1人での生活

18歳、一人暮らしが始まった。とは言えど、近くに知り合いはいるし、実家だってそう遠くない。帰ろうと思えばいつでも帰れる距離だ。不安はあまり感じていない。
家を出発し母と別れた時も、父と新居に入った時も、そして、父が新居から帰って行った時も、泣くことはなかった。ただただ忙しかった。

初めて一人で作ったカレーは甘ったるかった。いつもと違う歯磨き粉は、爽やかすぎるシトラスの味がした。蛇口のお湯が出なくて困った。隣人に挨拶すべきかどうか分からなかった。ただ、それくらい。

本当は泣きたいのかもしれない。帰りたいし、不安ばかりなのかもしれない。怖い。
でも、もうそんな感情を素直に受け取って生きていくことはできない。大声で泣き喚こうが、今すぐこの家を飛び出そうが、どちらにせよ今日からはここで一人で生きていかなければいけない。

大人になりたいなんて頼んだ覚えないのにな。いや、小学生の頃は早く大人になりたいって思ってたかも。その時頼んじゃったかな。
いっそ、思いっきり泣けば楽なんだろうけど、騒音や目の腫れ、充血……なんてことばかり気になってしまう。

これからは、家のことを実家と呼び、この知らない部屋を家と呼ぶ。親が泣いていないといい。実家の猫がぐっすり眠ってくれればいい。明日は隣人に挨拶すればいい。


鏡に映る自分の顔を見て、少しだけ涙が出た。

ええっ!?読んでくれただけで嬉しいのにサポートまでしちゃ…エェッ!?まじ、?やば、好きかもしれん。