ちゃんと出会う

私は殺された。
殺されておきながら、生を求めた。
ぱらぱらと散らばる私の肉片をかき集めた。

今日もまた彼女に呼び出された。いつものように、無計画にまちをぶらつく。どこに行こうとか、そういうのはない。

その一つ一つに名前をつけて、生きるために、詩を書いた。
何が私を殺したのか、探究するために。
その犯人に、私が生き延びたことを、その息吹を知らしめるために。

彼女はいつも僕の左側に座る。人の右側にはいられないらしい。腕を組み、肩に頭を乗せ、甘えるようにこちらを見てくる。

よかった、私の土台が戻ってきた。
できた詩を左胸にそっとしまいなおす。
あれ。まだ足りない。どうして?
低い、落ち着いた優しい声が、遠くから答えをくれた。

あぁ、彼女はきっと罪深い。そうやって彼女の心の奥底にぽっかり空いた穴が見えたとき、僕の声は、手は、僕の意思など関係ないみたいに勝手に愛を与えてしまうのだから。大丈夫、わかっている。これは「無償の愛」。僕の方の穴は一向に埋まる気配を見せない。

どうやら日常は、社会を切り取るらしい。
「あたりまえ」じゃない私。風当たりは強かった。
切り取られてしまったら最後、
引き取り手のない「間」に吹き飛ばされちゃったみたい。

彼女の「穴」の正体は知らない。彼女のことなんて何も分からない。分からないけれど、彼女に近づく梯子を探して、ちゃんと彼女に「出会いたい。」彼女は一体、どこにいるんだろうか。

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