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『ZOO』特別先行試写会 in 女子美術大学レポート

3/2より開催される特集上映『ピーター・グリーナウェイ レトロスペクティヴ 美を患った魔術師』を記念して、2/16(金)に女子美術大学にてヴィヴィアン佐藤さん、ゆっきゅんさんをトークゲストにお招きし『ZOO』の先行試写会を実施致しました!本日はその模様をお届け致します。

アート映画界の鬼才と呼ばれるピーター・グリーナウェイの作品には、フェルメールを始めとした西洋絵画をモチーフとしたシーンが幾つも登場する事から、現役の美大生の皆様にご鑑賞頂き、その魅力をトークショーにて徹底解剖し、学生の皆さんと共に紐解きました!

「私の80%はピーター・グリーナウェイで出来ている」と話すヴィヴィアン佐藤さん、
グリーナウェイ作品を深堀!
ピーター・グリーナウェイ作品は今回がお初というゆっきゅんさん、
学生の皆さんと同じ目線でトーク頂きました
女子美術大学芸術学部 美術学科 洋画専攻教授、大森悟先生による『ZOO』のご紹介
なんと、Bunkamura ル・シネマでアルバイトをした経験もあるという大森先生
当時は映画を観る事で自己形成をしたり、何かに抗う事をしてきたという回想から、
『ZOO』に登場する動物が腐敗・分解されるに至る時間、
左右対称のシンメトリーという古典的な美の形についてを解説頂きました

動物の死骸に執われた双子を描いた衝撃作である『ZOO』、初めて観たというゆっきゅんさんは映画について「これまでグリーナウェイの影響を受けたと言う作家たちの作品は観てきたけれど、改めて何か原典に触れている感じを受けました。最初から最後までビジュアルイメージと映画の内容が完全にシンクロしていて、その執着が恐ろしい。」と、グリーナウェイ監督作特有の、”こだわりの強さ”に触れました。
対するヴィヴィアンさんは、90年代初期のミニシアターブーム以降、長らく日本では話題に上がらなかったというピーター・グリーナウェイについて、「今年は彼の当たり年ね!アリ・アスターや、ヨルゴス・ランティモス、それにレディ・ガガなんかもそうだけれど、彼らと共に仕事をする周りの人々が、実はわたしと同じくらいの世代の人たち。だから、まさにグリーナウェイ作品の美学に浴した人たちの、その美学がループして続いているような感覚なの」と、大好きなグリーナウェイに今現在焦点が当たっている事を、感慨深く説明した。

映画監督であるより先に画家を目指していた

ヴィヴィアンさんは、グリーナウェイが元々は画家志望であったことにも触れ、ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展で『プロスペローの本』(91)を元に制作された本の展示があったことも回想。「いわゆるこの時代ってMTVなんかが出てきた時代。1984年、ロサンゼルスのオリンピックとか、ヴァン・ヘイレン、アメリカンロックやマイケル・ジャクソンの時代です。音楽と映像が連動し始めた時代なの。そんな時代にアメリカとは全く違った表現でこんな映画作りをしていたのがピーター・グリーナウェイ」と、当時の受け入れられ方の斬新さを解説した。

マイケル・ナイマンの音楽

音楽活動もするゆっきゅんさんはマイケル・ナイマンの音楽にも触れ、「音楽がすごく特徴的でした。不自然というか、目立つっていうか」と、その独特な世界に感動した模様。するとヴィヴィアンさんが「楽譜の図柄から音楽を作ったり、理論だけで作ったりと、過激なことをやっていたナイマンだけど、かたや『ピアノ・レッスン』(93)はメロディが美しい。ゆっきゅんが不自然と感じたメロディは、支配されたり管理・制御された自然を執拗に描き続ける、所謂ネイチャー・モルテ、死んだ自然と言う言葉がありますけど、それを踏襲しているのかなと思う」と、音楽にも宿る美学を補足。

ヴィヴィアンさんの他お薦め作品は『プロスペローの本』&『ベイビー・オブ・マコン』

ゆっきゅんさんからヴィヴィアンさんへの「一番好きなグリーナウェイ作品は何か?」の質問に、ヴィヴィアンさんは、「『ベイビー・オブ・マコン』と『プロスペローの本』。残酷で美しいです。毒々しいところ、諧謔性だったりパンク精神みたいなものが共通してるのかなと思う。プロスペローでは天才パンクバレエ振付師のマイケル・クラーク(ファッションデザイナーのJWアンダーソンが長年のファンであることも公言し、2023-24年秋冬コレクションではコラボもしている)が踊り狂っていて最高です。どこか当時のミニシアターブームって、映画が映画だけというより、音楽やファッションや建築とか、そういったところとクロスオーバーして文化を変えていったイメージがあります。『コックと泥棒、その妻と愛人』は、グリーナウェイ作品を敬愛したジャンポール・ゴルチエが衣装を担当してますよね。ゴルチエも実は洋服だけではなく、都市と密接にリンクしていた。所謂デパートとかではなく、路面店、ギャルリ・ヴィヴィエンヌという裏通りに入っていたりして、都市とファッションが繋がっていたの。今はなんでもネットで買えるから、もう都市とか街は関係なくなってしまったけれど」と、グリーナウェイ作品のその懐の広さを解説しました。

最後は女子美生の皆さんと記念撮影

『ピーター・グリーナウェイ レトロスペクティヴ 美を患った魔術師』は3/2(土)よりシアター・イメージフォーラム他にて全国順次開催です!
上映劇場は下記をご確認下さい。