芦花

小説を書いています。

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最近の記事

Promise

「貴女がこの国を気に入るといいのだが」  鳥の国の王様が、人の国から嫁いできた姫に向かってそう言った。 「数百年を生き、人語も解す高材の王」と呼び名も高いのに、ずいぶん控えめね。  姫様はくすりと笑う。 「みなさん温かく迎えてくれましたわ。フラミンゴのダンスや、孔雀の羽根のアーチ。珍しくて嬉しくて、つい見入ってしまいました」  少しオーバーに感謝の意を伝えると、王さまはやっと安心したように羽根をひとふりして首をすくめた。「不躾な質問で失礼した。我が国は良い国だと自負しているが

    • 浦波 ―うらなみ―

       やっと取れた休暇を、故郷に似た海辺で過ごそうと思った。  故郷にいた時分にはあれだけ煩わしかった波音が懐かしくなるのだから、人間の勝手さには失笑してしまう。  しかし、それだけでもない。  会いたい人がいた。  頼まれ事をしたからだ。  ぶらぶらと海辺を歩きながら散策していると、女がふたり岩棚に立っていた。 「彼女は何をしているんだい?」と、そばにいたメイドに聞いた。 「存じません」とメイドはツンとすまして答える。  とりつく島もない。  肩をすくめて、もう一度海辺に佇む