魚とみず⑦

『魚(うお)とみず』 徳田公華

※本作は2018年の函館港イルミナシオン映画祭シナリオ大賞応募作品です。応募した作品を加筆せずにそのまま掲載しております。

【登場人物】

池田 青葉(いけだ あおば・27)   雑誌の編集社の会社員
池田 柊花(いけだ しゅうか・29)   青葉の姉 
北原 海斗(きたはら かいと・5)   麻実の息子

池田 圭子(いけだ けいこ・55)   青葉の母
北原 麻実(きたはら まみ・25)   新田の孫

池田 博史(いけだ ひろし・享年58)   青葉の父
橋本 泰介(はしもと たいすけ・28)   青葉の彼氏
新田 茂吉(にった もきち・62)   池田家の隣に住んでいる、元教員

森野 梨華(もりの りか・21)   青葉の勤める会社の後輩
山田(やまだ・45)      青葉の勤める会社の上司

(⑥の続き)
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◯池田家・駐車場(昼)
    バーベキューをやっている青葉と柊花と海斗と新田。
    圭子が慌ただしく食材を運んでいる。
    そこへやってくる泰介。
泰介「青葉」
青葉「ちゃんと着けたね」
柊花「え?」
海斗「お兄ちゃん、だれ〜?」
泰介「あ、初めまして。橋本と申します」
新田「もしかして、青葉ちゃんのコレかい?」
柊花「え? えぇ! ちょっとお母さん!」
圭子「そんな大きな声出すんでない!」
泰介「あっ、青葉さんとお付き合いさせてもらっています、橋本泰介と言い
 ます」
圭子「あれぇ〜!」
柊花「お母さんの方がうるさい。へぇ〜、青葉ってこうゆう人が好きなん
 だ」
青葉「うるさい」
圭子「若い時のお父さんにそっくりだわ」
泰介「え、似てます?」
新田「俺の若い時にも似てるわ」
圭子「ほれ、目元とかそっくり」
青葉「ちょっとやめてよ」
柊花「なんか小綺麗にしてると思ったら、そうゆうことね」
新田「通りで青葉ちゃん綺麗になったわけだ」
    海斗、青葉が中指にしてる指輪に気が付く。
海斗「お姉ちゃん」
青葉「なぁに?」
    青葉の中指にしている指輪を外しながら、
海斗「中指に指輪をつけると仲良い人と仲悪くなって、仲悪い人と仲良くな
 るから指輪はここにするんだよ」
    青葉の左薬指にはめられた指輪。
    満足そうな海斗の表情。
泰介「あ! それは俺の役目!」
一同「え?」
泰介「えっと、そのー。今回、こちらに伺ったのは……」
青葉「私、泰介と結婚する」
圭子「……」
柊花「おめでとう」
青葉「うん」
海斗「ぼくもケッコンしたい!」
新田「海斗、結婚ってのは難しいんだぞ」
海斗「やだ、ケッコンする!」
青葉「海斗くん、さっきの指輪の話って、誰から聞いたの?」
海斗「おじいちゃん!」
    新田を見る一同。
新田「……あれだ、昔誰かがそんなこと言ってたんだよ」
柊花「適当なことばっかり教えて」
新田「へへっ」
    一同が笑っている中、海斗は浮かない顔をしている。
海斗「……」
青葉「海斗くん、やっぱり私と結婚する?」
泰介「えっ」
柊花「ちょっと待って、海斗は柊花ちゃんと結婚するんだもんね?」
海斗「ふふ、えらべな〜い」
柊花「え! ちょっと海斗!」
泰介「いいか、男としてそれは贅沢だぞ。青葉お姉ちゃんを幸せにするのは
 俺なんだから」
柊花「さらっと惚気るのやめてや」
泰介「あっ、すみません……」
圭子「泰介くん」
泰介「はい」
圭子「遠いところまでありがとうね」
泰介「いえ」
圭子「そうだ。美味しいスイカあるから食べないかい?」
泰介「いいんですか! ぜひ頂きます!」
圭子「荷物は奥の部屋に置いちゃって大丈夫だから」
    家の中に入っていく圭子と泰介。
柊花「あれ?」
新田「やっと来たか」
    目の前に止まる一台の車。
    車から降りてくるのは麻実である。
    深々とお辞儀をする。
麻実「……海斗、待たせてごめんね」
海斗「ううん」
    麻実に近付く柊花。
柊花「次、同じような思いを海斗にさせたら」
麻実「きっぱり別れてきました」
柊花「……」
麻実「それに向こうのアパートも解約してきました」
柊花「え?」
麻実「今日から父と一緒にここで暮らします」
柊花「……」
麻実「だから」
柊花「?」
麻実「これからも海斗と一緒に遊んでもらえませんか?」
柊花「……言われなくても。海斗は私と結婚するんだもんね〜?」
    嬉しそうに柊花に抱きつく海斗。
新田「騒がしくなるわ」
青葉「新田さん、嬉しいくせに」
柊花「何飲む?」
麻実「えっと、じゃあ」
    より一層にぎやかになる池田家の駐車場。

◯同・圭子の部屋(昼)
    外から楽しそうな声が聞こえている。
    青葉が破いた写真がセロテープで補修され、飾ってある。

◯タイトル
 T『魚とみず』
                      (了)
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あとがき

ここまで読んで頂き、ありがとうございます。
私の祖父母が函館に住んでおり、小さい頃からよく遊びに行っていました。
函館でしか味わえない景色や時間がとても心地よくて大好きな街です。
またいつか函館を題材に書けたらなとぼんやり思っています。

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