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VR酔いから解放されたら現実とVRが同じ世界になった話

Oculus Quest2を買ってから1ヶ月が経った。とりあえずDMMプレイヤーで動画を見て「画質はPSVRより良いけどまあこんなもんか~」と思ったり、BeatSaberが楽しすぎて筋肉痛になったりと、様々なことがあった。

その中でも特に私が熱中したのはVRChatだ。VRChatを遊ぶことで得られる体験は、はっきり言ってDMMやBeatSaberのそれとは比べることが出来ない。動画やゲームといった枠に収まるコンテンツではない。VRChatにあったのは言葉の通り“新しい世界”だった。

VRCの世界を一通り案内されて1番感動したワールドはVket3 Entranceだ。あの体験は他では無いものだと思われる。現実から仮想へ繋がる世界、空中を舞ってナビゲートするキャラクター、有名声優によるアナウンス音声などなどは子供の頃に夢に描いていた“アニメの中にしかなかった未来の世界”で、VRCはそのあるかもしれない未来の世界をちょっとだけ先取りできるコンテンツだった。

そんな素晴らしい世界の中で唯一頭を悩ませたのは“酔い”だった。もともと私自身が酔いやすい体質で、子供の頃に車の中で漫画を読もうとして吐いた経験が何度もある。FPSも苦手な部類で、今まで頑張ってプレイしたFPS視点のゲームはPortalくらいだ。

この記事ではVRコンテンツを体験して得られた酔いへの知見と対策、そして酔いを克服した先に見える世界について書こうと思う。

1.なぜ1人称視点のゲームで酔うのか

まずは酔いの原因について考えたい。考えたいというか、これはもう私の経験則として話すしか無いのだが、結論から言うと「プレイヤーが予測する視点移動」「ゲームでの視点移動」に乖離がある時に人は酔うと思われる。これは他人のFPSゲームを観戦している方が酔いやすいという通説にも同様に言えることで、基本的に人は「こっちに移動しよう」という意思を持ってから視点を動かしていると考えられる。

この意思に反して視点や景色が動いてしまう時に酔いが発生する。FPSゲームは高DPIのマウスで目まぐるしくカーソルを動かすが、あれもゲームに熟達した人であれば「こっちに動かす」という事前準備が出来た上で動かしているのだろう。ゲームを始めたばかりの初心者が真似をしようとすると激しい酔いに悩まされることになる。

私がPortalを最後までプレイ出来たのは結局のところ“慣れ”であると考えられる。ゲームでの移動スピードへの慣れ、ポータルをくぐった時の挙動に対する慣れなど、純粋にゲームに適応しただけだ。高所から落下して遠くへ移動するギミックも「これからこういうことをするぞ」と自分で意識できれば酔いにくくなったように感じた。

逆に私が酔いによって断念したゲームとしてApexが挙げられる。序盤から激しい視点移動を要求されるゲームで、慣れる慣れないの前に勝敗が付いてしまっため、酔うしゲームは上達しないし中途半端という状況になってしまってモチベーションを保てなかった。恐らくこういったゲームも本腰を入れてプレイしたり、似たような挙動の1人用FPSをプレイすることで慣れるものだと思う。

2.VRでの酔いとは

これらの酔いに対する考え方はVRについても同じだが、基本的にVRのゲームでは頭の動きと同じようにゲーム内の視点も動く。これはVR特有の没入感を実現しているギミックだが、マウス操作で視点を動かすのと違って現実の視点移動に近い挙動のため、自分の意思とゲームの動きが合致しやすい。

合致しやすいとは言ったが、やはり現実とゲームでは挙動が微妙に異なるものだ。この微妙な挙動の違いに気づけず「現実とVRでは同じように視点が動く」と勘違いし続けてしまうと、VR酔いの沼にハマってしまうのではないかと考える。私が実際に行ったVR酔いを克服するためのポイントを下記にまとめる。

○酔い止めを飲む
車酔い用のもので構わない。正直なところ本当に効くのかは分からないが、効くと思ってプレイする前に飲んでみよう。たとえプラシーボだとしてもそれで良いのだ。VR酔いを体験しての感想は「ラーメン二郎と同じ」ということだ。お腹いっぱいでもう食べられないかも、と思ってしまった瞬間から食べられなくなるものだ。美味しいという感情のまま最後まで食べきらなくてはならない。VRも「酔いそうだな」と思った瞬間から酔ってしまう。楽しい体験で酔いを忘れるくらいの気持ちが重要であるため、それをサポートする意味では精神的にも酔い止めは有効だった。

○向きを切り替える時は向く方向に意識を寄せる
VRChatでの進行方向切り替えは大体の人が一定方向を瞬間的に動かすCOMFORT TURNINGという設定を使用している。これを使うと45度刻みで一瞬で向きを切り替えられる。初めのうちはこちらの方が酔うと思うかもしれないが、向き切り替えの時に目への意識を薄くする、極端に言えば一瞬目を閉じるとこちらの方が酔いにくかった。コツとしては好き勝手に方向を変えるのではなく、「これから視点を変えるから目の意識を一瞬外すぞ」という準備が出来てから切り替えることだ。目の意識を外さなくても変える方向に視点を寄せるだけでも良い。慣れてくると無意識で出来るようになる。

