第29回 「変更届出の遅延について」

株式会社日本資産運用基盤グループのJAMPビジネス・イノベーションは、金融商品取引業者様及びその登録を目指しておられる方々向けに、当局の動向などをまとめた「JAMPコンプラ・メルマガ」を発信しています。


今回は、一般社団法人日本投資顧問業協会(以下、「日本投資顧問業協会)という。)から2023年1月12日に会員向けに通知された「協会宛届出のあった法令違反行為等の事例集について」(2022年4月1日~2022年9月30日)の「業務の内容及び方法に係る変更届出の遅延(法第31条第3項)」の事案についてです。


「協会宛届出のあった法令違反行為等の事例集について」は、自主規制基準及び法令違反行為等に係る会員の資料提出及び届出等に関する規則」第3条に基づき、協会宛届出のあった事例が取りまとめられており、コンプライアンス態勢の強化等に活用することを目的とし会員向けに日本投資顧問業協会より年2回通知されております。


本件に関連する事項として、2021年6月に第8回 当局届出事項の落とし穴4(「役員又は政令で定める重要使用人変更届」の当局への提出に関してお伝えしております。

変更届出の遅延は、毎年同じ様な事案の法令違反行為が届出されており、都度、発生の経緯、原因等および再発防止策等も同様に通知されております。

毎年同様の発生の経緯、原因によって引き起こされている本事案について、再発防止策等も毎年通知されているのにもかかわらず、残念なことに毎年繰り返し同様の「変更届出の遅延」が発生しています。

 

発生の経緯は組織として起こるべく事案であり、また、再発防止策についての多くは、変更時の提出漏れを防止するために業務マニュアルに注意事項を赤字で明記する、社内において法令等の理解・周知を図る等と通知されています。

それら発生防止策は、自らの業務において同様の問題発生を未然に防ぐために十分であるかについて検証は行われているのでしょうか。

毎年通知される「変更届出の遅延」について、毎年同様の内容だと軽微なこととして見過ごすことなく、各自が改めて認識し、十分な防止策が講じられているのか見直しをする機会として捉え検証する必要はないでしょうか。

本事案がゼロとなることは、本事案を軽視することなく、各自の問題意識を高め効果的で十分な防止策を図り実施して行くことにより実現できるものであり目指すべくものではないでしょうか。


■発生の経緯、原因等

業務の内容及び方法に関する書類(以下「業務方法書」という。)と一体で提出している規程(以下「一体書類」 という。)に関し、変更届出が遅延した。これは、当社の組織変更に伴い一体書類の一部である 「広告及び勧誘資料審査手続」を改正していたが、「業務方法書」の記載内容に変更がない場合は一体書類に改正があっても変更届出は不要と認識していたもので、関東財務局から当該一体書類の改正について確認依頼を受けたことから変更届出の未提出が判明した。


■再発防止策等

業務マニュアルに一体書類単独の改正であっても 都度届出が必要な旨を明記し、担当者全員で共有することとした。


―関連法令―

■金融商品取引法第31条(変更登録等)第3項

金融商品取引業者は、第29条の2第2項第2号に掲げる書類に記載した業務の内容又は方法のうち、同条第1項第8号又は第9号に規定する行為に係るものであつて公益又は投資者保護のため特に必要なものとして内閣府令で定めるもの(以下この項及び第33条の6第3項において「特定業務内容等」という。)について変更をしようとするときはあらかじめ、特定業務内容等以外のものについて変更があつたときは遅滞なく、内閣府令で定めるところにより、その旨を内閣総理大臣に届け出なければならない。

 

―日本投資顧問業協会の組織・運営等に関する規則等―

■自主規制基準及び法令違反行為等に係る会員の資料提出及び届出等に関する規則

第3条(法令違反行為等に係る届出)

会員は、定款第 10条の規定に基づき、前条の検査において法第 51 条又は第 52 条 に基づく監督官庁の処分を受けたときは、様式3に「命令書」の写しを添付して、遅滞なく協会に届け出なければならない。会員は、定款第10条の規定に基づき、法若しくはその他の法令又は協会の定款若しくは自主規制規則(総会及び理事会決議を含む。以下「法令等」という。)に違反する事実を認識したとき、又は前条の検査において法令等に違反する行為があるとして監督官庁から指摘を受けたときは、様式4により遅滞なく協会に届け出なければならない。


 

この数年間で通知されている主な「変更届出の遅延」の発生の経緯、原因等と再発防止策等は以下の通りです。

(ケース1)

・事案の概要・該当法令等

取締役の兼職届出書の提出遅延(法第31条の4第1項)

・発生の経緯、原因等

海外在住の非常勤取締役が海外関係会社を退任したが、これに関する兼職届出書の提出が遅延した。

・再発防止策等

取締役に変更があった場合には親会社の担当部署に対して適時に報告を行うよう関係会社各社に対する周知徹底を当社から親会社に要請することとした。

(ケース2)

・事案の概要・該当法令等

取締役の兼職届出書の提出遅延(法第31条の4第1項)

・発生の経緯、原因等

海外在住の取締役2名の兼職先における役職名に変更があったが、これに関する届出が遅延した

・再発防止策等

コンプライアンス部門において取締役の兼職等の届出要件・手続きについて再確認することとした。

役職名変更時の提出漏れを防止するため業務マニュアルに注意事項を赤字で明記することとした。

(ケース3)

・事案の概要・該当法令等

政令で定める使用人に係る届出の不備(法第31条第1 項、施行令第15条の4第2号、府令第6条第2項)

・発生の経緯、原因等

政令で定める使用人の登録において投資判断者として登録すべき者が9名漏れていた。

・再発防止策等

各部門の業務に即した法令等に関するミーティングを行うことにより法令等の理解・周知を図ることとした。

変更時の提出漏れを防止するため業務マニュアルに注意事項を赤字で明記することとした。

 

 

当社は、国際金融都市を目指している東京都に協力して、金融商品取引業に関する登録申請手続き及び金融商品取引業者等の内部管理体制強化等に関する国内外の方々のご相談に対応させていただいております。ご心配な点等ございましたら、是非当社までお問合せ下さい。

以上

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