Moulin Rouge
タイトルに意味はない。
ただ、感覚に触れるからムーラン・ルージュをタイトルにした。
しばらく、私は仕事に追われている。
娘の学費を稼ぐため、髪を振り乱し身を粉にして働く。
それは、紛れもない私の、意思だ。
やる気だってある。
しかし、私は重要な役職のある社員でもなく、単なる従業員に過ぎない。
病院の、患者様が使用した衣類を、
大きな袋で回収し、
指定の倉庫まで運んだり、
納品した、発注しておいたパジャマなどを各病棟の納品棚に収める。
その二つの仕事を2人でそれぞれやっているが、
会社から一向に新しいスタッフの話が来ないし、
どこの現場も人手不足なので、
私は一人でどちらも担当している。
100%の仕事を200%やるのだから、
大変なんだと思う。
でも、私はそれを口に出さない。
むしろ自然にやるようにしている。
現場リーダーだから、他の仕事すらこなしているのだ。
ただ、人目には一人でこなしていても、
大変さを察して手伝ってもらったり助けてもらっている。
時間に追われる中で、普段なかなか来ないエレベーター。
3階で止まっていたはずなのに、
ボタンを押そうとした瞬間に一階にいる私の階でドアが開いたり、
作業からエレベーターに乗る時には
エレベーターに開いて待っていてくれたり、
そんな時必ずお礼を言う。
そして何度も確信する。
ある日、エレベーターを降りて倉庫に着く手前で
私にメッセージをくださる方がいた。
"実話として話しては聞いてくれないよ、物語にしなさい"と。
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