南部真有香の仕事場
いい仕事場には希望がある。
いい仕事場には秘密がある。（楽屋ニュース風に。）
イクカラニハ！記念すべき第一回のゲストスピーカーは南部真有香さん。
有限会社テイスト（http://www.tasteinc.net/）で、
代表にしてお父さまの南部俊安さんと共に、
グラフィックデザイナーとして活躍されています。（そっくり）
パワフルな彼女の秘密が知りたくて、リモートでお話を伺いました。
--------------------------------------------------------------------
イクカラニハ！チーム（以下イクカラニハ）
明けましておめでとうございます。
今日はよろしくお願いします。
南部さん
よろしくお願いします。ちょっと逆光ですみません。
イクカラニハ
全然大丈夫です！
早速なんですが、最近のお仕事の
「海遊館」と「ニフレル」の周年ロゴについてお聞きしてもいいですか。
南部さん
はい。まずこの仕事の経緯は、
「海遊館」と「ニフレル」の周年ロゴのコンペの依頼があったので
お受けしました。
（注：「ニフレル」は株式会社海遊館が運営しています）
全く同じデザインではないけれど、
共通したイメージでデザインしてほしいという依頼でした。
イクカラニハ
これは手描きなんですか？
南部さん
そうですね。手で描いて、スキャンしています。
それぞれにいる生き物や施設をモチーフにあしらっています。
方向性の違うものをいくつか考えて、これは一番最後に思いついた案でした。
イクカラニハ
なるほどなるほど。ANNIVERSARYのフォントもそれぞれ違うんですね。
南部さん
そうですね。数字のデザインを先に作って、それに合うフォントをレイアウトしました。
イクカラニハ
ファクト部分以外の「3」の下の黄色の丸とか、
ワニの下の緑色はどういうイメージなんですか？
南部さん
子供の描いた絵のような要素を入れたら楽しいのかな、
と思って、デザイン的なバランスやインパクトを考えて入れました。
ロゴが決まってからは、
他の生き物のイラストも描いたり、
周年のデコレーションを全体的に担当しました。
イクカラニハ
南部さんは常にお父さんとお二人だと思うんですが、
仕事はどうやって進めているんですか？
南部さん
一人で進めたり、二人で進めたりといろいろですけど、
最終的なチェックはしてもらってます。
この仕事に関しては、オリエンからプレゼンまで
一人でやったという感じですね。
絵を描くのが好きな子供時代
イクカラニハ
南部さんの子供時代はどんな感じだったんでしょうか？
南部さん
物心ついた時から父はデザイナーだったので、
普通とは違う環境だったと思います。
子供の頃から絵が好きだったので、
小学生の時はマンガ家になりたいこともありました。
中学の時の美術部を経て、
父の出身校で馴染みがあった、
阿倍野区にある工芸高校のビジュアルデザイン科に進みました。
イクカラニハ
工芸高校だと、他にもアート寄りの学科もあったと思うんですが、
ビジュアルデザイン科を選んだのはなんでですか？
南部さん
アートのように、自分の中から湧き上がってくるものを表現するより、
課題を解決していくデザインのやり方があってたのかなと思っています。
あとは、父の仕事をCMで見ていいなと思ったり、
街に並ぶ商品やポスターをデザインしてみたい、
ということで選びました。
イクカラニハ
中学生で「デザイン」という選択ができた環境が、
早いし羨ましいなと思います。
逆に反発して他の道を考えたことはなかったんですか？
南部さん
うーーーん…。あんまりなかったかもしれないですね。
絵が… 好きだったので..。
大学で気づいた自分の方向性
イクカラニハ
大学は京都市立芸術大学のデザイン学科に進まれるわけですけど、
高校の専攻もデザインだと、同じようなことをしたりってことはないんでしょうか。
南部さん
全然そんなことなくて、
今はわからないですけど、当時の京芸のデザイン科はアート寄りで、
