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夏に、かけてきたもの達

夏が苦手だ

一応、夏生まれなもので
誕生日がある季節ってなんとなく
ウキウキする

そんなところがあるから
昔は夏が来るのが待ち遠しかった

スカッとした空も
明るい色の花たちがあふれるのも
お祭りに花火に
普段は味わえなかった夜が
明るくて賑やかでワクワクしたし
何をしたって楽しかった

でも、今じゃどうだろう
夏だからって
とりたてて休みになるわけでもなく
うだるような暑さの中で乗る
満員電車は地獄だし

頭はぼーっとして仕事は進まないし

外にでるだけで汗をかいて
メイクが崩れるのが苦痛だしで

一刻も早くこの季節が過ぎるのを
ただひたすらに待っている自分がいる

ふと、外に意識を向けると

こんな溶けそうな暑さにも関わらず
セミ達がバカみたいに声をあげて
シャワシャワと夏の象徴として歌っている

せめて、秋の彼らみたいに
声をころがせて軽やかに鈴のように
鳴いてくれたらいいものの

あまりに必死にひっきりなしに鳴くもんだから
その声がまた暑さを増幅させるんだ
本当いい加減にしてほしい

でも、考えみれば

そうだよな
彼らからしたらこの7日間に
全てを賭けているんだもの

暑かろうが、風が強かろうが
バカみたいだって言われようが
鳴かないわけにはいかないんだ

全てを賭けてる夏だから
周りにどんな風に言われたって
なりふりかまってなんかいられない

そういえば
わたしも夏が楽しかった頃は
夏に若さの全てを賭けていた気がする

駆け抜けてくこの季節を
逃さないように

夢中で遊んで、
今から考えたら

なんの結果にもならないような
愚かな一瞬の恋だって
今を取りこぼさないように
必死だったんだよな

そういえば
夏をまっすぐに向き合えなくて
視線をそらさずにはいられなくなったのは
そういう必死さを繰り返した先に
たくさんの失敗が積み重なって
想いの向こうに
あなたの涙ばかりが
見えるようになってからかもしれない


写真:空に青。さん

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