うるう年の仕組みを完璧に分からせる
イトーダーキさんからまたまた発注を受けてしまった。そして安易にそれを受けてしまった。
うるう年とはなぜ必要なのか。どんな仕組みなのか。
説明してほしいというのだ。
イトーさん自身は次のとおり説明している。
え、これで十分じゃないすか?
もう完璧に理解してるじゃないですか。
しかしイトーさんはこう言う。
まあ、そういうことってあるよね。
何となく雰囲気で理解したのだけれど、もっと手にとるように理解したい。幸田文がエッセイの中で
という一風変わった表現を使っていたけれど、そういうこと。
では、「全て理解したぜ」と言ってもらえるくらいに、しっかり説明してみよう。
1 地軸って何?
まず、北極点と南極点を結ぶ「地軸」というのがある。
地球はこの地軸を中心として自転している。
自転しているから、太陽に当たる時間帯と当たらない時間帯があって、それゆえに昼と夜の区別があるのだ。
ちなみに自転は、北極点の上から見て「反時計回り」である。
2 地球は傾いて公転している!
そして、地球は地軸を23.4度傾けた上で、太陽の周りを1年かけて回っている。
この「傾いている」というのが分からない人もいるかもしれない。
「宇宙空間なのだから、傾きも直立もクソもないだろう」と思われるかもしれない。
傾いているとはこういうことだ。
地球は円を描きながら太陽の周りを回っている。その円を「公転面」と呼ぶ。
その公転面に対して、地軸が23.4度傾いているのだ。
3 傾いているから季節がある!
さて、想像していただきたい。あなたは北半球(北極圏くらい)に住んでいる。
地球がA地点にいるとき、あなたはどう感じるだろう。
暑くない???
そう、地球がA地点にいるとき、北半球の人間にとっては太陽に当たる時間がやたらと長いのだ。北極点近辺だと、24時間ずっと太陽光に当たり続けることになってしまう。夜が来ない。
つまりA地点は昼が最も長い日。夏至(6月21日)に当たる。
逆にB地点は昼が最も短い。冬至(12月21日)に当たる。
C地点とD地点はそれぞれ、春分と秋分に当たる。
つまり、地球の位置によって季節が決まるのである。
4 一年経つごとに地球の位置はズレる
では、いよいよ本題に入ろう。
地球は太陽の周りを、ぴったり1年で回っているわけではない。正確には365.2422日かけて回っているのだ。
ここからは、6月21日(夏至)という日付に着目して説明していこう。
どの日を選んでもよいのだが、A地点が最も説明しやすそうだからだ。
さて、ある年の6月21日に地球がA地点にいたとして、翌年の6月21日には地球はどこにやって来るだろう。
A地点ぴったりではない。
正確には、A地点にギリギリ届かないくらいの、若干手前に位置するはずだ。
そう、「A地点の0.2422日分手前」に来るはずなのだ。
じゃあ翌々年の6月21日はどうなる?
1年で0.2422日ズレるのだから、それを2倍すればいい。
そう、「A地点の0.4844日分手前」の位置だろう。
さらに3年後の6月21日は、「A地点の0.7266日分手前」の位置だろう。
ということは。
年を経過するごとにそのズレはどんどん広がる。
376年後の6月21日には、地球はこーんな離れた場所に来てしまう。
そう、春分の位置に来てしまうのである。
もはや春じゃん。
6月21日なのに、桜が満開になってしまう。
さらに753年後の6月21日はどうなるか。
もはや地球は正反対の位置に来る。
冬じゃん。6月21日なのに、雪が降ってしまう。
こういうことを防ぐために導入されたのが、うるう年である。
5 四年に一度、ズレを補正してみよう!
4年間で地球の位置は、0.9688日分ずれる。
そこで4年に1回、例外的に「1日多い年」を導入することによって、地球の位置はほぼ元通りになる。
これは便利だ。よし、4で割り切れる年は「うるう年」と呼ぶことにして、2月29日を設けることにしようではないか。
こうして生まれたのが「うるう年」である。
6 百年に一度、ズレを再補正してみよう!
さて、この話には続きがある。
先程「ほぼ元通り」と言ったが、うるう年を設けても、地球の位置は正確にいうと元の位置から多少進んでしまう。
0.9688日分の遅れを取り戻すために1日進めるわけだが、それは進めすぎである。
1-0.9688=0.0312
となり、そう、細かい話ではあるが、0.0312日分だけ進めすぎなのである。
細かい数字であっても、積もれば山となる。
4年で0.0312日分進むということは・・・。
おやおや、100年経つと0.78日分も進んでしまうではないか。これは看過できない大きさである。
そこで今度は「例外の例外」を設けることでこれに対処しようということになる。
100年に1回、本来ならば導入されるべき「2月29日」を導入せずにおこうというわけだ。
「例外の例外」を考慮した新しいルールはこうだ。
これで万事解決だ。
と思いきや・・・。これでは終わらない。
7 四百年に一度、ズレを再々補正してみよう!
+0.78日のズレを補正するために、1日減らしたわけだから、これは減らし過ぎである。
1-0.78=0.22
となり・・・。
ダメだ。100年でー0.22日分のズレが生じてしまうではないか。
ということは、400年でー0.88日のズレが生じてしまう。これは看過できない。
これを解決するには、「例外の例外の例外」を作るしかない。
四百年に一回は、例外の例外の例外で2月29日を設けることにしようではないか。
「例外の例外の例外」を考慮した新たなルールは次のとおりだ。
これが現在のうるう年のルールである。皆さんは西暦2000年がうるう年だったかどうか、記憶にないかもしれないが、うるう年だったのだ。
なぜなら2000は400で割り切れるから。
ちなみに、このルールでもなお、多少のズレは生じる。
400年で0.12日分のズレが生じるということは、3200年で0.96日分のズレが生じることになる。おお、これは看過できないぞ。
というルールを作らなければならないが、まあ現時点でそこまで考慮しなくてもよいだろう、ということで、これはルール化されていない。
さて、ここからは「うるう年」の語源とか、法律上の規定などを紹介しようと思っていたのだが、さすがに力尽きたのでここまでとしたい。
皆さん、貪欲に承知いただけたであろうか。
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