元スポーツ用品開発者が語る、スポーツ業界に感じたモヤっとしたこと2選

こんにちは。
私は先月までスポーツメーカーに勤めており、約4年間スポーツ用品の開発と研究をしておりました。
せっかくの経験なので記事にしてみようと思い、今回はスポーツ業界にモヤっと思っていたことをなんとなく語らせてください。

モヤモヤ①

スポーツ用品は回転スピードが早いです。
ランニングシューズなどを見ると半年〜1年で新モデルが発表されます。一方で車は7〜8年でモデルチェンジです。これは、そもそも製造するものの大きさが小さいということ、車ほど継続的に売れるものではないということでもあります。
この半年〜1年の中で企画・開発・製造・宣伝・営業と次々行うことになります。

1年毎での商品の更新となると、多くの場合がマイナーアップデートとなります。技術的な進歩は小さく、モノによってはあまり性能が変わらないこともあります。

ここが業界に入って少し悲しかったところです。
私がスポーツメーカーっていいなって思ったのは中学生の時でした。当時テニス部に入っていた私は、ラケットやガットに興味があり雑誌で情報を収集していました。そこに出てくる広告は、応力解析のスカラー図といった日常生活では見ない内容で、「なんかスポーツに使われている技術ってかっこいい!性能良さそう!」と惹かれていました。
実際入ってみると技術は使っているものの進歩は小さい、だけれど広告は何か成し遂げたかの様に書いてある、すごい違和感を感じました。
ものを売るためには当然のことなのですが、純粋だった私は少し悲しかったです(笑)

マイナーアップデートが多いのは事実ですが、当然飛躍的な進化もあります。
性能面で大きなブレイクスルーが起きる時は、優れた新素材の誕生が挙げられます。電子的なものが付いていないスポーツ用品は、基本的に構造と素材で性能が決まります。構造はマイナーアップデートで突き詰めている場合があり、性能が飛躍的に伸びる時は素材が変わったという場合が多いです。

モヤモヤ②

スポーツ用品の他商品と違うところは、競技ルールが設けられている点です。
例えば、ランニングシューズはソールの厚さ、ゴルフは反発、競泳水着は浮力や厚さが制限されています。
2008年の北京オリンピックで活躍したレーザーレーサーという水着がありました。これは従来の水着より大きく水の抵抗を減らす工夫がなされており、世界記録を次々と更新しました。その性能の高さから、この水着を持っている選手と持っていない選手で差がつきすぎるということで、2010年頃に水着のルールが改定され使用禁止になってしましました。

ここから個人的な意見ですが、スポーツ協会によっては、道具のおかげで記録が進歩してしまうのは伝統に反すると考えているのではないかと感じています。しかし、技術は着実に進歩していきます。一昔前よりトレーニング方法や運動計測の技術が高まっており、テクノロジーとスポーツは共存していく方向に向かっています。道具の進化も認めて、スポーツ協会側も伝統を重視する姿勢から多様性のある姿勢へ変わっていってほしいと僕は考えています。
と言うのも、こうした競技ルールが大会に出ないようなアマチュアユーザーの思考にも影響していて、楽に成果の出る道具を嫌います。ゴルフなど顕著で、反発ルールをオーバーしたクラブを使ったら、それはゴルフではないと考えている人が一定数います。

いいじゃん、別に。飛んで楽しいなら。

個々人で競技ルールを重んじるのは良いですが、それで新しく始める人の敷居が高くなってしまったら嫌だなと思っていました。伝統やルールで取りこぼしている新規参入ライト層をもったいなく感じます。
私はスポーツを多くの人に楽しんでほしいし、そこから得る大きなメリットを感じてほしいと思っています。こうしたことを広める協会側が、伝統を重んじるが故に入り口を狭くなっていたら残念だなと思っていました。

あとがき

と、当時抱えてたモヤモヤを語ってみました。
スポーツ業界に対してネガティブな話になってしまったので、すっきりした話も今度書きます。

それでは。


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