「奇事故」を見た

  • 演劇が苦手で行くかぎりぎりまで迷った。演劇というとなんかヒステリックでプライドの高い人たちが観るもので、
    ナルシスな雰囲気と謎のコミュニティから発せられる疎外感とか、何かを教えてこようとするストーリーという偏見を持って生きてきたので、
    2時間も楽しめるのか?と不安だった。でも、かもめんたるブランドを信じて、一か八かチケット買ってみたが、結果、本当に予想以上にめちゃくちゃ素晴らしかった。

  • コントっぽい話の入口で、海賊になりきった小学生の女の子に振り回される家族や周囲の大人たちが面白かった。
    こんなにも下品である必要ある?という長時間の下ネタに笑ってしまった。
    一生懸命に下ネタを繰り出しているのにめちゃくちゃすべってるのが、またおもしろかった。

  • 話が進むに連れて、海賊としての娘を持つ家族の辛さをリアルに感じる展開になってくる。
    歳を重ねて18~20歳になってもなお海賊を全うしようとする大人の雉子はキツく見え始める。「娘はこれからどういう人生を送るのだろう?」と家族の心情を考えると気分は重くなってくる。

  • 海賊としての娘として割り切れれば、まだ少し楽だったろうと思う。
    ただ、生前に憶えた「上を向いて歩こう」を口ずさむ女の子は雉子そのもので、海賊としても割り切れない、雉子の面影を感じながら生きていくしかないのがつらい。
    みんなで歌った「上を向いて歩こう」が家族を鼓舞する歌にも聞こえて、グッと来た。
    何回も歌い過ぎてアレンジが行き過ぎたライブバージョンのような上を向いて歩こうも笑えた。上を向いて歩こうってこんなにも色んな顔を持つ曲なんだな。

  • わかりやすい悪者がいなくて、みんな思いやりを持って一生懸命生きているのに、結果良くない方向に進んでいってしまうところが悲しくてやるせない。
    辛さや哀しみが詰まった話だったけど、人生って必ずしも絶望だけじゃない。
    フライヤーの isn't life disappointing とあるように絶望の中でも生きることを肯定してくれるようだった。
    でもストーリー全体に説教臭さが全くなく、随所にかもめんたるの笑いで包まれていて、劇場を出る時、心が温かくなっていたのを感じた。

  • 観終わったあとも余韻がすごすぎた。自分が小学生の頃、初めて行った映画館から家に帰ったときの感覚に似ていた。帰り際物販も気になったが、そういう気分じゃなく、とにかく頭に何も入れたくなくて、頭になんの情報も入れたくなくて素通りした。遠回りしながら歩いて駅に向かった。
    でもサイン入り台本買っておけばよかったな。

  • 役者の演技も本当に見事だった。
    途中まで槙尾さんだと気づかないくらいおじいさんだった。
    今まで舞台役者って誇張しすぎた感じの演技が苦手だったんだけど、なんの違和感もなく没入できた。
    野口さんと高畑さんのインスタをフォローしてしまった。

  • ここ数年味わえないような奇妙な感覚で、とにかく本当にいいものをありがとうございました、という感じ。行って良かった。


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