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ポジティブを軸にチームと向き合う。メンバーと共にデータサイエンスでビジネスを創出

2020.10.23現在
2020年現在、MUFG AIスタジオ「M-AIS(アイス)」の所長に加えて、JDDの取締役副社長兼 CDO(チーフ・データ・オフィサー)を務める扇 裕毅。マネジメントとしての向き合い方やこれからの金融に対し、大きな想いを抱いています。そんな彼がどんな道を歩んできたのか、自身の言葉で語ります。



選んだ道は金融。道の先でさまざまな経験に遭遇する

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私が社会人になった当時は、ちょうどバブル期でした。

有形無形問わず、何かをつくりたいと思っていましたが、具体的なものづくりのイメージは湧いていませんでした。また、日本の高い成長が続くとも考えていませんでした。

こうした考えのもと、これまでとは違った視点から物事を始めたいと思い、日本に根差しながら、今後拡大する分野を選ぼうと考えました。そうして思い浮かんだのが、金融だったんです。

当時の三菱銀行では、入社直後、新入行員は皆、各地の営業店に配属されて学んでいきました。2店目のころから、個人営業から法人営業に担当業務が変わり、自分の目指していることを着実に進められている感覚が湧いてきました。その後、内部管理業務や債権回収など、ひと通り営業店業務に関わりました。

1998年に本部に異動し、初めてIT分野に携わることになりました。

当時はまだパソコンがひとり1台なく、インターネットにもつながっていないような時代だったので、それらを体系化していく段階でした。現在、銀行で使われているシステムの多くが、開発フェーズだったこともあり、自分でつくって改善を重ねていくことを繰り返し行いました。

その後、銀行統合やシステム統合を経験した後、1年ほど海外に駐在し、帰国後はデジタル企画部に所属となります。それまで法人部門でIT推進を担った経験はありましたが、海外にいた1年の間で、日本のデジタル推進の流れが大きく変わっていたことに驚きましたね。

しかし、デジタル推進を考える中で、実はテクノロジーだけではなく新しいものを積極的に取り入れる会社のカルチャーこそ大切だと気づきました。プロジェクト一つひとつより、カルチャーの醸成に苦労した実感がありますね。

銀行なので、プロジェクトの進め方や予算の取り方にしても、半年や1年という単位で石橋をたたいて渡る感じです。「とりあえずやってみよう」とはなりません。それに、数字を見て判断する仕事の進め方がスタンダードでした。そのため、MUFGグループ全体の力の集積が必ずしもプラスになっておらず、お互いの仕事に一所懸命で、綱引きをして前に進まなくなっている感覚がありました。大企業は少し変わろうとするだけでも大変なのだと身をもって経験しました。


M-AISの所長に。データサイエンスをビジネスへと
変換する


2017年の12月、M-AIS(アイス)のプロジェクト立ち上げの議論が始まりました。現在のMUFG亀澤社長と現JDDの上原CEOとの間で「MUFGのAIの頂をつくりたい」という話になったことがきっかけと聞いています。そうして半年間にわたる議論の後、M-AISの所長としてJDDに着任することとなります。

過去に、銀行の情報蓄積システムの基盤構築のプロジェクトメンバーだったこともあり、当時からデータサイエンスの必要性を非常に感じていました。ただしデータサイエンスなんていうしゃれた言葉は使われておらず、現在のようなツールもありませんから、基本的には実データをひたすら見続けるということですね。

データサイエンスは、データというファクトがあり、その裏側にどんな本質があるのかを見極めることです。データ一つひとつを目を皿のようにして見ていく、そしてそれぞれのデータごとの因果関係を考えることが必須です。

銀行本部に在籍していたころからデータに対するこだわりを持っていましたし、データサイエンスをビジネスにしていくことが、銀行が持っている膨大なデータの利活用につながると考えていたので、声がかかった際には、非常に光栄に思いましたね。

私がM-AIS所長に着任した当初、メンバーは数名でした。そこで、いくつかのエリアをビジネスにして貢献しようと考えた際に、必要となるキャパシティを見極めて仲間を集めていきました。現在では約25名のメンバーがいます。

そんな私たち最大の強みは、優れた人材と、MUFGグループのデータを活用できることです。ですから、その強みを活用してビジネスしようとすると、当面の主な顧客は必然的にMUFGになります。

