルには欠けている部分と言うか。あれはね、自分で考えようとしても何しゃべっていいかわからないという子がすごく多い。自己紹介と今後の告知とかそういうことしか頭の中にないので」
――ああ、なるほど。
「そこで、日常で起こったできごととか、そういうのを入れてしゃべったりするのが大切なんですよね」
――自分がいま何を考えているかとか、お客さんの顔を見てこんなことを伝えたいとか、お客さんからこういう風に返してもらいたいとか。
「そうでしょうね。それはもう、今でも彼女は考えていると思います。僕にはもう聞きには来ませんけどね(笑)」

あおいさんは人見知り? それとも・・・

――Twitter(X)での返しも上手ですよ。朝起きて4~5行ぐらい書いて、それにファンからリプライが付いて「そうそう、そうなんですよ」とか「えええーっ」とか「がんばれー」とかうまく返してます。
「それはもう、当時のサイン会の時間とかでの返しも絶妙ですよ。もう、すごいすごい。慣れて来て、その人を例えばちょっとおちょくるとか、そういうこともするし、初対面の人だったら丁寧に対応する。やっぱり人を見て返す。そういう才能というか、コミュニケーション能力が高いんでしょうね。高いんだけど高いように見せてないですね、人見知りで下向いてますみたいな。最初はけっこうそういうイメージがありましたから」
――ああ、そういえばデビューシングルの特典のボーナストラックで…
「おしゃべりみたいなのですね」
――そのおしゃべりが内気そうで守ってあげなくちゃみたいなことを、桃井はるこさんが言ってました。
「そうですね。そういうコンセプトですね」
――ええ?コンセプト?
「本人も謙遜するようなタイプで、自分から出ていくようなタイプではないので、やっぱりアイドルの中に入ったら、内気かつ人見知り、かつコミュ障みたいな、そういう位置づけになりますよね。別にそういう感じでいいわけです。会いに来た人とはニコニコ話しますから」
――たしかに普通に話しますけれど、元気系アイドルみたいに「私は私は…」と前面に出るような人たちや、ライブでも煽るようなタイプとか、そういう中で混ざっていると、本人は内気かな、となりますよね。まあ、普通の人ですよね。
「そうですね。普通です、まったくそうです。『投稿写真』だったかなあ、Fairy Tale(フェアリー・テール)のインタビューがあって、インタビュアーはAくんだったわけですよ」
――ああ、あのAくん。
「Aくんから僕に連絡がきて、浅山と菊池がよくしゃべって、水野あおいしゃべんないんですよ、どうしますって言ってきたから、ぜんぶ ”………"でいいから、って返したことあるんですよ(笑)2人がしゃべって、それでぜんぜんいいわけで…」
――フェアリー・テールの短い活動期間の中でインタビューできたこと自体が奇跡的ですね。
「そうですね(笑)そういうこともありましたね」

フェアリー・テール時代の貴重なインタビュー記事 あおいさんのところは”……”が多い
『BOMB!』1993年3月号

インタビューはどんどん続きます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?