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転生したら王女だったけどデビュタントがお尻叩きだった件

<転生したら王女だったけどデビュタントがお尻叩きだった件>

 
貴族社会では十六歳になったらお披露目のパーティを行う。デビュタントと呼ばれるその社交界デビューは全ての貴族の女子の憧れだった。
 しかし、その国では憧れではあるものの、その日どんな素晴らしいドレスを着て、華麗なデビューを果たしたかを不思議と喋りたがる者はいなかった。そしてそれは王族とて同じだった。

 私の名前はエミリア。この国の第一王女だ。前の名前は坂本久美子。国内最大手IT企業に勤め、役職にもついていた二十八歳の企業戦士だった。それが何の因果かある日突然、この異世界に前世の記憶を持ったまま転生したらしい。
 物心がついた頃、その前世の記憶は急に蘇った。この記憶が私の妄想の類じゃない証拠に日本の様々なこの世界では考えもつかない高度な科学技術を知っていた事。
 それらをこの世界で造れるほどの専門技術は無いが、いくらかの知識は現状あるもののグレードアップに繋げれたと思う。
 そんなこんなで何とか知識を使い神童と呼ばれながらちやほやとされ、王宮で贅沢三昧な日々を過ぎしてきた。
 私の頭脳はこの世界でも役に立つし、このままいけばこの国の女王だ。伴侶は絶対にどこかの上級貴族からか、他国の王族からとらねばならないが、まぁそれは仕方がないと思えるくらいには大人だったし、王族としての意識もある。
 だけど、そんな幸せな日々の中で私は十六歳を迎えた。迎えてしまった。

「はぁ…出たくない」

 思わずため息がでる。周りにいる侍女たちは何も言わない。これから何が行われるのか知っているのだ。王宮の侍女たちは下級貴族の令嬢ばかり。彼女たちも通ってきた道だ。これが、女性 貴族が多いこの国のしきたり。嫌ではあるが誇らしいとでも思っているのだろう。
 だが、私は違う。日本人としての意識もしっかりとある。そんな…大勢の前で…何て、恥ずかしくて死にそうだ。

「エミリア殿下、着替えの準備が出来ました」

 着替え担当の侍女が私を呼びに来た。私はまた溜息をつく。ソレをされた事がないわけではない。この国の躾は厳しい。神童と呼ばれる私だってマナー面ではからっきしだったからかなりソレをされた事がる。それに、前世では中学生くらいまではよくママにされていた。でも、だからといって、ねぇ?

「分かったわ」

 嫌でも仕方がない。第一王位継承権を持つ私がデビュタントに出ないわけにはいかない。他の上級貴族の令嬢たちも待っている事だろう。期待に胸を躍らせつつも厳しい儀式に怯えながら。

 ガチャリと警備兵が大きな扉を両サイドから開ける。私はまっすぐ前を見ながら、堂々と進んだ。心臓が飛び出さんばかりだが、それをおくびにも見せない。
 最高級の仕立ての煌びやかな紅いドレスに身を包み、私を待つ大勢の貴族の前に姿を現す
 大きな歓声と拍手。自慢じゃないが、私は前世の時から超絶美女だった。知識欲が強すぎて、モデルやタレントに誘われる声も無視していたが、その程度には顔には自信がある。
 私の権力と美貌に皆が溜息を漏らし、賞賛を浴びせる。当然悪い気はしない。こうやってちやほやされるのは王女の特権だ。
 微笑を讃えて軽く手を振る。しかし、この人数の中儀式を見られるのは恥ずかしいという思いは消えない。お母様もお祖母様も、この国の貴族女性なら皆が受けてきた儀式。
 拍手している方は気楽なもんだ。自分の番は終わっているのだから。

「さぁ、お披露目の儀式を始めましょう!」

 いつものまにきたのやら、中二階の豪華な仮の玉座に座っている私のお母様、つまり女王陛下がそう声高らかに宣言した。
 電気代わりに溜められた魔力の光がシャンデリアを煌々とホール全体を照らして、お母様をより一層美しく威厳高く見せている。
 私の心臓はドキドキと高鳴る。呼吸が苦しい。華麗な社交界デビューに対しての期待からではない。今から始まるのは、女性上位なこの国の貴族の女性としての覚悟を示すための儀式。
 剥き出しにされたお尻を叩かれ、その厳しいお仕置きを受けきった真っ赤に腫れ上がったお尻を神の前で晒すという儀式だ。ばかやろう。

