【物語1】指令が下る…
見下ろすと混沌とした世界が広がっていた。
そこはとても濁っていて透明感のない殺伐とした世界。
色も空気も漂っているエネルギーも……すべてが重たい。
ただ、下の世界に居る住人はその「重さ」に
気づいてないのか、気にもしていないのか……
その「重たい世界」で普通に暮らしているようだ。
僕は凄く驚いた。
あそこで暮らす人々は辛くないんだろうか。
不安はないんだろうか。
だって僕はあそこには住みたくない。
行かずに済むなら絶対に行きたくない。
もし僕が今、ここを飛び出して下へ行ったら…どうなるんだろう。
そう考えただけでスタースコアが一気に下がった。
うわっーーー💦
スタースコア(※略:スコア) は僕の世界で「魂の輝き」
を示すバロメーターになっている数字だ。
この世界はこれですべてが成り立っているのだ。
何をするにも、どんな場面でも、買い物や仕事も人付き合いも…
とにかく全てがスコアのやり取りになっている。
それが僕のいるこの世界。
スコアが上がると体がどんどん輝いてくる。
キラキラしている人はとても高いスコア保持者だ。
眩しく光輝く人の周りには沢山の人が集い、穏やかで賑やかで
幸せな時間が流れている。
そういえば、学校で学んだことを今、思い出した。
下の世界には「お金」というアイテムが存在すると。
その所有量で大体の事が決まっていると…。
お金をたくさん持っていれば…
偉くて、幸せで、充実して、自由が手に入り
お金がないと…
何もできず、生活も苦しく、不自由で、不幸せなのだと。
幸せ度や満足度はその「お金」の所有量で決まるという
凄いアイテムらしい。
きっとおいおいどんなスペシャルなものか分かるだろう。
僕の居る世界には「お金」というものは存在しない。
人の幸せ度や充実度は「スコア」で全部わかるようになっている。
だから常に「魂の輝き度」を上げることだけ考えていればいい。
人生で一番大切なことは「スコア」のクリア度を上げて、
輝く肉体を手に入れることなんだ。
そもそも下の世界と僕のいるこの世界では「密度」が違う。
僕の世界ではよく使う言葉「密度」
…どう説明すると伝わるのかな…
「重力」?「気体濃度」?
とにかく違うのだ。全然違う。
だからそう簡単には行き来は出来ない。
しかし今日、僕に下に降りろという指令が届いた。
指令には逆らう事ができない。
指令とはこの任務をこなして戻ると飛び級でスコアが
上がるというボーナスステージへの招待状のようなものだ。
指令には簡単なものから、高度&難解なものまで多種多様ある。
今回僕に届いた「下の世界へのトレジャー」は
かなり「高度&難解」な指令にはいるだろう。
選ばれし人にしか届かないかなりレアなものなんだ。
今日なぜかそれが僕に来たから、お父さんもお母さんも妹も
驚いた顔のまま固まった。
僕だって…まだ頭の中が整理できない。
何で? 何で? 何で僕なの?
(続く)
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