you will have to leap

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2019年も終わりを告げようとしているクリスマスの日.7年間の研究生活も次の段階に移ろうとしている.はじめて日本の大学で研究室を持った日を思い出しながら少しまどろんでみたい.

大学の研究が世の中に広まるには時間がかかる.どんな分野でもその道での存在感を全く新たに作ろうとするとそれはやはり時間のかかることだろう.大学はまず学会や研究会から入っていくのが王道だと思うが,今の日本では期待できない.小さなサロンに閉じている現状を見るに,限られた時間を使うのは無駄である.今の若者はおとなしくなってという大人が居るが,おしなべて十把一絡げに言うのは危険だ.事実アクティブできらきらした目を持っている人たちに多く会ってきた.彼らと何かを実現していく過程は魅力的だ.

毎週のように東京に行ったり,毎月のように海外に出ているとそういう機会が増えてくる.やりたいことがどんどん増えるのに対し,時間を生み出すことがだんだん難しくなる.自分の研究室できちんと指導することもままならない.でも幸いそういう放置プレーの中でも素晴らしい逸材が育っていることが嬉しい.大学の時,理学部の物理なのに,測定器の自動化を卒研テーマにし,機械語でのプログラミングを楽しんでいた自分の学生生活とダブらせながら彼らの逞しく軽快な動きを見守っている.自分の場合は物理の先生に機械語の相談が出来るわけも無く,当時熱かった札幌のマイコンコミュニティでいろんな人に教えて貰った.

幸い情報はそんなに研究費を必要としない.必要とするものは何でも言ってねと学生に話してもあまり要求は出てこない.せいぜい早いコンピュータくらいか.一つもっと学生に伝えたかったのは,外部との関係性だ.経験などから得られた関係性をもっと学生にも共有したかったと思う.それ以外は彼ら自身で獲得できるのだから.

昔,自己紹介に「いい音を楽しむのが好き」という部長が居たのを鮮明に覚えている.普通は音楽を楽しむのだろう.でも音を楽しむというのはAudiophileのことだ.シリコンバレーに居たとき頻繁に開催されるギークな集まりでネットワーキングする際に,一番よく使うネタがワインとオーディオだった.何故か多くの技術者が家に超高価なオーディオを持っていた.さらにその多くは何かの楽器を演奏できたのだが.「いい音」に魅せられて何十年.その道を究めた多くの人との出会いもあった.何億もの資産をつぎ込んで究極のアナログプレイヤーとスピーカーを作った人もいた.その音は凄いとしか言い様がない.その頃在籍していた研究所に彼を招いて,かれの装置でコンサートをして講演をしてもらった.どちらも本物だった.

後に著作権関連の研究開発に携わったとき,音楽関係者しかも超有名なアーティストと知り合い,その縁は今でも大切にしている.やはりどこか繋がるところがあると感じている.放送局やメーカーの人たちとの和が広がったとき大きなプロジェクトができた.インターネットとコンテンツの出会いがあった.

これまでにいろんな「熱い時」を過ごしてきた.学生はこれからそういう人生を歩んでいくのだろうと思う.ひとときは熱い論争や時には喧嘩をするような関係でも,それが次のフェーズでは助けてくれる仲間になることも多い.あとどれだけの出会いがあるか分からない.来年も大きく変わりながら新しい出会いを楽しみにしたい.

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