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古ノルド(アイスランド)語 学習メモ① lendr maðr の和訳について

ヴァイキング時代の北欧人が話していた古ノルド語(古アイスランド語)を学習していて、ふと気になったことや腑に落ちたことなどをメモ代わりに綴っていきます。
主に自分用ですが、間違いなどありましたらご教示いただけると幸いです。

最初に、古ノルド語と古アイスランド語の違いについて。
9世紀後半、ハラルド美髪王の時代にノルウェーからアイスランドに移住した人々が新天地にノルド語を持ち込んだので、ヴァイキング時代に話されていた古ノルド語と古アイスランド語はほぼ同じと考えてよいと思います。

ゆえに古ノルド語の研究は、一般的には古アイスランド語を通じて行われているのだそうです。


ここから本題に入ります。
今回は、レンドル・マズル(lendr maðr)の和訳についてのメモです。

「エギルのサガ」や他のサガに出てくる レンドル・マズル lendr maðr (古アイスランド語。ノルウェー語⇒ lendmann、英語⇒ landed man)は、jarl(ヤール、侯)よりは下位で、世襲の土地を持ってる自由民よりは上位になる中世ノルウェーの貴族の称号です。

谷口幸男訳「エギルのサガ」では「家臣」と訳されているのですが、単なる「家臣」では説明が足りないように思うので、もっと良い日本語はないかと探してみました。
そしてみつけたのが、こちらです。
早野勝巳訳「ヴァープナフィヨルドのサガ」。
lendr maðr を「拝領地主」(国王から領地あるいは収入を与えられた者)と訳されていて、一般の自由民との違いをイメージしやすく思いました。

早野勝巳訳「ヴァープナフィヨルドのサガ」より
『アイスランドのサガ 中篇集』(東海大学出版会、2001年)所収


ちなみに一般的な自由民(農民)のことはボーンディと呼びます。
家を意味するフースにボーンディを付けて家の主人のことを「フースボーンディ」といいますが、英語のハズバンド(夫)の語源になったという説があるようです。

◆参考資料◆
Jesse Byock, Randall Gordon : Old Norse - Old Icelandic Concise Introduction to the Language of the Sagas, Jules William Press, 2020.
谷口幸男訳『アイスランド サガ』新潮社、1979年。
菅原邦城・早野勝巳・清水育男訳『アイスランドのサガ 中篇集』東海大学出版会、2001年。

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