画材の選び方とか、
感性的な表現をたくさん教えてもらいました。
逆に高校で習ったようなデザインっぽいことをしたら
メッチャ怒られたり…
イクカラニハ
ははぁー‥。じゃあ癖がついちゃって悩みそうですね？
卒業制作はどんなことを？
南部さん
あ、実は持ってきてるんですけど…（後ろをガサゴソ）
イクカラニハ
はいはい。見えてますよー。テーマはなんですか？
南部さん
「タンポポ文字の旅(travel of dandelion font)」というテーマで、
ポスター12点とブックをデザインしました。
ひらがな、アルファベット、数字などを
タンポポの綿毛をモチーフにしてデザインして、
ポスターに展開しています。
自分の中で物語にもなっていて、
それを絵本にも落とし込みました。
イクカラニハ
えー！すでに今のスタイルのルーツがある感じですね。
南部さん
そうですね。この辺でやっと自分のやりたいことがわかったって
いう感じでしょうか..。
イクカラニハ
22歳でそれがわかるっていうのはすごく早いっていう印象です。
学生時代から、
タイポグラフィに注力していたって感じなんですね。
南部さん
そうですね。それが私の特徴という感じですね。
イクカラニハ
卒業してお父さんの会社に入られるわけですけど、
娘さんがご自分の会社のスタッフになるときに、
何かおっしゃってました？
南部さん
「ん〜まあええんちゃう」って感じでした（笑）
就職活動もしましたよ。
ただ、父の元にいた方が勉強できそうかなと思って選びました。
イクカラニハ
それはやっぱりお父さんのお仕事が素晴らしいと感じていたからですよね？
南部さん
父の会社に入れば、ブランディングとか色々、
幅広くできるのかなと思ったのでなんか.. そのまま…
イクカラニハ
反抗期とかなかったんですか！
南部さん
そもそもあんまりなかったんですけど、
高校の時にビジュアル系のバンドでドラムを叩いて発散してました。（笑）
（注：南部さんはL'Arc〜en〜CielとJanne Da Arcのファンです）
イクカラニハ
今もバンドをされてますもんね？
南部さん
今のバンド仲間は大学の軽音部の仲間で、
CDも出してます。
Twitter @otomekikan @shiturenmegane
イクカラニハ
就職したての頃は、家庭と職場でお父さんとずっと一緒にいることになったと思うんですけど、どんな感じだったんですか？
南部さん
まず、友達から聞く会社の話と違いすぎるので、
大丈夫かなって思ってました。（笑）
最初は全然できなかったので、
描き直しさせられたりダメ出しをされてばっかりで、
辛かったです。
イクカラニハ
まあそうですよねぇ。
ちなみに仕事中はなんて呼んだはるんでしょう？
南部さん
普通に、「お父さん」と。（笑）
事務所で自宅フロアをサンドイッチ
イクカラニハ
少し、事務所訪問っぽくデザイン事務所としてのハード部分を
お聞きしていきたいんですが、今そちらはどこなんでしょう？
南部さん
ここは実家兼職場の、1階の部屋で、
基本的には父の作業場所です。
私の作業する部屋は、3階ですね。2階はリビングです。
イクカラニハ
なるほど。じゃあ一回住居スペースを通ってから
また作業場に行く感じなんですね。（不思議な感じだ..）
ちょっと動いてもらえたりします…？
南部さん
ちょっと待ってくださいね。えーと
（MacBookを持ってぐるぐる）
イクカラニハ
わ、いいですねー。興味深いです！
打ち合わせはどちらで？
南部さん
打ち合わせはするときはここで、
本棚はあっちこっちにある感じです。
（3階の南部さんのデスク）
南部さん
ここに出てる本は、こんなのとか…
こんなのとか…
イクカラニハ
手書きされるときは、普段どんなステーショナリーを使ってるんですか？
南部さん
こんな感じの普通のペンで描いてます。
イクカラニハ
きっとデザインを考えるときはまず手で描いて考える派でしょう？
南部さん
