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OJK規則2024年第4号に基づく株式保有報告義務の変更について

2024年8月28日以降、インドネシアにおける公開会社の株主は、公開会社の株式の譲渡、担保権設定に関して新たな要件に基づく報告義務を負うことになります。
これらの報告義務は、インドネシア金融庁(Otoritas Jasa Keuangan、以下「OJK」といいます)が2024年2月に制定したOJK規則2024年第4号に基づくものです。
OJK規則2024年第4号により、OJK規則2017年第11号は廃止され、OJK規則2024年第4号は、金融セクターの発展及び強化に関する法律2023年4号(いわゆるオムニバス・ファイナンス法)における公開会社の所有者変更の報告に関する規定の施行規則となります。
OJK規則2024年第4号は、報告義務に関して有効議決権に基づく新たな計算ルールを導入する他、相続による所有権移転、報告の免除規定、担保権の設定についての報告義務、報告期間の短縮など、新たな事項について規定しています。

公開会社株式の保有及び変更に関する報告書

OJK規則2024年第4号は、インドネシア国内の規制の進展、特に最近の公開会社における複数議決権株式の発行容認に基づき規定されたものです。
すなわち、複数の議決権付株式が存在する場合には、株式の保有割合は、従前のOJK規則2017年第11号に基づく株式の保有数ではなく、有効な議決権に基づいて計算される必要があるからです。
OJK規則2024年第4号の報告ルール自体は、従前のOJK規則2017年第11号と基本的に同様です。OJK規則2024年第4号では、以下の当事者の議決権の保有に変更があった場合、5営業日以内にOJKに報告書を提出しなければなりません。従前のOJK規則2017年第11号では10営業日以内とされておりましたので、報告期限が短縮されたことになります。

① 公開会社の議決権を直接又は間接的に保有する公開会社の取締役又はコミサリス
② 直接又は間接的に公開会社の議決権を保有する
  (1) 議決権の5%以上を保有する当事者
  (2) 当該公開会社の支配権を有する当事者

上記②に該当する当事者は、OJKに変更後の議決権比率についても報告しなければなりません。また、5%以上の議決権を有していた当事者が、株式の譲渡等により議決権比率を5%以下に減少させた場合も、OJKへの報告が必要となります。株式を保有する複数の当事者がグループ会社に属する場合、代表者による報告も可能です。
報告義務のある情報の種類に関しては、OJK規則2024年第4号に報告書のテンプレートが掲載されています。要求されている情報は従前のOJK規則2017年第11号から大きな変更はありませんが、OJK規則2024年第4号は、報告書に以下の記載を要求しています。

① 取引前後の株式数及び議決権割合
② 取引の種類
③ 譲渡した株式の数
④ 株式の種類
⑤ 実質的支配権を有する者の情報
⑥ 委任状を提出した株主の氏名(該当する場合)
⑦ グループ会社の詳細(該当する場合)

報告義務としては、従前のOJK規則2017年第11号では報告義務のなかった議決権の承継者についても報告が必要となった点に留意が必要です。

報告免除

但し、一定の場合に報告義務が免除される場合があります。
公開会社の株式の所有権の変更は、以下のコーポレートアクションに起因する場合には、報告義務が免除されます。

①株主割当増資又は第三者割当増資による株式保有割合の希薄化
②自社株買いなどの株主による取引

公開会社の株式の抵当権に関する報告

従前、公開会社の支配権の変更を引き起こす可能性のある株式への担保権の設定については報告義務がありませんでした。
OJK規則2024年第4号は、これを変更し、債権者が担保権を実行した場合に支配権の変更された場合の少数株主保護のため、公開会社の株主に対し、以下の条件を満たす場合には関連する担保契約に署名した日から5営業日以内にOJKに報告書を提出することを義務付けました。

① 担保権の対象となる株式の議決権数が公開会社の議決権の5%以上である場合(担保権の設定が単発取引であるか複数の取引であるかは問いません)
② 担保権が設定されている株式の割合が変更される場合

当該報告書は、OJK規則2024年第4号に規定された書式に従い、以下の情報を含む必要があります。

① 株主の氏名
② 公開会社の名前
③ 株式の数及び抵当権付株式の割合
④ 担保権によって担保されているローンの額
⑤ 担保権付株式数の変更の原因となった取引の種類
⑥ 合意日
⑦ 担保権設定者及び担保権者の関連会社

電子報告

本稿執筆時現在、OJKはオンラインによる報告書の申請システムを構築していません。また、OJK規則2024年第4号にも電子報告システムの詳細は規定されておりませんが、報告システムが確立された場合、報告書の提出期限は関連事項の発生から3営業日以内に変更されることになります。

結語

OJK規則2024年第4号により、報告書の提出期限が短縮され、また、報告を要する事項がより詳細になりました。
また、担保権の設定に関する報告義務の新設は、他の株主のあずかり知らないうちに担保権が設定され、規制当局による監督を欠いたままで突然の支配権の変動が発生するリスクを軽減するものです。
OJK規則2024年第4号は、インドネシアにおける公開会社の株主に関する情報をより明確にし、インドネシアにおける株式市場の透明性を向上させ、投資家、ひいては公開会社の利益を保護するためのものと評価できるでしょう。

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