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ばってん少女隊『九祭』の魅力とこれからへの期待メモ

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ここ数日,ばってん少女隊の最新アルバム『九祭』をヘビーローテーションしてしまっている。
スカコアに全振りしていた時代からの,地元九州のお祭り文化を前面に出すスタイルは引き継ぎつつ,大ヒットした「Oisa」を経てテクノ,とくにエレクトロで統一した一枚が作られた,という状況。

曲名だけを見ても,「さがしもの」(佐賀しもの),「沸く星」(おそらく惑星?)など,初期のころから頻繁にやられていたセンスある言葉遊びがここでも見られる。
かと思いきや,各曲を九州の各県をイメージして作ったというコンセプトがあるだけに,露骨に九州を想起させる語が放り込まれていたりもする。「神輿担がれ ガメ Coming」(「御祭sawagi」),「ハウステンボス散歩する 大浦天主堂行こう」(「和・華・蘭」)など。
一見雑な言葉並びだが,それを不自然にさせないのがエレクトロに特徴的な曲調とラップ的な韻運び。

エレクトロで一枚全体が統一されているといっても,それぞれの曲で雰囲気は当然異なる。その違いも楽しみながら聴き進めているといつのまにか終盤に差し掛かっている,という罠。
最後の曲として待ち構えるのが「Oisa PARKGOLF REMIX」。一曲目ですでに聴いたはずの「Oisa(2021 ver.)」が若干違うテイストとして現れ,アルバム全体の締めくくりをするとともに2周目の「Oisa(2021 ver.)」への導入の役割も果たす。
「Oisa」自身がもっていたトランスの効果が,アルバム全体を通してのものとして拡張されているというべきだろうか。

これまでの九州お祭り文化の継承からさらに発展して「九祭」というネーミングがなされることで,これからより「巫女の末裔」的な意味での,世の中を救済する「少女」像が前面に押し出されることにはなる。
この動きは,先輩グループであるももいろクローバーがやってきたことの延長でもあるだろう。
ただしそれはおそらく,『うる星やつら』のサクラ,『美少女戦士セーラームーン』の火野レイ,堂本剛の「縁を結いて」での衣装などにみられるように,ポップカルチャーによく見られる意匠・装飾としての巫女性・少女性でしかないともいえる。
彼女たちがこれからいかにして現代の「巫女」として社会を救済していくか,しかし同時に,たんに消費されるアイコンではない主体的な人間として活動していくか,という点に注目していきたいところ。

ただそんなことを抜きにしても,これからのばってん少女隊への期待は止まることを知らない。
もっとも大きい注目ポイントは,本アルバムに収録されている曲のライブパフォーマンスがどのようになるかについてであろう。
そのエレクトロな音楽の特性上,そもそも生声での歌唱ではCD音源との違いが如実に現れる。
そうでなくとも,彼女たちのダンスは激しいものが多い。
現在MV等で確認できるものをふまえれば,本アルバムでの曲のダンスは細かい動きで複雑に構成されている。
そうであれば,パフォーマンスの難易度は必然的に大きくなる。
その困難を彼女たちがどう乗り越え,かつライブの構成に加わる深みがどうなるか。
そのような点もふまえながら,これからのばってん少女隊に注目していきたい。

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