すでにMUFGデータ活用ビジネスでM-AISは売上面でも会社に貢献していますが、メンバーには自分自身の仕事に興味を持ち、楽しんで仕事に取り組むことを常に伝えております。実データを分析してビジネスで生かしていけること、エンド・ツー・エンドであることを楽しんでほしい。

コロナウイルスによってさまざまな影響や苦労がある中でも、個々人が楽しんで仕事をすることは可能です。それぞれの道のプロが、強みを生かし、苦手な部分は補完し合うような進め方ができれば、と思っています。人それぞれ得意不得意、向き不向きはあるので、プロとしてのパフォーマンスが最大限発揮できる環境を整える必要もありますね。

またデータ分析そのものではありませんが、銀行をはじめとする顧客から、個人情報を含む重要なデータを預かるわけですから、日常のオペレーションも非常に大切です。データサイエンスビジネスは一見華やかに見えますが、データ周りやインフラ・セキュリティなど、しっかりとした日常のオペレーションの上に成り立っており、ここを支えるメンバーが大いに貢献してくれています。


メンバーを率いる立場。ポジティブを武器に前進する

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データサイエンスにおいて重要なことは、地道にデータを見ていくことと、顧客と納得いくまで話をしていくことしかなく、それを組織の閾値にすることが重要です。その点ではまだまだ発展途上だと思っています。せっかく実データを分析して気づきを得られるので、「次はこれをやろう」と何回もチャレンジしながら物事を見極めていき、顧客のニーズに先回りする形で、プロアクティブにビジネスを継続していく必要があります。

また、既存のルーティン業務がない中で新しいビジネスの企画をしていく必要もあります。まだまだストックがないので自分たちで開拓していかないといけません。これらを能動的に結びつけて、それを自分のキャリアに生かしていってほしいですね。幸いにしてチームにはデータ分析が大好きなメンバーがそろっていますし、楽しんでやってほしいです。

私自身も銀行から現在の環境に身を移してから、能動的であることは自分にも言い聞かせています。銀行のマネジメントになると、考え方は能動的だが行動は受動的になってきやすいので、考えも行動も能動的に変えていくように心がけています。自分で考えて、勉強していかないと、高いスペックを持ったメンバーをけん引するのは難しいと感じています。

マネジメントする立場になって、この仕事に対して求められることは、ポジティブさだと考えているんです。私自身もこれまで上司に恵まれてきていて、失敗も許容してくれる人が多かったと思っています。好きにさせてくれる上司が多かった分、私もなるべく好きにやってもらおうとしています。

メンバーから、「こういったファクトが出た」「こういったビジネスが獲れました」と報告をしてくれることは嬉しいですね。一方で、「こういった難しい状態になってしまった」と相談されるときにこそ、マネジメントの存在意義があると感じているので、チームメンバーと一緒に苦しみながら喜びを分かち合っていきたいですね。


業界を牽引する存在へ。新しいことに挑戦し続ける

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データサイエンスの領域に求められるのは、実として考えて実際にローンチさせることです。構想など、銀行には絵を描くことがうまい人はたくさんいます。実現させることには大変な難しさがありますが、JDDにはそれを可能とする人材がいて、ポテンシャルは高い。ここ2年、データと人を集めてやってきましたが、今後さまざまな可能性を秘めている組織だと感じています。

私としてもこれまでの金融のキャリアを生かして、メンバーと一緒に試行錯誤していきたいです。考えて、データをこねくり回して、また考える、といったプロセスを繰り返す、これを楽しみながらやるというカルチャーをメンバーと一緒につくっていきたいですね。

すでにこの時代は、過去の金融ビジネスの蓄積だけでは、ご飯を食べられなくなってきています。ただ、本当にやるべきことをやり、やれることにチャレンジしているかというと、まだまだ業界としてはこれからだと思っています。まだやれることはたくさんある。

私の銀行員キャリアは30年ですが、金融業界が大きく変わろうとしている中で引き続きこの業界に関わっていられることには感謝しています。また、JDDは金融業界ど真ん中に位置しています。テクノロジー、デザイン、データサイエンスなどといえばJDDだと周囲から認識されることを目指し、業界をけん引していきたいと思っています。