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佐藤弓生の「近・現代詩おぼえがき」第7回:斉藤倫詩集『さよなら、柩』評

斉藤さんの詩集はいずれも一貫して内気で繊細なのだけれど、本書では歴史上の人物ルドルフ・ヘスから「幹事」「男子中学生」まで、いろんな人たちが罪とか悪とかについてうらうら考えているというスケールアップ(?)がみられる。無垢というもののありにくさをさびしみつつ、なおも求め続けることが詩作であるというように。

「愛してるの/してるだけが/好きなんでしょう(中略)□してるの/□には何が入っても/気づきもしないんでしょう」(「首」)と、「わたしは犬のねす/わたしは犬のす/わたしは犬です/犬なのでうまくしゃべらない」(「ピアニシモ」)――人への絶望と、獣への愛着。

「好きなひとにゆっくり/アタマをなでられていると/とろみがついてくる」(「とろみ」)は、人のなかに棲む獣、ひとつの理想郷を、ゆかいに言いあてている。きっと。


初出:「かばん」2010年12月号


『さよなら、柩』(思潮社)
http://www.shichosha.co.jp/pdf/title_list.pdf
https://twitter.com/saito_rin


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