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社内の風呂敷は、たたむ方が難しい

風呂敷をたたむのが苦手だ。
起業家は一般的に、と一般論化しがちな話題だが、要は、「私は」風呂敷をたたむのが苦手だという話だ。

風呂敷を広げるのは実は簡単だ。
特に決裁権者がやるのは容易で、仕組み化という名の指示・命令を出せば、原理的にはリーダーは風呂敷をいくらでも広げることができる。

しかし負債は増えていく。技術者には技術的負債という単語があるが、技術に限らず負債は気づくと社内に溜まっていく。

気づくと無駄なルーチンがはびこり、プロセス主義になり、「これやっている意味あるのかな?」とみんな疑問を抱きながら、「変えるめんどくささ」との天秤で、なんとなくルーチンが続いてしまう。そんなリスクがある。

特にリモート化以降は、「なんか言い出しづらい」「言う機会がない」というケースも増えやすいように思う。これは全力でつぶしていかねばならない。

KZ馬


先日、社内きっての格闘技好き・兼・犬好きで知られるKZ馬という男が、zoom会議中に半分怒りながら営業日報の現状について提起をした。RIZINの翌日でテンションも高かったはずだが、別にそのせいではなく、言葉に力がこもっている。

曰く、今の営業日報はフルリモート化が始まってから営業活動の把握のために始めたフォーマットだが、4か月がたち、形骸化しているのではないか、もうやめた方が良いのではないか、と。
何より、全員がピシッと出していない日があるのが本当に許せない、と。

私はハッとして、毎日目を通してはいたが、全員の提出確認まではやれていないことに思い至った。
その場で日報スレを眺めると、確かに最近は提出にバラツキが出ていた。

私は悪い癖で、「やめた場合にこの日報が果たしている機能的役割をどう代替するのか?」、の問いをまずした。
が、KZ馬はどちらかというと「皆がやると決めたことをやりきっていない」「そんなものを放置してはダメだ」という点に再度かみついた。

私は100%正しいなと思い、非を認めて、その場でこの形式の日報は終了にした。(非を認めるプロセスがいくつになっても器用にできない点もmtg後に静かに反省した)

風呂敷をたたむきっかけを、KZ馬がくれたというわけだ。



KZ馬との出会いは会議室だった。

ミラティブに広告代理店として連携提案に来たのだが、提案の仮説のスジの良さと、ときどき見せる笑顔の抜けの良さがすぐに気に入ったので、その場で雑に「連携にはぜひ付き合いたいんですが、それはそれとしてその後でうちに来ませんか」と誘った。
あとで調べると、私と同じく、新卒入社で10年以上を代理店でエースとしてささげてきたプロパー社員だった。

10年を超えたプロパーは、他人が思っている以上に転職というものを考えていない。
そして、他人が思っている以上に外から口説かれない笑(あの人はずっとあの会社にいる、と皆が思っているため)。
お互い広島出身だということがわかり、ごはんに行くことにした。

お好み焼き屋(言うまでもなく、広島人にとってお好み焼き屋とは広島風のお好み焼き屋以外は存在しないし存在しえない)にて、「オレ昔アキレス腱切ったんすよ~」という話を屈託なく話す様子などがとても気に入った。冬場のはずだがよく日焼けしていて快活だ。

「この前の話、本気なんだけど、ミラティブに来ないか」と口説くが、その場ではあえなくフラれた。

その後で一緒に中国に出張に行って、私は先方社の全体提案の窮地を救うことで少しだけ恩などを売った。

私はずるいのでそのことも少々テコにして、帰って来てからまたお好み焼き屋で話をして、2018年夏、彼は当社に最初の営業マンとして来ることになった。
(後日、KZ馬は広島出身にも関わらずお好み焼きはぜんぜん好きではないということが発覚した)


入社後、KZ馬は、獅子奮迅の活躍で、ミラティブの様々な「世界初」のdealを取り仕切った。売りまくる。たまに暴走する。そして時々ポカもするのだが、最後はしゃあないなぁと思わせる不思議な愛嬌がある。接していると、少なくとも邪心という類のものがないことが伝わるタイプの人間がいる。彼はそんなタイプである。

過去の傾向から見て、KZ馬はルーチンが苦手なやつだ。でも営業日報はきっちり出していた。
決めたことはやる、という責任感が、彼の生き方なのだと思う。そこからの怒りが組織に気付きを与え、形骸化したルールを打破した。



攻めや勢いが重視されがちなのがベンチャーだが、だからこそ棚卸しや「やらないことを決める」ことの重要性を日々感じる。

撤退判断そのものも難しい、が、「撤退判断をするという議題をテーブルにあげること」、がそもそも難しい。なにより、「撤退判断」などと大仰な表現が絶対にされないような、本当はすぐやればすぐ変えられる小さな決まり事こそ、放置されがちになる。

本当は難しくないはずの「課題の直視」を愚直に続けられる組織が強い。

そして、ルールを決めた人が、形骸化を放置すると、周囲の信頼スコアは著しく下がる。そのことに気づかされて、深く反省した。
私は風呂敷をたたむのが苦手なので、たたむきっかけを与えてくれる仲間にいつも感謝している。


KZ馬は最近、同じ営業メンバーに自分の知見を共有したり、営業達成会で釣ってきた鯛をさばいたり、実に頼もしい。周りもどんどん頼りにしている。2年超いっしょに仕事をしてきて新しい顔・新しい境地を見ている心地がする。

オンライン会議にシフトした初期、KZ馬の部屋では犬が良く吠えていたが最近はめっきり静かになった。犬は夏バテしていないだろうか。
今日もメンバーに学ぶことは多い。

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