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スコアを管理するアプリ、スコアを向上させるアプリ ーその1ー

ゴルフ場へ行っても、スマホでスコア入力をすることが、すっかり一般化した。最近ではカートにタブレットが装備されていて、トーナメントさながらコンペの順位がリアルタイムで反映できるようになっているゴルフ場も増えている。プラスチック廃棄物やコストの問題で、紙のスコアカードやクリップペンシルが廃止されるのも時間の問題だろう。

そんな中で、スマホのスコア管理アプリも様々なものが出ているが、誤解を恐れずに言えば、同工異曲なものが多く、スコア分析も必然的に良く似ている。例えばウェアウェイキープ率やパーオン率、パット数などである。

こうした伝統的なスタッツが、果たしてゴルファーの能力を正しく反映しているか、また能力を向上させる正しい練習に、導いてくれるのだろうか?

その問題点はすでに指摘されていて、例えばパーオン率が上がればパット数は増える傾向にある。これは考えてみれば当たり前で、パーオンする時には総じて遠い距離からグリーンを捉えているのでピンから遠くなりがちで、パット数は増えやすい。逆に、ショートゲームでグリーンを捉えている場合は、ピンへ寄り易くなり、パット数は減る。

しかし、このスタッツから、自分の課題がグリーンを狙うアプローチショット精度にあるのか、ショートゲームの精度にあるのか、それともパッティング技術が足りていないのか、即座に判断するのは難しい。

そんなカッコいいことを言える身分ではない、私のスコアを見返してみると、ダボやトリがずらりと並んでいる。OBやハザードなど明白な原因があればともかく、OBもなくパット数も2なのに、気づいたら8打も打っている。また、パット数からは、3パットやむなしのロングパットをうまく処理した結果なのか、それとも1mをミスパットして2パットにしてしまったのかも、よくわからない。

このような、原因不明のダメスコアにこそ、最大のミスと今後の課題が隠れているのだろうから、スコア管理にとどまらず、スコアから自分の弱点をあぶり出して、次の練習の糧にしたいとかねがね思っていた。すると、幸いなことに、これまた既によく知られている新しいスタッツがあった。

それが、Stroke Gained (稼いだ打数)という手法である。SGについては、このサイトに素晴らしい解説があるので、詳細は是非見て欲しいが、少しだけ拙い説明をすると、「全てのストロークの価値をゴルフにとってのお金に相当する'打数'で表したもの」である。

https://golfblog.hatenablog.jp/entry/2018/08/17/173241

あなたが放った今の1打は、スコア上昇の観点で評価すると、それは1打以上儲かるいいショットだったのか、はたまた1打以下の価値しかないショットで損をしたのか、明確に教えてくれるのがSGだ。

これだけではまるでわからないと思うので、もうちょっとだけ補足。

の前に、少しだけ脱線すると、SGは「全てのストロークは等価である」という、故中部銀次郎氏の箴言と矛盾するように見える。しかし実はそうではない。SGはあくまで「他のプレイヤーに対してストロークごとの得失を算出する」ものであり、中部氏の言葉は「プレイヤー自身の心の有り様。他人を気にせず、自分のスコアを高めるためには、どういう心でプレーするのが良いか」を説いたもので、次元が異なるからだ。

(注記)以下の例で示されるストローク数は全て架空のもので、実際のSGとは異なる。

本題に戻る。シンプルにするために、まずグリーン上のパットだけでSGを考えよう。あるグリーンにプロ10人がやってきて、同じ3mの場所からパッティングをしたとする。5名は1パット、5名が2パットだとすると、平均パット数は1.5となる。SGでは、1パットでホールアウトしたプレイヤーは、他のプレイヤーに対して0.5打稼いだことになり、逆に、2パットしたプレイヤーは0.5打失ったことになる。これがもっとも基本的なSGP(ストロークゲインドパッティング)の考え方である。

現実世界は、こんなに単純ではなくて、実際には様々な距離、様々な条件からパッティングをする。平均パット数なんてわからないだろう、と思われるかもしれない。実は、SGの肝は、PGAツアーから膨大な統計データを集めることにより「プロは、カップからXヤードなら、平均Yパットでホールアウトする」ことが、統計的にわかっていることにある。

