第26回「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に係る態勢整備の期限設定について」―シリーズ7(シリーズ最終章)

株式会社日本資産運用基盤グループのJAMPビジネス・イノベーションは、金融商品取引業者様及びその登録を目指しておられる方々向けに、当局の動向などをまとめた「JAMPコンプラ・メルマガ」を発信しています。
今回は、先般5月にお伝えしている令和3年4月28日付で、「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に係る態勢整備の期限を2024年3月に設定」されたことが金融庁のホームページに公表されたことについての、シリーズ7(シリーズ最終章)となる「管理態勢とその有効性の検証・見直しにおいての職員の確保、育成等」と「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に係る態勢整備の期限設定」についてのシリーズのまとめ」についてお話です。

■「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン」(以下、「ガイドライン」)の改正までの振り返り
ガイドラインの策定・公表から3年が経過し、金融機関等において態勢整備への意識が浸透してきたことから、より実効的な態勢整備を行うよう、今般、ガイドラインで対応を求めている事項に対する完了期限(2024年3月)を設け、態勢を整備することが、各業態団体を通じて要請されました。

・2018年2月 ガイドラインの公表
・2019年4月に一部改正。
・2020年12月11日から2021年1月22日にかけて公表し、広く意見の募集が行われ137件の寄せられたコメントを踏まえ、ガイドラインの趣旨をより明確化するために改正が行われました。

今回の改正では、今まで「対応が期待される事項」であった事項が多数「対応が求められる事項」に格上げされ、2019年4月改正時よりも大幅な改正となっています。

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職員の確保、育成等について
マネロン・テロ資金供与リスク管理態勢の実効性は、各営業店を含む様々な部門の職員がその役割に応じた専門性・適合性等を有し、経営陣が定めた方針・手続・計画等を的確に実行することで確保されるものである。金融機関等においては、こうした専門性・適合性等を有する職員を必要な役割に応じ確保・育成しながら、適切かつ継続的な研修等(関係する資格取得を含 む。)を行うことにより、組織全体として、マネロン・テロ資金供与対策に係る理解を深め、専門性・適合性等を維持・向上させていくことが求められると記されています。

職員の確保、育成等に際し、具体的に対応が求められる事項として、以下のように記載されています。

①マネロン・テロ資金供与対策に関わる職員について、その役割に応じて、必要とされる知識、専門性のほか、研修等を経た上で取引時確認等の措置を的確に行うことができる適合性等について、継続的に確認すること
②取引時確認等を含む顧客管理の具体的方法について、職員が、その役割に応じて的確に理解することができるよう、分かりやすい資料等を用いて周知徹底を図るほか、適切かつ継続的な研修等を行うこと ③当該研修等の内容が、自らの直面するリスクに適合し、必要に応じ最新の法規制、内外の当局等の情報を踏まえたものであり、また、職員等への徹底の観点から改善の余地がないか分析・検討すること ④研修等の効果について、研修等内容の遵守状況の検証や職員等に対するフォローアップ等の方法により確認し、新たに生じるリスク等も加味しながら、必要に応じて研修等の受講者・回数・受講状況・内容等を見直すこと
⑤全社的な疑わしい取引の届出状況や、管理部門に寄せられる質問内容・気づき等を営業部門に還元するほか、営業部門内においてもこうした情報を各職員に的確に周知するなど、営業部門におけるリスク認識を深めること

「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に係る態勢整備の期限設定」についてのシリーズのまとめ
「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に係る態勢整備」の期限である2024年3月まで、残すところ1年余りとなりました。
先般5月より「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に係る態勢整備の期限設定」について、態勢整備を行うための一助となりますように、下記シリーズにてトピックを掲載させていただきました。

●シリーズ1 「対応が期待される事項」から「対応が求められる事項」・経営陣の関与
●シリーズ2 「リスクベース・アプローチとリスクの特定」
●シリーズ3 「リスクの評価」
●シリーズ4 「リスクの低減およびリスクの低減においての「顧客管理」(カスタマー・デュー・ディリジェンス:CDD)」
●シリーズ5 「リスクの低減においての取引モニタリング・フィルタリングとITシステムの活用」
●シリーズ6 「管理態勢とその有効性の検証・見直しにおいてのマネロン・テロ資金供与対策に係る方針・手続・計画等の策定・実施・検証・見直し(PDCA)」
●シリーズ7 「職員の確保、育成等」

今回の改正では、「対応が期待される事項」であった事項が多数「対応が求められる事項」として明確化されるとともに、今後の当局としてのモニタリングのあり方等が示されました。

今回の改正では、2019年4月に行われた改正時よりも大幅な改正となっており、2024年3月までの期限が設けられていることから、金融機関の方々におかれては、今まさに待ったなしの状態と思料いたします。
金融機関等は「犯罪による収益の移転防止に関する法律」(以下、「犯収法」)上の「特定事業者」として、その適用範囲に応じ遵守する必要がある事項を改めて認識し、今回のガイドラインの改正により示された「具体的に対応が求められる事項」についてはミニマム・スタンダードとして、期限である2024年3月までに態勢整備を行わなければなりません。

時々変化する国際情勢や、これに呼応して進化する他の金融機関等の対応に強く影響を受けるマネロン・テロ資金供与対策において、こうした動向やリスクの変化等に機動的に対応し、マネロン・テロ資金供与リスク管理態勢を有効性のある形で維持していくことが求められています。

今回改正の「対応が期待される事項」であった事項が多数「対応が求められる事項」について必要な態勢整備を講じることは、金融機関等の皆様にとって果たすべく最重要事項であることは間違いございません。
ガイドラインの基礎となる「犯収法」の目的(※一部抜粋)をここにお示しし、金融機関等は重大な責務を担っていることをお伝えし、先般5月よりお伝えしてまいりました「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に係る態勢整備の期限設定について」のシリーズを終えることといたします。
約半年に渡るシリーズでございましたが、シリーズ最後まで読んで頂きましてありがとうございます。

※「犯罪による収益の移転防止に関する法律」第1条(目的)一部抜粋
「犯罪による収益の移転防止を図り、併せてテロリズムに対する資金供与の防止に関する国際条約等の的確な実施を確保し、もって国民生活の安全と平穏を確保するとともに、経済活動の健全な発展に寄与することを目的とする。」
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■「対応が求められる事項」への対応が不十分と認められた場合には、
「ガイドライン」の要請事項に係る各金融機関の取組状況について、検査やモニタリングを通じて確認していくほか、管理態勢に問題があると認められる場合には、報告徴求・業務改善命令などの法令に基づく行政対応を含む対応を実施する旨が記載されています。

このメルマガをお読みになられていらっしゃる金融機関の方々におかれましては、本稿が貴社の取締役会や経営会議などの場における「対応が求められる事項」に必要な態勢整備を行うための協議のご参考にしていただけるようでしたら幸いです。

当社は、国際金融都市を目指している東京都に協力して、金融商品取引業に関する登録申請手続き及び金融商品取引業者等の内部管理体制強化等に関する国内外の方々のご相談に対応させていただいております。ご心配な点等ございましたら、是非当社までお問合せ下さい。

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