そうですね。クロッキー帳に。ペンだったりシャーペンだったりで。
イクカラニハ
このクリスマスツリーのもですけど、
南部さんは自主制作もたくさんされてますよね。
インスタ（@mayuka_nanbu）に投稿されてた鳥の絵本も素敵でした。
南部さん
あれは、鳥が元々好きだったのと、鳥の名前の漢字って
おもしろいなと思ったのがきっかけで、
鳥の形と漢字の形を合わせるアイデアを形にしました。
自主制作は、
いつまでに、というのを自分で決めて一応そこを目指しながら、
仕事の合間に、思いついたことをちょこちょこ進めていってます。
初めは仕事とのバランスが思うようにならなかったんですけど、
最近はだんだんリズムがつかめてきました。
デザインアワードとかイベントに向けて制作したりもしてますけど。
イクカラニハ
確かに、締め切りを自分で決めるというのは大事ですね。
自主制作なら仕事でできない手法を試したりできますし。
取りたい賞とかありますか？
南部さん
まあそれはいろいろ..
イクカラニハ
その中でもー？
南部さん
うふふ。
父親から、師匠、そしてパートナーへ
イクカラニハ
今後は、独立とかは考えてらっしゃいます？
南部さん
やー今のところは全然考えてないですねぇ。
独立してるみたいなものかなとも思いますし。
イクカラニハ
仕事の依頼は、
事務所に来たり、南部さんに直接来たりって感じですよね？
そうなると確かに、社長と社員とはいえ、
2人ユニットの感じですね。
南部さん
あーそうですね。そんな感じです。
だんだんとそうなりましたね。
まあ今も普通に厳しいんですけど..。
イクカラニハ
なるほど。それは普通の会社でもみんなそうかもしれないですね。
今後どんな仕事がしたいとかなりたいイメージはありますか？
南部さん
百貨店のお菓子のパッケージとかしてみたいです。
イクカラニハ
パッケージは皆さんに手に取ってもらえるのが魅力ですもんね。
お菓子は美味しいし。
では南部さん。この辺で、今日はどうもありがとうございました。
南部さん
ありがとうございました。
今年で、デザイナーになって10年になる南部さん。
いろいろお話を聞いて、
とても自然で、素直な在り方が、
彼女のたおやかでタフな制作スタイルの秘密だなと思いました。
南部さん。長時間、ありがとうございました。
--------------------------------------------------------------------
南部真有香（Nanbu Mayuka）
有限会社テイスト
アートディレクター／グラフィックデザイナー
大阪生まれ。2011年に京都市立芸術大学ビジュアルデザイン科卒業。有限会社テイスト入社。
ブランディングデザインを中心にグラフィックデザイン全般とイラストレーションやキャラクターデザインの開発にも取り組む。
最近の仕事に、海遊館とニフレルの周年ロゴマークのデザイン。堺市民芸術文化ホール フェニーチェ堺のブランディングなど。
【主な受賞暦】コンケラー・デザインコンテスト2012 グランプリ、香港国際デザインアワード2014 銅賞、Hiiibrand Awards 2013・2019・CI部門 銀賞、日本タイポグラフィ年鑑2019 審査委員賞、2020年 第16回アジア太平洋デザイン年鑑（ASIA PACIFIC DESIGN）優秀賞にポスター3点がノミネート、日本タイポグラフィ年鑑ベストワーク賞、ADC年鑑、JAGDA年鑑入選、海外のポスター展（モスクワ、トゥルナバ、ポズナン、香港、杭州、深セン）に入選、ファイナリスト賞など。
--------------------------------------------------------------------
編集 / 外賀寛子
＠sinwagraphic
佐藤大介
@daiskesato
濱村桃嘉
@eva_artwork
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか？