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娯楽と芸術の結晶クリストファー・ノーラン

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考察するのも楽しい映画作家ですよね。
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#ネタバレ

【TENET】あの少年がニールだと断定できる理由【テネット】

#ネタバレ 映画の核心部分に関わる話題なので、本編を未見の方にはブラウザバックを推奨します。 映画に出てくる《ある少年》がニールである、という証拠を集めた。 その《ある少年》とは、もちろんキャットとセイターの息子マックスである。 ▼名前キャットの息子の名前はマックスだが、これはマキシミリアン(Maximilien)を略したもの。そしてマキシミリアンを逆から読むとニール(Neil)から始まる。 ▼日付逆行しながらスタルスク12の最終作戦の立案中の会話で、ニールはキャッ

【TENET】あらすじを三幕構成で読み解く

#ネタバレ 一幕1)キエフ(ウクライナ):主人公はCIAの任務として、キエフのオペラハウス爆破テロに潜入して、先に潜入捜査中だったCIAメンバーとプルトニウム241を回収する。ウクライナ警察が爆弾を設置するのを見かけた主人公はアドリブで計画を変更してターゲットを別行動させて逃すが、悪い予感が的中して運転手のウクライナ人に拷問される。主人公はCIAに配給されていた自殺ピルを飲む。 2)場所不明:実はキエフの任務は極秘試験も兼ねており、ピルは偽物で、主人公はTENETにスカウ

一番シンプルなテネットの解説【TENET】

#ネタバレ わかったようでわからないような難解な映画、テネット。世の中にある解説は細かいことから説明してるものがほとんどなので、このnoteでは《一番コアの部分から説明してスッキリ理解できる文章》を目標とします。 ▼何をしていたの?結論から書きましょう。 わるい未来人が現代のセイターに命令して、アルゴリズムを未来にデッドドロップしようとしたので、それを主人公がこっそり失敗させる話。 …です。 これを3行で分解して図解すると、以下のようになります。 主人公の目的=セ

【オッペンハイマー】日本語字幕批評:ラストのセリフ

#ネタバレ オッペンハイマーの最後のセリフに関して、石田泰子氏の日本語字幕を批評します。 ネタバレになるので映画を観てない人は読まないでください。 ▼文脈からのアプローチ:セリフ原文:I believe we did. 直訳:私達はそれをした、と私は信じています。 字幕:我々は破壊した。 まず字幕では「I believe」の部分をゴッソリ削除していますが、これは「私は〜だと信じている」という、言っても言わなくても意味が変わらない部分(脚注*1)なので、削除してOKだ

【オッペンハイマー】もう観た人のためのあらすじ解説【復習用】

#ネタバレ 映画の内容をほぼ書き起こしているので、復習にどうぞ。 ▼はじめに:本作の映画としての特徴として、主人公だけではなくて、その対極となる人物としてストローズの視点も加えていることが挙げられます。 この映画はカラーとモノクロの《二部構成》です。 カラーがオッペンハイマー(演キリアン・マーフィー)の裁判です。 モノクロがストローズ(演ロバート・ダウニー・Jr)の裁判です。 ある些細な行き違いを発端に関係が崩壊する二人の男を、カラーとモノクロを使い分けることで、

【オッペンハイマー】徹底解説:アインシュタインとの会話

#ネタバレ 映画の核心部分ですが、あまり語られてないので、解説してみます。 映画の中でアインシュタインが出てくるシーンは4箇所ありますが、この記事ではあくまで時系列に沿って3つに分けて記載します。 ▼1943年:核の連鎖反応についてニューメキシコ州のロスアラモスのオフィスが準備できるまでカリフォルニア州バークレーのオッペンハイマーの研究室で、マンハッタン計画は進んでいました。そこでテラーが核連鎖反応理論を提唱します。すぐに数学者たちで理論が正しいのか計算に取り組みますが

【オッペンハイマー】ネタバレ感想【あらすじ】

このnoteはクリストファーノーラン監督作品『オッペンハイマー』のネタバレありの感想になります。 本作は一応「伝記作品」という体裁を取っていますが、そこはノーラン監督なので時系列を複雑にすることに始まり、いくつか映画ならではの創意工夫を加えていてそれが面白い作品です。 なので、映画を観る前にこの感想を読むことはお勧めしません。 以降はネタバレありで語ります。 #ネタバレ ▼概論:素晴らしい映画でした。「今世紀最高の映画の一つ」という宣伝文句は妥当です。少なくとも「2

【TENET】オペラハウス襲撃シーンを読み解く【テネット】

この映画で、もしかしたら最も難解なパートだと思うのですが、日本語(と英語)では満足できる記事が見つからなかったので自分で書くことにしました。かなり詳しく書いたつもりなので、ぜひ吟味してくださいませ。 ▼登場人物:▼場所:ウクライナのキエフにある国立オペラハウス (ただし実際の撮影場所はエストニアのタリンにあるリーナホール) ▼映画の流れ整理:まず全体の見通しをよくしておきましょう。 太字にした部分は重要かつ映画ではっきり説明されない不可解な行動です。以下ではこのポイント

【バットマン死亡説】99%の人が気づかないダークナイトライジングがバッドエンドである理由【オッペンハイマー】

ノーランの新作が『オッペンハイマー』であることを考慮すれば、『ダークナイトライジング』はただのハッピーエンドではないことが見えてきます。 *本稿はかなりシリアスな解釈をしていますので閲覧にはご注意ください。 #ネタバレ ▼あらすじ(99%の一般論):ベインがゴッサムシティで中性子爆弾を起動します。バットマンはゴードンやキャットウーマンと協力してベインとタリアを倒し、中性子爆弾を入手しますがもう爆発は止められません。起爆装置を単体で解除できるパヴェル博士をベインが殺害して

テネットでずっと誤解していた件(アルゴリズムはなぜ起動しなかったのか)【TENET】

結論から言うと、私は主人公(名もなき男)の誤解に引っ張られていました。 なぜ、私はそれを「間違った情報」だと見抜けなかったのか。 字幕だけでなく原語セリフも読み込んで、解析していきます。 この記事は映画TENETテネットの結末をネタバレしています。 閲覧にはご注意ください。 ▼なぜ起動しなかったのか:映画TENETを観ていて気になっていることがありました。 物語のクライマックスで 主人公チームがアルゴリズムを回収する前に キャットがセイターを殺してしまったことです。