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シリーズ:プレイ当てるおじさんの思考を因数分解する

いやー、Trent Williams再契約しましたね。前回にマストと書いときながら予想以上に待たされたのでロマンチックが止まらない日々を過ごしていました。

さて、本当は49ersシーズンレビュー、次はRBかなー、なんて思ってたのですが、先になんとなくアメフトプレイ未経験視聴者達が興味のありそうなトピックが降りてきたので、シーズンレビューの合間に入れようかと思います。題して「プレイ当てるおじさんの思考を因数分解する」です。

因数分解あたりから急に数学の成績が悪くなった僕なので、厳密には因数分解じゃねぇ!と言われそうですが、気にしません。よく観戦しながらTwitterみると「そろそろ〇〇くるよ」って言ってるおじさんがいますよね?僕もその一人なんですが、そのおじさん達の思考を簡単に解説出来ればなーと。僕の場合、視聴中は完全に経験でなんとなく言ってるだけなんですが、そのなんとなくの裏にある、定説的なものを解説します。

第一回のテーマは敵陣入ってすぐの「そろそろPAで1発タッチダウン狙ってくるよ」です。こんなのですね。

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これは2019シーズンのプレイオフ。ディビジョナルラウンドのテネシー・タイタンズvsボルチモア・レイブンズの試合。レイブンズが4thダウンギャンブルに失敗し敵陣46ydからタイタンズのオフェンスに。
僕含め、数人のおじさんが「PAで狙ってくるよ!」とツイートしてたのが記憶に色濃く残っていたのでピックアップしました。

案の定1プレイ目で...

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タッチダーウン!

さて、この背景にある考え方は??いくつかの要素を今日は紹介します。

①レッドゾーンを嫌いなのはディフェンスだけじゃない。

NFLってやたらレッドゾーンのスタッツを取り上げますよね。レッドゾーンとはエンドゾーン前20yd以内のことを言います。

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NFLにおいてはこのゾーンに入ればFGはほぼ入ります。ですのでディフェンスにとっては失点当たり前、タッチダウンをさせないことが基本的な目標となるエリアです。

ではオフェンスにとっては?基本的に得点圏に入っているので野球でいうサードベースにランナーがいる状態?3点でも取れたら勝ち、という発想であればそうかもしれませんが、タッチダウン狙いとなると変わります。

まず、オフェンスは奥に展開するプレイをするスペースがなくなる。
上の写真で紹介しているようなプレイアクションのディープパスはそもそもエンドゾーンを超えてしまうため選択肢から外れてしまいます。

奥のプレイ展開が無いとディフェンスはアグレッシブに攻めてくる。
後を抜かれる可能性が低くなること、抜かれてもエンドゾーンの奥のラインを味方につけばいいことを踏まえるとパスカバーしているDBやLBがよりアグレッシブに前にアタックしてきます。そうするとスクリーンなどもDLを超えてもすぐLB、DBがタックルしてしまうという状況になるわけです。安心したDL達も縦にプレッシャーをかけてきます。

パスのレーンが狭くなる。
さらにパスカバーも守るゾーンが狭くなり、一人ひとりのディフェンダーの間の隙間が狭くなりパスの難易度が上がります。

これらの結果として、オフェンスのプレイコールは相当制限され、ゲインするのもそれまでより格段に難しくなるのがレッドゾーンです。オフェンス側の思想としては、「レッドゾーンに入る前にタッチダウンがとれると楽」となるわけです。野球ならツーアウト満塁の方が近いかもですね。

ゴール前だとよく長身レシーバーでCBとジャンプ勝負したり、バックショルダーのパス投げますよね?これはCBと1on1のマッチアップになることを活かして、ロブショットのようなパスを投げることで間に他のディフェンダーが入る余地を無くすためのパスな訳です。レッドゾーンでなければ他のパスの方が成功率もヤードの期待値が高い。それでもレッドゾーンでは多用されるほど、オフェンスにとっても厳しいゾーンなわけです。
(写真はよくバスケにちなんで、アリウープって言われますね)

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②ディフェンスがタッチダウンへの警戒が緩む瞬間こそがチャンス

フットボールのルール説明の時よく、4回の攻撃で10ydとったらダウン更新、って話しますよね。あれって正しいんですけど、あくまで手段なんですよね。オフェンスはタッチダウンやフィールドゴールを目指していて、ダウン更新しなくても取れるならそれでいいわけですよ。

ディフェンスも同じなんです。そりゃあ10ydとってまた1stダウンからっていうのを何度も繰り返されるといずれタッチダウンになってしまうのでダウン&ディスタンスは常に意識してます。でも、それ以上に一番不味いのは1発タッチダウン。ディフェンスの脳裏に常に防がなければいけないものとして存在しているわけです。

じゃあこのセクションタイトルにある「タッチダウンへの警戒心が緩む瞬間」っていつ??

