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雑誌休刊に思うこと

職場の本棚を眺めていたら、👇の雑誌が昨年末で休刊になっていることを知った。仕方ないとは思うが、残念だ。
中外医学社 | 書籍詳細 (chugaiigaku.jp)

これが最終巻

日頃より小誌『CLINICAL NEUROSCIENCE』をご愛読賜り誠にありがとうございます。
小誌は2023年12月号をもちまして休刊することとなりました。

1983年の創刊から41年間、脳神経領域のベーシックな部分から最新の知見までを読者の皆様にお届けすることを編集理念に掲げ、月刊誌として発行してまいりましたが、近年のメディア形態の多様化や情報ニーズの変化などの諸般の事情により、やむなく休刊を決断いたしました。

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私が購読しているのは別の雑誌「脳神経内科」だが、この雑誌にも思い入れがある。神経内科医を生業と決めてから、医局の本棚にあるこの雑誌に、何度お世話になったか知れない。

この雑誌の連載から、多くの書籍が生まれている。
特に👇は名著である。1992年発行のロングセラーだ。
私は、病態を考察するために、この本を何度眺めたか知れない。イラストの見やすさと情報量の丁度よさのバランスが絶妙だ。未だに類書は存在しないのではないだろうか?
医学書としてもかなり高額だが、それだけの価値は十分にある。

臨床のための神経機能解剖学

近年ではこの本もよかった。
自律神経は、そもそもよくわかってないことが多い。しかも検査に手間と時間がかかる。さらに被験者にとっても負担が少なくない。だから、臨床研究もスムーズに進めにくい(のだと思う)。だから、やりたがる人が少ない。そして、需要が少ないから、自律神経系の医学書は概して読みにくい。わかりやすく書くことは結構手間なのだ。需要がなければ、わざわざわかりやすく書く手間をかけようとは思わないだろう。
それらが、自律神経に対する敷居を高くしている。しかし一方で、臨床においては結構重要だったりする。
なので、病態を考える際に、自律神経の理解に苦労することも多かった。
しかし、この本はわかりやすかった。図を駆使して一生懸命わかりやすく説明したいという熱意が伝わってきた。
「興味はあるけど、難しそうなので敬遠していた」人々のための本だ。

やさしい自律神経生理学

ともに、「雑誌連載」という形式だからこそ生まれた本だと思う。
需要が予測しにくい内容の本よりも、雑誌連載である程度好評価を得られた内容の本の方が、出版社も売りやすいだろうから。
そういう意味でも、「雑誌」というものに価値があるのではないか。

そういえば、ひと昔前まで、神経内科医のための和雑誌は学会誌を除けば、「CLINICAL NEUROSCIENCE」か「神経内科(現、脳神経内科)」しかなかったのだ。この2つの雑誌、編集方針も着目点も違うので、両方チェックすることが意味があった。
おそらくだが、「CLINICAL NEUROSCIENCE」は後発雑誌である「BRAIN and NERVE」に負けたのだろう。この2つ、似てたから。
その点、私の購読している「脳神経内科」は紙面そのものや連載から醸し出される老舗感が孤高の領域に達しているので、逆に競合相手がいないのだろう。とはいえこのご時勢、突然「休刊のお知らせ」が何時来てもおかしくない、常に不安は感じている。

一介の臨床医にとっては、ネットで得られる玉石混交で目新しいだけの症例報告よりも、編集者の目が通った総説の方が「立ち止まって考えることができる」のだ。そして、これは結構重要なことだと思うのだ。
私にできることは購入し続けることしかない。値上げしてもいいから、科学評論社は何とか踏みとどまって発行を継続して欲しい。


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