 八割ほどが女性の上級貴族が百人ほど集まったホール真ん中に私を含めたデビュタントを迎える伯爵家以上の令嬢が五人並ぶ。皆一様に緊張し、誇らしさや嬉しさはあまり見えない。当り前だ。こんなところでお尻を丸出しにして叩かれるなんて死ぬ。私の中の日本人としての乙女とか色々が。

「それではデビュタントを祝う為に、神官たちに初めの清めを与えて貰いましょう」

 凛とした私のお母様の声がホールに響き渡る。心の中じゃ軽く「頑張れー」とでも思っているのだろう。優しく厳しくあっけらかんとした人だ。本気で目出たいと思っているはずだ。後、自分もやられたんだから娘も味わえと。

 ホールの中央に椅子が五脚並べられて、白い神官服に身を包んだ落ち着いた雰囲気の女性がその横に同じように五人並び私たちに向かって深々と礼をした。
 それがいかにも儀式という感がして私は余計に溜息が出そうになる。こんな事なら裕福な下級貴族にでも生まれた方が良かったかもしれない。
 
「この度はおめでとうございます。今回は我々が初清めの儀、務めさせて頂きます」

 代表して中央の女神官が穏やかにそう言った。女神官になる修行は厳しいと聞いている。この人たちも後輩のお尻を毎日のように叩いているのだろう。それはつまり、効果的なお仕置きを知っているという事だ。ああ、嫌になる。

「それでは下着を下ろして、ドレスの裾を捲り上げてください。準備できましたらそのままわれらの膝の上にどうぞ」

 ほとんどが女性とはいえ男性のもいる中で下着を下ろしてドレスを捲り上げて、お尻を丸出しにしなくてはいけない。毎年やっている儀式的な物だけに性的な目で見る者は以内だろうが、それでも嫌なものは嫌だし、恥ずかし過ぎて死にそうになる。
 しかし、今日までに何度も何度も儀式のやり方と順番は聞かされているので、それなりに覚悟はできているのだろう、私の中の日本人が叫んでいる内に他の四人は顔を真っ赤にしながらも下着を下ろし始めている。

「あ~、もう…」

 当り前だがやらない選択肢は、ない。恐らく日本人の感覚を持つ私が誰よりも恥ずかしく、王女である私が誰よりもやらねばならないと思っている。ああ、辛過ぎる。
 ほんの刹那の間だけ逡巡し、私も長いドレスの裾を引き上げ、その中に手を差し込む。最高級生地の滑らかな下着に親指を滑り込ませると、するりと太ももまで引き下ろした。そして、ドレスの裾を掴むとぐいっと腰の辺りまで捲り上げて、自慢の白磁器のような艶やかなお尻を丸出しにする。

「殿下、お手を」

 私がお尻を出して準備が出来たと見るや、私の担当の女神官が手を差し出してくる。何度か顔を見た事がある、女神官の中でも筆頭の者だ。

「え、ええ…」

 エスコートするように優しくてを添えられるけど、その手で今から私のお尻を死ぬほど叩くのだろう?私は微妙な気持ちになりながらも手を差し出し、緩やかにふわりと彼女の膝の上に乗せられた。

「失礼いたします」

 彼女は私の腰をしっかりと掴み、膝を調整して高くお尻を突き出すようにする。皆に良く見せるように。
 よくあるお仕置きの姿勢だが、こんな明るい場所で、しかも大勢の人間が見ている。そこで私は女性の隠すべき大事な部分を全て曝け出した。

「そ、そんなにしなくてもいいわよ…」

「いけません。お恥ずかしいのは分かりますが、打たれて紅く染まったお尻を神と貴族の方々に見て貰うというのが儀式の根本ですから」

 知ってます。知ってますけどね。私は本当にここにいる女性の全てがこの儀式を受けてきたのかと思う。もはや一刻も早く、終わって欲しい。唇を噛みしめて時を数えてじっと耐えるしかなかった。

「では、始めよう」

 お母様が開始を宣言する。と、同時に私と他の四人のお尻に平手が甲高い乾いた音がホールに鳴り響く。

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