ありそうでなかった大市場=「誰かのためにお金を使うゲーム市場」が生まれてきています
ミラティブの赤川です。今、ミラティブでは「ライブゲーミング」が強烈な勢いで拡大しています。ライブゲーミングが2020年代のゲーム産業の大波になることは間違いなさそうです。
ライブゲーミングをご存知ない方に簡単に説明しておきますと、これは「ライブ配信とゲームが高度に融合した形」という感じです。
ゲーム実況にコメントをする、というだけではなく、アイテムやガチャをギフトする、協力する、ということまでできるようになったイメージです。
これまでもその熱さをnoteに書いてきましたが、今日は、少し違う側面、しかしとても重要な側面として「ありそうでなかったまったく新しい市場」をライブゲーミングが開拓しつつあることを書いてみます。
ゲーム=自分のためにお金使う市場 だった
これまでのゲームは、「プレイヤーが自分のためにお金を使う市場」がほとんどでした。
ソフトを買うのは自分(その人自身)がプレイするため。ガチャを回すのは自分が欲しいアイテムをもらうため。
子どもへのプレゼント、という一部側面などは昔からありましたが、基本的には「プレイヤー」がお金を使う、というのがこれまでのゲーム産業です。
にも関わらず、誕生から数十年で、ゲーム市場は既に映画や音楽を上回るエンタメ産業で最大規模の市場です。
日本だけで約2兆円(スマホゲームだけで1.2兆円)、世界では約20兆円の市場が、プレイヤー向けに形成されています。
「ノンプレイヤー」の市場の可能性
一方、他のエンタメ産業に目を向けると、「プレイヤー」は必ずしも市場の大半ではありません。ゲームはむしろ特殊です。
たとえばスポーツは、「自分のためにバットやボールを買う」という「プレイヤー」向けの市場よりも、「ノンプレイヤー」のための市場が圧倒的に中心です。
観戦のチケット、応援ユニフォーム、放送を見るサブスク代、なんなら球場で買うビールが有数の高利益商品だったりします。
映画や音楽も、プレイヤー=作り手向けの市場よりも、消費者/観客や聴衆のための市場が中心ですよね。
ゲームは、かなり特異的に「プレイヤー」に寄った市場だったのです。これまでは。
ライブゲーム=誰かのために(も)お金を使う市場
ライブゲーミングのゲーム体験では「視聴者が配信者のプレイに介入したり、アイテムをプレゼントする」ことができます。
(例えば「装備アイテムを配信者にギフトとしてプレゼント」「ガチャのチケットをプレゼント」など)
これは、今までになかった「誰かのために(も)お金を使う」構造です。
そしてライブゲーミングのこの構造には単純に「市場を拡大する」だけに留まらない、大きな可能性・広がりがあります。
まず、これはゲームにかぎらないですが、アイテムの「プレゼント」「ギフト」=贈与行為について考えると、「安すぎる」ことを私たちはむしろリスク/失礼だと捉えるようになります。
なぜならプレゼントには、「機能的価値」以外に、相手への想いといった「情緒的価値」があり、それが値段にも反映されやすいからです。
受け取った側も、ただの機能の価値以外に「〇〇さんからもらった」「それで一緒に遊んだ」という記録や記憶=「物語」に価値を感じます。
また、先ほど球場のビールの例を引きましたが、そもそも「ソーシャル」な場での消費行為は単価が高くなりやすいです。
私たちは、球場でなくても、コンビニでは200円で買えるビール(日常ではとにかく安く買おうとするもの)が、居酒屋だと500円であることを当たり前だと感じています。
「ソーシャルな場で消費するコンテンツは価値が高い」「誰かといっしょに今ココで盛り上がるためのモノはそのモノの本来機能以上の価値がある」と無意識に捉えているのです。
さらに、「ギフト」には「返報性」があり、「お返し」を生みます。お中元やお歳暮もらったら返しますよね。
(特にミラティブでは配信者が視聴者でもある、という配信者比率の高さが特長ですので、片方向で終わらず、双方でギフトのやり取りが行われていきます)
「お返し」以外にも、「相手を喜ばせる」「場を盛り上げる」といった「粋(いき)であろう」という要素もギフトには付随していきます。
(なお、こうした「ギフト」「プレゼント」やそれに伴う情緒的価値・交換や贈与の構造は、「早くて安くて高品質」がほぼ完ぺきに満たされているポストAmazonのこれからの時代では、C向けサービスのマネタイズでは超重要ポイントになると思います。ここだけで長く語れるのでまた別日に書きます!)
結果、「自分のため」のゲーム市場も拡大
そしてそして、さらに面白いのはここからで、「誰かのためにお金を使う」と、「自分がそのゲームのためにお金を使う消費も増える」のです。
特に「いっしょに遊ぶ」タイプのエンタメではこれが顕著になります。
例えば「ゴルフ始めようかな…」と言っている知人にゴルフクラブを贈ったとしたら、自分が一緒に行った時にうまく振る舞えるように、事前に練習場に行ったり、カッコつけて良いクラブに買い替えたりします。そして「いっしょに行く」ことでお金を使います。
ミラティブで検証してきたライブゲーミングでは、こうした傾向がキレイにデータで証明されています。
ゲームアイテムのギフトをしたユーザーは、自分自身がそのゲームに使う時間や課金する額も顕著に増えていたのです。
(もともとミラティブでは「ゲームユーザーが配信者としてゲーム配信をはじめると、そのゲームに使う時間やお金が増える」こともわかっていました。さらにこの構造が加速した形です。「推す」はコミットメントの表明でもあるのですね)
つまり、ライブゲーミングは、単純に新しい市場を創造するだけでなく、「自分のために使うお金も増える」ことでゲーム市場そのものを大きく拡大することが期待されます。以下はイメージ図です。(あくまでイメージ)
20兆円の巨大なゲーム産業が、これまでの「自分のため・プレイヤーのため」の市場の枠を超えて、「誰かのためにもお金を使える」ことでさらに市場拡大ペースを増す――
この仮説が、まだ月商1億規模とはいえ既にユーザー課金の売上という具体データで検証されているのが熱いところです。
ライブゲーミングの爆発的なポテンシャルが伝わるかと思います!
黎明期を創る
まだまだ市場は初期段階につき、少人数でこの未来そのものを創っていけるチャンスがあります。
ミラティブでは先行開発パートナーを募集中です。ユーザーの生々しい反応をライブで見ながら新しい体験を試していけます。
まずは一本試しに作りたくなった方、既存のゲームをライブゲーム対応したくなった方、ぜひご一報くださいね。
(当社採用ページ)
次回のnoteは、「誰かのためにお金を使う」と「自分のために使うお金が増える」からこそ、必ずしも「新作ライブゲーム」だけでなく「リリース済の既存のゲームがライブゲーム対応する」ことからもライブゲームは広がっていきそうだよ、という話を書こうと思います。
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