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ジロリンタン備忘録210905

 酷暑の8月が過ぎ去ったと思ったら、もう9月になった。
 ニューヨークではハリケーンから熱帯低気圧になったアイダのせいで、珍しく街じゅう水浸しになるし、気候変動を越えて、世界中が気候危機になった。それだけではない。世界中が疫病危機だよ。
 大丈夫なのか、おれたちは。

 見出しの画像は、9月2日(木)に発売されたリチャード・レヴィンソン&ウィリアム・リンクの短編集『皮肉な終幕』(扶桑社ミステリー、税込935円)のそれだ。「浅倉久志他訳」の「他」におれも含まれているから、いちおう宣伝をしておこう。収録作品10編のうち、おれが翻訳したのは2編だ。これが売れに売れて、発行部数が少ないから重版になれば、おれの収入も少しは増えるからね。
 まあ、近所の本屋へ確かめに行ったら、横積みになっていて、左右の文庫よりも減っていたから、売れているんだろうねと思いたい。
 レヴィンソン&リンクと言えば、『刑事コロンボ』や『ジェシカおばさんの事件簿』の原案者として有名だね。『ジェシカおばさん〜』のほうはアメリカでは今でもノヴェライが書かれているね。『刑事コロンボ』のほうは日本独自のノヴェライがたくさん二見文庫から出た。
 レヴィンソン&リンクはこのほか、TV番組『名探偵ダイアモンド』『探偵マイケル』『ハニーにおまかせ』などに台本を提供したし、暴力的かどうかで議論を巻き起こした長寿番組『鬼探偵マニックス』の原案者でもあった。リンクが2020年の12月27日に亡くなったときには、<マル鷹フライヤー>に死亡記事を書いたから、リンクについてはかなり調べた。短編リストも調べたので、『皮肉な終幕』に載らなかった作品名や理由も知っている。
 おれが翻訳した2編のうちの1編「ある寒い冬の日」は『ミステリマガジン』85年1月号に訳載されたとなっているから、もう35年ほど前に翻訳されたものか。もちろん、この短編集収録に当たって改訳している。
 「改訳」と言っても、保険の解約とは全然違う。句読点や言葉遣いを少し変更する場合もあれば、登場人物の話し方を全面的に変更する場合もある。おれの怪盗ニックものの短編集は改訳が多いが、読者と同様に、翻訳者の言語感覚は10年もたつと随分変わるものである。自分の誤訳を見つける場合もあるが、著者や編集者の間違い見逃しを見つける場合もある。あるときは、オチがわかりやすいように、人名を変えることさえある。たとえプロットが変わっていなくても、雰囲気が変わっている場合があるから、要注意である。
 だから、既読だからって、10年以上後の「再読」を拒否すると、損をすることがあるから、これも要注意であるぞよ。

 おっと、宣伝のつもりが、話がずれてしまった。だって、この備忘録(美貌ログ?)はジロリンタンの「ズレズレ草」のつもりなのだから。//


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