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音響雑記#004 多極管の球転がし(KT88, EL34, 6L6GC, KT66他)

OCTAVE V70SEは、BIAS調整により真空管を入れ替えて聴き比べる所謂球転がしを楽しむ事ができる製品です。
そこで真空管アンプをお使いの方にとってパワー管選びの参考になればと思い、PIEGA Coax711と組み合わせて主にクラシックを聴く場合という前提ではありますが、各真空管の感想をまとめてみようと思います。
(なお、入手の容易性と品質の安定性から、いずれもヴィンテージ管ではなく現行管です。)

6550WE(SOVTEK)

V70SEの純正管です。ただし、高域の煌びやかさが特徴的なCoaxとの組み合わせでは、低域の膨張した感じが気になります。以降はこれをベースに比較していきます。

KT88(Genalex Gold Lion)

6550に比べて低域は若干タイトに引き締まり、力強くエネルギッシュで熱気を感じる出音が印象的です。そのため、ジャズやロックをよく聴く方には選択肢として非常に有望だと思います。

6L6GC STR(TUNG-SOL)

KT88に対し中域に厚みが出て、バランスはフラット寄りに。倍音の豊かさから、特に弦楽器における擦過音の生々しさは特筆物です。ただし全般的に音粒のタイトさは減衰し、微かに滲みを感じてしまうため、音質が硬めのカチッとした出音のスピーカーと相性がよいのではないでしょうか。

KT90EH(Electro-Harmonix)

6L6GCから中域が更に強調され、結果としてカマボコ型の音域特性になっている感覚。僅かにあった滲みは無くなり、KT88で感じたのに近いパッションを感じる力強い出音に。恐らく、この球で聴くボーカルものは、そのリアリティさの虜になってしまうのではないでしょうか。

EL34(Mullard)

これまでに聴いてきた球に比べて全体的にバランスが高域寄りになり、Coaxの音域特性とは好相性。ただし多極管らしい俊敏なトランジェントとCoaxのリボンという機械特性の相乗効果により、少し固めでシャープな感じが時に耳にキツく感じてしまいます。

KT66(Genalex Gold Lion)

EL34に比べてエネルギー感は減るものの、繊細で洗練された透明感ある出音がとても上品。各楽器が生々しく、大編成でも個々の音が団子にならず、倍音表現と解像度が絶妙にバランスしています。

KT66R(Golden Dragon)

Gold LionのKT66がとても好印象だったために別メーカー品との聴き比べ用に追加。思いの外差異が感じられ、KT66というより6L6GCに似たゆとりあるふくよかな出音。良く言えば重厚だが、悪く言えば重鈍であり、自身の好みには合いませんでした。

結果として、全7種の現行管を大人買いして聴き比べてみましたが、最終的に我が家においてはCoaxのリボンの繊細さとのマッチが絶妙なGold Lion KT66が常用管になりました。

球転がし可能なアンプをお使いの方は、色々と差し替えて楽しまれてはいかがでしょう。

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