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小僧の夢

 興味深い夢を見たのでブログ記事として公開しておく。

 祖父の家の畳に寝そべっている。
 祖父の家は田舎の一角に建っている。古風な日本家屋だ。仏間があり、縁側があり、庭には石灯籠がある。その一室で僕はひとり家族の帰りを待っていた。要するに留守番だ。季節は夏。おそらく僕は小学校の高学年。
 ガラガラガラと表戸を開ける音がした。家族が帰ってきたのかと思い戸へ向かうと、そこには甚平姿の小僧が立っていた。僕よりずっと小さい、さらさらと髪の長い少年だ。どこか別の家から使いっ走りを命じられて来たような格好。しかし僕には一向に用件を述べず、ただひたすらに巻き尺と竹の定規で戸の寸法を測り続けている。
 僕は小僧に「なんの用事があってここに来たんだい?」と尋ねた。すると小僧は不機嫌そうな顔になり、壁に引っかかっていたL字フックを黙って僕に差し出した。まるでその先にカレンダーがかかっており、そこに小僧来訪の予定がきちんと書かれてでもいるかのように。しかし、L字フックの先にカレンダーはかかっていなかった。そのことに気付いた小僧は、「あれ、おかしいぞ、間違えたか?」などと言いながらその辺にあった物を片っ端からひっくり返し始めた。カレンダーを探しているのだろう。
 そのとき僕の母が家に帰ってきた。小僧は母の姿を見るなり、脱兎のごとく家から駆け出した。そのさまを見て母は笑い転げた。母は顔全体を笑いに歪ませながら、「随分と勢いのある逃げ去り方だったねえ。あれは『勢い坊や』だよ」と僕に語った。勢い坊や。その意味は分からなかったが、母が楽しそうにしていたので僕は喜んだ。
 そのとき、
「隣の家の息子が亡くなったよ」
という噂が僕の耳に聞こえてきた。

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