不寛容にもほどがある!
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新書「あなたの中の異常心理」(岡田尊司)
最近、「異常」だと思うのはネットニュースとそのコメント欄です。もちろん今に始まったことではありませんが、このところ特に異常だと思えるのです。
例えば、過日フリーの女子アナが「男性の夏場の匂いや不摂生している方特有の体臭が苦手すぎる」と個人のSNSに投稿したところ炎上したという記事。これがアップされるや、コメント欄で同女子アナへの非難はさらに勢いを増し、事態を重く見た所属事務所が彼女との契約を解除したと言います。
たしかに、彼女の投稿で傷ついた人もいたかもしれないし、全方位的な配慮が足りなかったという指摘も当たっているでしょう。しかし「男の体臭が苦手」というのは所詮、個人の感想です。誰か特定の体臭についてディスったわけでもないのに、そんなに目くじらを立てる必要があるのでしょうか。
私とて体臭に自信があるわけではないけれど、「ああ、臭いに敏感な人なのね」とスルーすれば良いように思います。ましてや、それで契約解除する事務所って、いくら何でも了見が狭すぎませんか?
あるいは、こんな記事もありました。病気療養で休職中の某局女子アナ(どうも女子アナは標的にされ易いようです)が、会社に断ったうえでパリ五輪を現地観戦したと自身のSNSで投稿したら、これも大炎上したと言います。
事前に会社の了解も得ているのに、いったい何が問題なのでしょう。病気療養中の人は何かを楽しむ姿を見せてはいけないとでも?
いや、たしかに彼女の休職により、仕事のしわ寄せを被っている人もいるのだから、その人たちのことを思えばSNSなどで発信する必要はなかった──と言うのは正論かもしれません。
でも良いでしょ、そのくらい。そんなのが許せないって、あまりに狭量すぎません?
これらを批判する人たちは、今年の初めに流行ったテレビドラマのように「不適切にもほどがある!」と言いたいのでしょう。しかし、私からすると
「不寛容にもほどがある」
と思えるのです。もっと大らかに生きましょうよ。
自らは匿名性を確保したうえで、他人を罰することができるネット空間は、本書の言う「異常心理」の発露の場、いや発散の場となっています。著者は「異常心理≠精神障害」として、それは誰の心にもあると説きます。もちろん、かく言う私も例外ではないという自覚はあります。そもそも、あの手のネットニュースに反応していること自体が、その兆候なのでしょうね。もっと大らかに生きようっと。
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