お前は 遅すぎる/早すぎる

そいつは私が素手で、自分はナイフを持っているという優位性に酔いしれた顔をしながら振り回した。
多少は腕があるようだが無駄が多すぎる。まず急所を狙うべきだがどこも狙っていない。
遅い。何もかも遅い。遅すぎるぐらいだ。
手首に右手刀を当て空いた脇腹に左の拳を叩き込み崩れた所を回り込んで膝裏に蹴りを入れ倒れかけた所の背中の肩甲骨間を蹴ってそのまま倒し踏みつける。
最後は延髄を狙ってかかと落とし。
何があったか分からなかったろう。全てが遅すぎる私の能力を知らないのだから。

いつ終わるともしれない見張りをおおむね皆いたわる。か、ずっと動かないで見ているのを気持ち悪がる。
この感覚は誰も分かるまい。だが最近いい例えを見つけた。タイムラプスだ。
全てが早い。何もかも早い。早過ぎるぐらいだ。
無論俺はターゲットを見逃すようなヘマはしない。通信だってちゃんとこなす。だから誰も俺の能力を知らない。
「お出ましだ」
時間が戻る。
(続く)

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