『人は明日どう生きるのか 未来像の更新』

1.都市と建築の新陳代謝

高次元の世界を扱う設計では、とくに時間軸が新しいデザイン対象次元として立ち上がってくるから、建築家の扱う対象もまた静的な、固定されたものばかりではなく、移動するエージェント、変化するシステム全体までをも含むようになる。デジタルエージェントがそれぞれの異なるセンシングを行い、物理世界で価値あるパフォーマンスをアウトプットしてもらう。

人口減少社会における都市のつくりかた
饗庭伸
「都市は消滅するのか」と言う問いに対して2つの答えがある。1つは調達のための装置がすべて都市以外のものにとって変わったら都市は消滅する。もう1つは誰もが何も調達しなくても暮らしと仕事を成り立たせられる状態になったら都市は消滅する。
調達の装置としての都市は不要になるのではないかと言うことで60年代コミューン運動などでも希求された。競争のない争いのない満ち足りた世界と言うことだろう。
思考実験としては面白いが日本の都市においてどちらの答えも現実的ではない。例えば全ての人々がマッチングアプリで恋人を見つけるようになったとしても、相性を見極めるために都市を使ったデートが重ねられるだろう。都市で行われる濃密な調達を完全に仮想空間に移し替える事は不可能である。

仮想空間には計画学も流体力学も不要である。場所から場所へ瞬間的に移動し必要なものを調達できるのが仮想空間である同じことを都市でやろうとするとそれぞれの空間の配列や交通の設計をしなくてはならない。つまり距離がゼロにならないことが、仮想空間とは異なる都市の特徴である。

2.メタ・メタボリズム宣言
人間が介入することで初めて自然状態を超えて目的に応じた全体最適が成される生態系は学術的に「拡張生態系」と呼ばれる協生農法の基礎となっている。

持続可能性を核としてメタボリズムが成功するには、それが芸術や建築、都市計画にとどまっていてはならない。IPBESがすでに科学的エビデンスをもとに提出しているように我々の生活基盤そのものを更新するような文明の背景を入れ替えるようなメタモルフォーゼが必要なのである。
持続可能な都市の実現には、新たな形での物質と情報の集中・拡散をデザインすることが必要になる。物質資源の移動自体が問題なのではなくそのやり方つまり「界面のデザイン」が問題なのである。

「私たち」から「私」の物語へ
ドミニク・チェンは、現在のSNS環境が炎上や社会的分断を生む構造になっていることを重々理解した上で共感や理解を互いに得られなかったとしても、同じ世界で共に生きていることを受け入れる「共在感覚」への希望を語る。
わからないものを拒絶するのではなく、「わかりあえなさ」と共存する方法とは何かを紹介している。

資本主義と幸福の変容
「幸せ」とは、「自分」と言う枠組みを外すことです。近代社会は「自分」を中心に据えて構想されました。人は先ず以てそれぞれ「自分」であり、各自が自分の幸せを得るために努力することが社会=経済の発展の原理とされました。

前の時代との断絶を重視する社会と言うのは良くも悪くも、物事が絶え間なく変わっていくことを良しとする社会です。

幸福の変容
目標を獲得するための「集合行動」や「社会運動」ではなくて、そこにいること自体がすでに社会運動になっている実態がある。それくらい人々が個人化していて、人との共存自体が図りづらい。確かな幸福の約束がなくなった時代の活動、アクション、アクティビティという感じ。

we-mode 人間行動学者の細馬宏道氏
オキュパイなどの大きい現場に来た人の同期の中で多かったのが「SNSでずっと見ていて孤立感を覚えたから現地に来た」という意見。つながっているからこそ切り離されていると感じる。SNS時代だからこそ現場に強い意味がある。


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