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ジロリンタン備忘録211030

10月が去りゆくとき (When October Goes)

 ジョニー・マーサー作詞/バニー・マニロウ作曲で日本語タイトルは「恋人たちのオクトーバー」。ジョニー・マーサーがなくなったときに、未亡人がこの曲の作詞を見つけて、バニー・マニロウに曲をつけてもらったそうな。
 悲しい曲だから、落ち込んでいるときにあまり聞かないほうがいい。マニロウのほか、ナンシー・ウィルソンとか、ローズマリー・クルーニー(ジョージのおばさん)とかが歌っているが、おれは若くして亡くなった(享年43)ナンシー・ラモットの歌が好きだ。ラモットが『枯葉』と絡めてメドレーで歌っているのは、同じような内容だからだろうが、この When October Goes のほうが悲しい。
 もう10月も終わり、今年もあと2ヶ月しか残っていない。最近は、時間が速く過ぎていくような、反対にゆっくり過ぎていくような、複雑な時間感覚である。でも、SFドラマのように時間はとまらない。

 見出しの画像は、スー・グラフトンの女探偵キンジー・ミルホーンもの1作目『アリバイのA』の初版本だ。美本なら1000ドル(10万円強)はするらしい。グラフトンは2017年12月に77歳で亡くなったが、そのときにきんジー・ミルホーンのキャラクターをハリウッドに売るな、キンジーを主人公にした贋作をほかの作家に書かすな、そんなことをしたらあの世から化けて出るぞ。と家族に言い残した。これは有名な話だ。
 ところが、この10月に残された夫のスティーヴ・ハンフリーと子供たちがA+Bスタジオにキンジー・ミルホーン・シリーズのTVシリーズ権を売ったのだ。グラフトンと一緒にアメリカTV版のミス・マープルの脚本を書いたハンフリーが製作責任者の一人とはいえ、それはグラフトンの信用を裏切ったことになるだろう。TV界の現状が以前と異なり、技術も質も進んだから、昔のように原作を台無しにしないと言い訳しても、ハリウッドを信用してはいけないよね。
 グラフトン自身がハリウッドの脚本家だったときに、他人の原作を(クリスティーの?)台無しにしたから、ハリウッドの金欲主義をよくわかっているのに。ちなみに、キンジーに扮する女優はまだ決まっていないそうだ。
 その反対に、ハリウッドが原作を台無しにしても気にしないのは、ジェイムズ・M・ケインだった。ハリウッドが彼の原作を台無しにしても、「わたしの小説は本棚に刊行されたままの形で残っているからね」と言った。

 ということで、30日と31日はナンシー・ラモットの歌を聴きながら、10月にお別れを告げるかな。//


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