思い出の秋

思い出の秋10月で「たみ」を開業して8年目となりました。2011年にこの町の人たちと出会って、毎年10月に行われる松崎神社のお祭りや手作り朝市「三八市」が気に入って、2012年10月に、「たみ」も合わせるようにオープンしました。開業する直前まで、近所の方とミシンでカーテンを夜な夜なつくっていたことを今でも覚えています。開業前に手をかけたのは、ベッドとカーテンぐらいで、あとはもともと「たみ」にあった立派な絨毯やソファ、布団、お皿など、使えるものはそのまま生かして、冷蔵庫や洗濯機などは不要になったものをいただき、本当に必要なものだけを買い足していました。なんでもいただき過ぎて、上手に断る方法を悩んでいたことは、今では懐かしいです。私たちを支えてくださっている近所の方たちは、ものを大事にしている方が多く、まだ使えるものはすぐには捨てないし、掃除機もラジオもミシンも直せる人もいます。重たい足踏みミシンを階段で下ろす方法を知っていたり、洋服のリメイクが上手で、いつも、何かしら自分の体型に合った服を作っていて、会うたびに目をひきました。ものだけでなく、空き家もそうで、使っていない場所を貸してくれたりもしました。「今とちがって、戦後はものがなかったから」と、ものを大事にする思いは、人に対しても同じでした。人間関係がたとえ悪くなっても、簡単に引っ越すことも、ブロックすることもできないので、この町で暮らす中で、地域の方の身につけられた方法があります。年賀状を送る。手土産を持つ。挨拶をする。目上の人を敬う。ほかにもいろいろありますが、必要な意味は、この町で経験しながら教わりました。今年は、祭りも三八市も縮小されて開催されました。春から恒例行事が全て中止になったので、なかなか顔を合わせる機会がなかった分、一同に人々が集まりました。出店しながら、眺めていると、今まで出会ってきた人たち、新しく移り住んだ人たちが入り混ざっていました。皆近くに住んでいるけど、同じ時間に、同じ道を歩くこともないので、目的なく声を掛け合うことは少なくなっていたことに気がつきました。珍しい青空を見て、朝陽を浴びながら、ふと、病気や事故で亡くなって、ここにいない人たちのことも思い出しました。私の身体を見聞きしてきた記憶を再生するように、新しく入ったスタッフに話を聞いてもらいました。



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