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アパートの鍵貸します (1960) 米

ヒリー・ワイルダー監督

原題は「The Apartment」
断然、邦題がいいですね。

この映画は
アカデミー賞・5部門のほか 数々の賞を取った
クリスマス・イヴから ニューイヤーにかけての
世界中で愛された ロマンチック・コメディです。

           〇

1959年・12月。
従業員約3万人の ニューヨークの保険会社。
その19階の大部屋で勤務する
バドこと C.C.バグスター (ジャック・レモン)が主人公。

夕方、5時20分になると 社員はいっせいに帰って行くが
バドだけは 今日も残業だ。
仕事が残っているからじゃない
アパートに帰れない 事情があるのだ。

これは勿論、皆には内緒だが
実はバドは 自分のアパートの部屋を
昇進への口添えを見返りに
4人の課長たちに 逢引き用のホテル代わりに貸していた。

ラブホテルなんて ない頃のお話ですよ。

時間を計って帰宅しても 時間延長はしょっちゅうで
そんなときはノラ猫みたいに
公園のベンチで震えながら時間をつぶす。
なかなか辛いのだ。

そんなある日、
シェルドレイク部長 (フレッド・マクマレイ)に
呼び出されたバド。

どうして知ったか 知らないが
部長が「鍵の仲間」に入れてほしいと言う。

「それで早速、今夜 部屋を貸してよ。
 そのかわり来月の人事異動で君は管理職 間違いなしだ」

さて、バドが想いを寄せているのは
エレベーター・ガールの フラン (シャーリー・マクレーン)である。

昇進が約束され 機嫌のいいバドは
フランをデートに誘うが
今夜は約束があるのと 断られる。

その約束とは・・・
実は シェルドレイク部長の不倫のお相手は
フランだったのだ。

そんなこととは知らず
ふたりのために 自分の部屋を貸したバドだったが
翌日、クリスマス・イヴの 社内パーティで
ひょんなことから その事実を知って ショックを受ける。

イヴの夜というのに
バドがひとり やけ酒を飲んでいる頃

バドの部屋では 部長とフランが
甘い甘いクリスマス・イヴを・・・
じゃなくて、別れ話でモメていた。

妻との離婚を ほのめかしながら
一向に誠意を見せない部長。

「あなたはそうやって、いつもの列車に乗るために
 時計を気にして 口紅のシミを調べて・・・
 そういうことすべてが 今は汚らしく見えるの
 悪いけどもう、次のエレベーターに乗って」

夜更けてバドが部屋に帰ると
フランが睡眠薬を飲んで ぐったりしていた。

驚いて、隣の部屋の医者を呼んで
必死に看病するバド。
やっぱりフランは 自分にとって大事な人!

翌朝、一大決心をしたバドは 部長室に乗り込んで
フランにプロポーズすることを宣言する!
・・・はずだったが

このとき一瞬早く、シェルドレイク部長が言った。

「僕はフランと結婚するよ、離婚が成立したんだ
 君も部長補佐に昇進だ。で、それでまた今夜、鍵を貸してよ」

・・・・・・・・・
「お断りします」

数日後
新年を レストランのパーティで迎えた 部長とフラン。
「馬鹿なやつだよ、会社も辞めるそうだ」

それを聞いたとき
バドの気持ちに ようやく気づいたフラン。
「私を本当に愛してくれているのは 誰なの?」

ハッピー・ニューイヤーで 浮かれている部長を残して
バドのアパートに急ぐフランでした。

おしまい

          〇

ワイルダー監督の 特にラブ・コメディは
会話がしゃれていて 小道具の使い方も
とってもセンスがいいですね。

当時、たくさんの映画やドラマが
この作品を引用したそうですが
バドが フランと部長の関係を知ってしまう いきさつなど
秀逸なセンス。

ジャック・レモンさんは
戦後、米国映画界最高の喜劇役者と 言われた人で
4歳から舞台に立っていたそうですが なんとハーバード大学卒。

シャーリー・マクレーンさんは
この作品で 各国の主演女優賞をとりました。
『俺たちに明日はない』の ウォーレン・ベイテイの実姉。

でも私が一番好きなのは
シェルドレイク部長の フレッド・マクマレイさん。
昔々、日本でも放映されていた「パパ、大好き!」の
とっても面白くて優しい パパを演じていた俳優さんよ。

とにかく、胸にあったかいものが沁みてくる
年末にぴったりの映画です。






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