SGPが新しい指標として世に認められ、SGは今やパットだけではなく、ショットにおいても同様に、常にピンまでの残り距離に対する平均ストローク数がわかっている。さらには、プロだけでなくハイレベルアマチュアの競技プレー内容もデータ化している。

さて、ここでイメージをグリーンからホールへ広げてみよう。ここに470ヤード、パー4のホールがある。470ヤードからはプロは平均4打で上がり、200ヤードからは平均3打、10ヤードからは平均2打であることがわかっているとする。(SGではライの影響も加味するが、簡素化のためここでは無視する)

飛距離のでるプロAが、第一打を放ち、残った距離が180ヤードだった場合、第二打からホールアウトするまでの平均打数は、次打がピンにより近いため、直感的に3打より少ないはずである。

逆に、飛距離のでないプロBが220ヤード残した場合は、3打より幾分多くなるはずである。つまり、このホール第一打で、プロAはいくらか打数を稼ぎ、プロBはいくらか打数を失ったと考えられる。

これを計算するのは実は単純で、ストローク前の残距離平均打数とストローク後の残距離平均打数の差から、1打を差し引いたものがそのショットのSGとなる。(実際のゴルフは、ストロークが少ない方がいいので、計算は逆になる)

先程の例を続けると、プロAは、よいドライブを放ったため残り180ヤードまでボールを進めることが出来た。180ヤードからの残距離平均打数は2.8打とする(残200ヤードからの平均3打より若干少ない打数)。

しかし、次のショットはブレて残り20ヤードとなってしまった。20ヤードからの残距離平均打数は、(残10ヤードからの平均2.0打よりちょっと多い)2.1打とする。

第3打はチップショットが冴えて、残り0.5ヤードにつけることが出来、残距離平均打数は1.0としよう。50センチ足らずのパットを沈めて、パーでホールアウトした。このときのSGは以下のようになる。

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このプロAは、0.3打失った180ヤードの距離が弱点であり、そこを強化すべきだろうか?そうかも知れないし、そうでないかも知れない。1ホールだけの結果でそれを判断するのは早計である。しかし、シーズンを通して、あるいはキャリアを通じて、同じような距離のショットでのSGを蓄積していくと、弱点が浮き彫りになってくる。

もし、プロAが、シーズンを通して180ヤードで0.3打失っていたとしたら大問題である。なぜなら、180ヤードのショットを10回打つごとに、ツアー平均プレイヤーに対して、3打差つけられることになるからだ。4日72ホールの内、パー4は40ホールくらいあり、第二打で180ヤードを40回打ったらそれだけで12打も差がついてしまう。

他方、ドライバーがシーズンを通して0.2打稼げるとしたら、4日間でやはり40回ドライバーを使えるホールがあるとすると8打稼げるが、上記の損失を完全には補えない。やはり、180ヤードのショット精度を高める必要がある。つまり、そのプレイヤーに頻出する残距離を得意な距離とし、稼いだ打数と失った打数の差を最大化することが、好成績につながるのである。

ただ、普通のアマチュアの場合は、ラウンド数も少なくデータの蓄積量が少ない上に、プロやハンデゼロプレイヤーデータを基にした平均打数に対して、失った打数が大きく出るため、単純にSGが悪い距離を優先課題としていいと私は思う。

ストロークゲインドは、全てのショット価値を可視化する。自分のショットデータを集めれば集めるほど、どの距離帯・どんなライのショットで自分は負のSG、すなわち打数を失いやすいかがわかる。どんな距離・どんな状況を想定した練習を積むべきかの課題がくっきり見えてくる。

と、私は固く信じていて(笑)、SGのデータベースを利用した有料アプリ「Golf Metrics」を使っている。SGの最大の欠点は、正直、記録するのが恐ろしく面倒くさい点である。けれどもその面倒さは、自分のプレー内容を見返してみるのが、めちゃくちゃ楽しいというメリットで報われるということでもある。是非使ってみてほしいソフトである。

今回はここまで。ちょっと解説のつもりが全然ちょっとじゃなくなってしまいましたが、楽しんでいただけたら嬉しく思います。

次回はGolf Metricsアプリの紹介と記録の仕方、実際の私のSGを紹介します。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。もし宜しければ評価、コメント、フォローどうぞ宜しくお願いいたします。


 


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