第24回「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に係る態勢整備の期限設定について」―シリーズ5

株式会社日本資産運用基盤グループのJAMPビジネス・イノベーションは、金融商品取引業者様及びその登録を目指しておられる方々向けに、当局の動向などをまとめた「JAMPコンプラ・メルマガ」を発信しています。
今回は、先般5月にお伝えしている令和3年4月28日付で、「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に係る態勢整備の期限を2024年3月に設定」されたことが金融庁のホームページに公表されたことについての、シリーズ5となる「リスクの低減においての取引モニタリング・フィルタリングとITシステムの活用」についてのお話です。

■「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン」(以下、「ガイドライン」)の改正までの振り返り
ガイドラインの策定・公表から3年が経過し、金融機関等において態勢整備への意識が浸透してきたことから、より実効的な態勢整備を行うよう、今般、ガイドラインで対応を求めている事項に対する完了期限(2024年3月)を設け、態勢を整備することが、各業態団体を通じて要請されました。

・2018年2月 ガイドラインの公表
・2019年4月に一部改正。
・2020年12月11日から2021年1月22日にかけて公表し、広く意見の募集が行われ137件の寄せられたコメントを踏まえ、ガイドラインの趣旨をより明確化するために改正が行われました。

今回の改正では、今まで「対応が期待される事項」であった事項が多数「対応が求められる事項」に格上げされ、2019年4月改正時よりも大幅な改正となっています。

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取引モニタリング・フィルタリングについて
リスク低減措置の実効性を確保する手段としては、個々の顧客に着目する顧客管理のほかにも、取引そのものに着目し、金融機関等における取引状況の分析、異常取引や制裁対象取引の検知等を通じてリスクを低減させる手法があり、金融機関等においては、これらを組み合わせて実施し、リスク低減措置の実効性を高めていくことが有効であると記されています。

取引モニタリング・フィルタリングに際し、具体的に対応が求められる事項として、以下のように記載されています

① 疑わしい取引の届出につながる取引等について、リスクに応じて検知するため、以下を含む、取引モニタリングに関する適切な体制を構築し、整備すること
イ. 自らのリスク評価を反映したシナリオ・敷居値等の抽出基準を設定すること
ロ. 上記イの基準に基づく検知結果や疑わしい取引の届出状況等を踏まえ、届出をした取引の特徴(業種・地域等)や現行の抽出基準(シナリオ・敷居値等)の有効性を分析し、シナリオ・敷居値等の抽出基準について改善を図ること
② 制裁対象取引について、リスクに応じて検知するため、以下を含む、取引フィルタリングに関する適切な体制を構築し、整備すること
イ. 取引の内容(送金先、取引関係者(その実質的支配者を含む)、輸出入品目等)について照合対象となる制裁リストが最新のものとなっているか、及び制裁対象の検知基準がリスクに応じた適切な設定となっているかを検証するなど、的確な運用を図ること
ロ. 国際連合安全保障理事会決議等で経済制裁対象者等が指定された際には、遅滞なく照合するなど、国内外の制裁に係る法規制等の遵守その他リスクに応じた必要な措置を講ずること

ITシステムの活用について
IT システム(ソフトウェアを含む。)の活用は、自らが顧客と行う取引について、商品・サービス、取引形態、国・地域、顧客属性等の様々な情報の集約管理を行うことを可能とする。また、ITシステムの的確な運用により、大量の取引の中から、異常な取引を自動的かつ迅速に検知することや、その前提となるシナリオや敷居値をリスクに応じて柔軟に設定、変更等することが可能となるなど、リスク管理の改善が図られる可能性がある。ITシステムを的確にマネロン・テロ資金供与対策に活用するには、例えば、前記シナリオ・敷居値等が自ら直面するリスクに見合ったものとなっているか、送金先や輸出入品目等についての制裁リストが最新かなどのシステムの運用面も含めて ITシステムを適切に構築し、また、 その有効性について検証を行っていき、適時に更新していくことが重要であると記されています。

ITシステムの活用に際し、具体的に対応が求められる事項として、以下のように記載されています。
①自らの業務規模・特性等に応じた ITシステムの早期導入の必要性を検討し、システム対応については、後記②から⑤の事項を実施すること
② 経営陣は、マネロン・テロ資金供与のリスク管理に係る業務負担を分析し、より効率的効果的かつ迅速に行うために、ITシステムの活用の可能性を検討すること
③マネロン・テロ資金供与対策に係るITシステムの導入に当たっては、ITシステムの設計・運用等が、マネロン・テロ資金供与リスクの動向に的確に対応し、自らが行うリスク管理に見合ったものとなっているか検証するとともに、導入後も定期的に検証し、検証結果を踏まえて必要に応じ改善を図ること
④ 内部・外部監査等の独立した検証プロセスを通じ、ITシステムの有効性を検証すること
⑤ 外部委託する場合や共同システムを利用する場合であっても、自らの取引の特徴やそれに伴うリスク等について分析を行い、必要に応じ、独自の追加的対応の検討等を行うこと

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■「対応が求められる事項」への対応が不十分と認められた場合には、
「ガイドライン」の要請事項に係る各金融機関の取組状況について、検査やモニタリングを通じて確認していくほか、管理態勢に問題があると認められる場合には、報告徴求・業務改善命令などの法令に基づく行政対応を含む対応を実施する旨が記載されています。

このメルマガをお読みになられていらっしゃる金融機関の方々におかれましては、本稿が貴社の取締役会や経営会議などの場における協議のご参考にしていただけるようでしたら幸いです。
引き続き、皆様方の「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に係る態勢整備」に向けた一助となりますように、シリーズでこのトピックを掲載させていただく予定です。

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