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お湯が出るまでシャワーを出す。
顔が濡れないように、シャワーに背を向けて座る。
クレンジングをする。
シャンプーをして、トリートメントをする。
トリートメントを流す前に、手桶にすくったお湯に髪を付けて乳化させる。
乳化させたお湯を髪にかけて、シャワーで洗い流す。
洗顔をする。
身体を洗う。
お湯に浸かる。

ルーティン、ルーティン、ルーティン。例えば洗顔を忘れて身体を洗ってしまうと、今まで上手くできていたことが全て崩れてしまうような焦りがあるのです。調子が崩れる。慣れれば慣れるほど、油断してしまう。
私は毎日、毎週、毎月同じでありたいのです。夜は3つアラームをかけて、朝の5時50分に目を覚まし、6時5分のアラーム設定を先に削除して二度寝し、6時10分に鳴ったアラームで一日を始めたい。トイレに行って、着替えて、歯磨きと洗顔をして、化粧をして、デトックススープを2分半温めて、髪を結んで、ヘアアイロンを温めて、温めている間に口紅をティッシュオフして、温まったヘアアイロンで前髪を巻く。数分放置して冷めたスープとバナナを食べて、有線のイヤホンをつけて、出社する。同じタイミングの信号を渡り、同じ乗車位置で立ち止まり、座れない電車の中で同じ吊り革を持つ。
文字にすると窮屈に感じるけれど、誰でもしていることでしょう。人間、生きている上で必ず何かしら法則に従っていると思います。私はそこに変化をもたらしたくないのです。


でっけェ主語で言うのなら、何も失敗したくないわけです。仕事だってそうで……一ヶ月の仕事内容を毎日記録して、来月も同じように過ごしたいのです。物事を綺麗に整理するのが苦手なんです。上手く処理ができないから何もかもが遅い。教えられたことを適当な紙に殴り書きをして、Excelで整えて、いつでも持ち運べるノートに書き写してって、本来は不必要で無駄なことをずっとしています。でもそうしないと何も分からなくなるのです。

会話も嫌いだ。『11月1日はゼムクリップを発明した人は天才という会話をしましょう』と決められているわけではないから、今日生まれて初めて聞く話を、今日生まれて初めてその話題について思考して答えなければならないですよね。対面で会話をする時に、考える時間なんてほとんどないじゃないですか。脳経由の会話をしたければ数秒待ってもらわないと、全て脊髄反射で答えてしまう。だから自分が何を言ったのか覚えていないし、相手の話の意図を上手く汲み取れないから、「今聞かれたことに対して、この答えは全く別の話だったな」と後から気付くのです。予めこう言おうと思っていることも、いざ音にすると自分の理想とは程遠い言葉になる。思考力が弱いというか、意図を理解して自分の考えを巡らせるというプロセスが遅いせいで、会話のキャッチボールが遅いのでしょう。


例外とか、応用に対応できるほど賢い人間じゃないですし。臆病で弱っちい人間だという自覚はあるけど、プライドがエベレスト級だから、人に指摘されたくないのです。気付かれたくないし、自分が劣っていると自覚してしまうくらいなら、最初からできないことをできないと気付かないようにすればいい。私が何十回も何十日も繰り返して頑張ってやっとできたことを、皆はものの数回で簡単に成功させてしまうのでしょう。
上は目指さない。夢を見てはいけない。直線を歩き続ける。マニュアル化、ルーティン化された生活の中で過ごす。マァ、おかげさまでモチベーションも目標も何もないんですけど。でもそれよりも失敗をしたくない。ただでさえ人よりできないことが多いのだから、現状よりも惨めな思いはしたくないのです。やりたいこととできることは違う。できることをする。期待以上のことはしない。
いつかはボロが出る。もうバレてる。はやく私が無能だと気付いてほしい。誰よりもぽんこつだと諦めてほしい。よろしくお願いします。


2023.11.14