簡単です。よっぽど他の何かを達成したい時です。人間の集中力は限界があります。何かを意識するとその分他への意識が薄れる。1発タッチダウンの確率が上がる時、それってどんな時でしょうか?

ちょっと前のめり:ショートヤーデージシチュエーションや3rd\4thダウン
ディフェンスの脳裏には、止めてオフェンスに回したい、という欲求があるので、リスク少しをとってでも止めるぞ!モードになります。

まぁまぁ前のめり:セーフティのチャンス
2点取れるしモメンタムも一気にこっちのもの!DL,LB辺りの鼻息はマックス。荒男です。フロントのテンションだけでいうとタッチダウンの可能性なんて微塵もありませんが、セーフティを取ることがほぼ無いDBは意外と冷静。抜かれない意識が強かったりします。でも毎年のように99ヤードタッチダウン、見る気がしますね。

かなり前のめり:0点と3点の瀬戸際
フィールドゴールレンジに入るかどうか、入っても成功率が低い距離で止められるか。FGはボールオンの位置がものをいうので、できればキッカーが蹴れるかどうかという距離、ダメでも成功率がグンッと上がるまでの間の距離の間で止めたいのがディフェンスです。NFLの場合は60ヤードくらいから蹴れる(ボールオン敵陣43くらい)、50ヤード以内(33以内)になると成功率がグンッとあがります。その近辺を守る時、ディフェンスは自ずとアグレッシブになるわけです。

③失敗してもいいんだよ!

これ、①にも関係するようんですが、フィールドを広く使うっていうことはディフェンスがクッションを持って動いてくれるんですよね。縦にスペースができる。

先日、少し頭頂部が薄い、ブリーズというレジェンドQBが引退しました。彼の最終年、常に言われていたことが、「20ヤードより奥のパスをほとんど投げていない=おそらく投げられない」ということでした。勝ててるからいいじゃ無いか、とかではなく、これってオフェンスにとってはハンデになるのです。
(たしかに20超えが少ない)

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①と違い、レッドゾーン以外では常にロングパスの脅威をチラつかせることによってDBのランサポートを遅くしたり、ドローやスクリーンの効果が出るわけです。

ロングパスを相手が忘れている時に1発投げるのは、相手への牽制としても役に立つので、失敗しても良いからたまには投げよう、という思考が働くわけです。通ればロングゲイン、ミスしても牽制ということですね。
でもこれは通さなあかんやつやってんで...

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改めてタイタンズのシチュエーションを見てみる

それでは改めてこのプレイを振り返ってみよう。

このプレイの直前、ディフェンスのハッスルプレイによりタイタンズのオフェンスは絶好のポジションから攻撃スタート。ボールオン敵陣46yd。ギリギリFGは無理。レイブンズディフェンスはダウンによるターンオーバー直後でモメンタムを取り返すべくメラメラ燃えている。止めたいのはタイタンズの軸となっているヘンリーのランに決まっている。しかもレイブンズは先行逃げ切り方チーム。7-0の1ポゼッション差はいいけど、2ポゼッション差は絶対に避けたい。

なんてことを考えると、決まっても決まらなくても1発プレイアクションパスで牽制してみたくなるものだ。決まれば大儲け。正直試合の体勢が決まったのはここだったわけだ。

こんな感じで、Twitterで「そろそろ〇〇くるぞ!」とか言ってるおじさんたちは案外、試合の流れや心理状況がわかっているのかも知れない。これからも優しい目で見守ってやってくれ。当たることはほとんどないから。

最後に。一応シリーズ化も検討しているので、もし「このプレイコールが盤石」とか「そろそろ〇〇」みたいなので疑問があればご連絡ください。チーズバーガー投げ銭も引き続き受け付けております!

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