途中の一部分、何故か出してみる。


 視界に広がったのは真っ白な世界。天国にやってこれたのだろうか。淡い期待を胸に僕はあたりを見渡した。起きようとしたが、起き上がれない。薄れてきた意識が戻ってくると、徐々に周りの状況がわかってきた。此処はだだっ広い真っ白な部屋で、そこを慌ただしく人々が行き交う足音がなり響き、それと共に冷たい電子音が鳴り響く中で、時折怒号も飛び交っていた。よくこんなところで眠っていられたもんだと妙に冷静で、そんな自分に心の中で思わず苦笑いを浮かべた。
起き上がることもできない。そんな中で出来るのは真っ白な天井を見つめるか、或いは目を閉じて考えを巡らせることだけだった。
此処は天国じゃないな。地獄だろうか。行き交う人々は鬼なのだろうか、普段の生活では滅多に聞くことのないような太く低い声が響くこともあった。

目を閉じた後、だんだんと周りの音が消えていく中で、不意に気付く。ところで、何故僕は天国へ行きたがっているんだろう。死にたかったのかな?それは何故?
自殺をしようとして、此処に、地獄に落ちてきたのだろうか。
無意識に目を開けた瞬間

目覚めたんですね!

甲高い声が響いたと思った瞬間、周りの音が戻ってきた。

今先生を呼んできます!

騒がしい中でもその甲高い声は一際目だった。それはどうやら僕に向けられていることも理解できた。

大丈夫か、返事できるかね。

甲高い声に呼ばれてきた「先生」が慌ただしく僕に話しかけてきた。たしかはいと答えた筈だけど、そこから先の事は覚えていない。

次に目覚めた時、というよりはっきり覚えているのは、また目覚めの時だった。目蓋の裏に光が差し込むのを感じて僕は目覚めた。視界にはまた真っ白な天井が広がっていたが、あの騒がしさはなくひっそりとしていた。上半身を起こそうと体に力を入れた。今度は起き上がることができた。僕はベッドの上に座りながら周りを見渡した。

白い天井に頭の上は白い壁に、僕が寝た時に頭の右上に位置するあたりから体の下の方にかけては、ベージュのようなカーテンで仕切られていた。僕の左手首にはぐるぐる巻きにされていて、そこに固定されたチューブがベッドの上に固定されたプラスチックのような液体の入った容器に繋がっていた。

あれは点滴だ、と気付いた時、僕の置かれている状況が理解でき、騒がしかった部屋との時間のつながりも自分なりに理解できた。
僕は死のうとしたんだ、意識をなくして、だから生死を彷徨うような場所にいたんだ。集中治療室なのか、救命救急だったのかはわからないけど、あそこで僕は目を覚ましたんだ。だから看護師さんが僕に気付いて先生、医師を呼びに行ったんだと理解した。容態が安定して大丈夫だと判断されたから今僕は此処にいるんだろうと考えた。

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