3.目前にある画面の中の遠い景色を見る

これは酔いとは直接関係は無いのだが、VRでは眼精疲労にも悩まされることになる。今では長時間VRで遊べる私でもQuest2を買ってすぐの頃は1時間もプレイすると目の疲れでゴーグルを外したくなった。目が疲れれば酔いやすくなるし、酔いとの合わせ技によって寝込んでしまう場合もある。

この目の疲労には“目が光を浴びすぎることによる疲労”“至近距離で画面を見続けることによる疲労”の2つがあると考えている。前者は画面の輝度を落とすことによって、後者は慣れによって克服することが出来る。

目の前の画面を意識しないということは、3D立体視が描く世界で遠くを見るということだ。初めのうちは画面を意識してしまうので、目に余計な力が入ってしまうために疲れやすいのだと思われる。画面への意識を薄めることが重要だ。VR機器のことを画面を見るためのモノではなく、装着すると景色が変わるメガネだと思えば良い。レンズ越しに周囲の景色を見るようにVR機器を見ることが出来れば、眼精疲労は大幅に改善される。

光による疲労は最低限あるものだが、私の場合はここ1ヶ月で何時間プレイしても全く問題ないレベルにまで慣れることが出来た。

そしてVR機器から得られる体験が”景色”の枠を飛び越えた時、現実とバーチャルが同じ世界になる









4.急にどうした

突然ワケの分からないことを言い出して驚かれたと思うが、私がこの記事で話したかった本題はこれだ。酔い対策などおまけでしかない。
皆さんに酔いを克服してもらい、この感覚を獲得してもらって、私が怪文書をのたまう電波野郎ではないことを証明して頂きたい。

この感覚は同じようにVR沼にハマった人にヒアリングして同意を得られたので、私だけがおかしいわけではないはずだ。よく「VRから帰ってこれない」とか「VRの方がリアルになってる」などと揶揄されることがあるが、そういった生活の主軸が変わるという意味ではなく、慣れによってVRでの体の動かし方と現実での体の動かし方が同じようになっていくということだ。

VRにハマって2週間くらい経った頃、現実世界で歯ブラシを取ろうと手を伸ばした時に違和感があった。VRChat内で物を取るために動かす時の手の動きと異なるからだ。あれ?現実ってこんな感じだっけ?と思った。VRでの動き方に適応しているため、VRと現実での遠近感の違いに対応できていないのだ。初めのうちは逆だったのだろう。現実と同じようにVRで体を動かし、その微妙な差異に戸惑ったり酔ったりしてしまう。VR世界で長時間過ごすことで、今回はそれが現実の方で起きたというわけだ。

しかしこれも今では慣れによってすっかり克服された。今では現実世界でも(当然のことだが)しっかりコップを握ることが出来るし、VRで酔うことも少なくなった。こうやってVR世界に順応したときに気づいたことがあった。

現実世界での体の感覚とVR世界での感覚が同じになっている

友達と一緒にお互いのアバターの写真を撮っていた時、“VRゴーグルに付いているディスプレイ”では無く、“VR世界に立っているアバター”を見ていることを自覚した。VR機器とは原理的に言えば目のすぐ近くにディスプレイが付いているものだが、私は無意識的に立体視で描画される世界の中でちょっと遠くに立っている1人のアバターを見ていた。現実世界で遠くの人を見るような感覚で、自然とVR世界を見ることが出来るようになっていたのだ。
体の動かし方だけではない。視覚、聴覚、さらにいえば触覚まで、様々な体の感覚がVRの世界に溶け込んでいくような体験を得た。

そこで思った。VRゴーグルが映しているのは映像ではない。
自分がいる現実とどこかで地続きになっていて、確かに存在する場所



現実もVRも、どちらも同じ”世界”なのであると





5.後書き

今回の記事は「だ・である調」をメインに仰々しい文章を書こうというコンセプトで書きました。少し大げさに言った部分もあるし、私の精神状態を心配させるような内容にしてみたという自覚もありますが、内容については話は盛ってません。マジの体験です。

堅苦しくなってしまいましたが、今回の記事で言いたかったことは「VR世界に順応すると没入感がさらに増して、もっと楽しい体験が出来る」ということです。現実世界とVR世界を同じような感覚で見れるようになった時、現実的な感覚と非現実的な景色が混在する素晴らしい体験が出来るようになります。これはVR機器でしか成し得ないコンテンツで、もっとこの楽しさを皆に知っていただければなと思います。
Oculus Quest2は色んな意味で賛否両論ある機器なので、Facebookのやり口が気に入らない方は他の企業がQuest2を潰しに来た時の製品を待つのも手だと思いますが、現状コスパではQuest2が1強かなと思います。3万で買えるの凄すぎ。これからVR機器はもっと身近なものになっていくと思うので、私の記事を読んで興味を持ってくれた人が1人でも居れば嬉しく思います。

良かったらみんなで作ろうVRoid自作アバターシリーズの記事も読んでください。

マイアバター
VRでDJデビューしました
海外のヤバいフェスみたいなDJワールド


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