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自業自得

ハッキリとは覚えていないけど、一時期ずっと心霊動画を見ていた頃があった。当時まだ小学生で、夏休みだった。

それはもう狂ったように見ていた。

共同の和室に閉じこもって毎日毎日毎日毎日何時間も何十本もの心霊映像を見た。ナレーションがいるわけでもなければ司会者もいない、ただただ心霊映像とReplayだけが繰り返し流れるだけの動画だった気がする。そのシリーズはふつうテレビで放送されるようなものではなかった。覚えている限りでは、女性の目に枝が刺さって血を吹き出していたり、狐に取り憑かれた人だったり、青色の顔が映ったり、スプーンで抉られた目玉が何度も何度もぐちゃぐちゃに踏み潰されたりと、地上波に流すには規制に引っかかるであろうものばかりだった。
普通の心霊動画もあったけれど、どれもテレビでは見たことがなかった。あまりにも異質で、でももうほとんど覚えていない。

何がそんなに面白くて見ていたのか分からない。面白かったという記憶もない。後悔はしたと思う。でもそれも怖かったからとかじゃなかった。シリーズを全部見終わったからか、飽きたからか知らないけど、その年の夏休み以降そのビデオを見ることはなくなった。

昔からそうなんだろうけど、自分にない体験を見たり聞いたりするのが好きだ。スカイダイビングをしてみたいとかクラブに行ってみたいとか、そういうことではない。いやそれもよく思うけど、残念ながらぶっ飛んだ方向に興味を持つことが多い。
最近のことだが、親戚が無くなった時に「葬式に行きたかった。行けばよかった。葬式は小さい頃に一回行っただけで全く記憶にない。体験したかった」と真っ先に思った。結婚式にも参加してみたいとは思うよ。式場、その場の空気、人の感情、式の流れ。そういうのを分かるようになりたかった。虐待されていた過去とかPTSDとか援交とか死体とか、人に直接取材するくらいには興味がある。べつにそれに対して何か思うわけではない。何も共感しないし、「はー人間はこうされるとこうなるのか〜」と表面的に解りたいだけだ。
だから人のエッセイや日記が好き。人はどう思うのか、どうなるのかということがとにかく気になるんだと思う。葬式も式場の様子とか流れとか言ったけど、本当は火葬される前の故人の姿と骨になったあとが気になるし、遺族は泣くのか泣かないのかが気になる。心霊映像で見たスプーンで抉られた目玉だって、「人間の目玉についてる糸(神経ですね)みたいなのなんだろ」「意外と硬いんだな」としか思っていなかったと思う。だからすごく記憶に残ってるんだろうな。

これだけ描くと異常性癖者みたいだが、自分が体験したいとは全く思わないし、見て聞くだけで十分だ。そのせいで何回か後悔している。最近はYouTube Shortで流れていた検索してはいけない言葉を一つ検索して、死んでしまった。
あ!書いてる間に思い出して気分悪くなってきた!昨日観た『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』に出てきた絵も、あの心霊映像を観たときと同じような気分になって後悔している。


2023-6-10