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JAEAの先輩職員をご紹介!(研究職)

山口 瑛子
システム計算科学センター AI・DX基盤技術開発室

2019年4月に入社。システム計算科学センター シミュレーション技術開発室(2024年4月よりAI・DX基盤技術開発室)にて分子シミュレーションを用いた放射性核種の環境動態解明の研究に従事。

研究時の様子

JAEAに入社したきっかけ

私が高校生の時に、レアアース危機や福島第一原子力発電所の事故がありました。大学では、これらに関連した研究を行いたいと思っていたところ、レアアース資源にも放射性セシウムの挙動にも「粘土鉱物」が重要であることを知り、粘土鉱物の研究を始めました。研究を進める中で、粘土鉱物のシミュレーション研究がJAEAで行われていることを知り、夏季休暇実習生などでお世話になるうち、JAEAに就職して研究をしたいと思うようになりました。

研究内容:分子レベルの情報から地球を読み解く

私の研究では、マクロな環境挙動をミクロな化学反応に基づいて理解することを目指しています。有害となる元素が環境中でどう動くかを理解することで、環境汚染の防止や汚染されてしまった環境を健全な状態に回復させることに繋がります。また、資源となる元素についても、その動きを理解することで、資源探査や採掘をより効率的に行うことができるようになります。
そして、これらの「元素の動き」を理解するには、どのような化学反応が影響しているのかを調べることが重要です。例えば吸着反応や酸化・還元反応など、地球上では様々な化学反応が起きていますが、「どの反応がどのように起き、その結果、着目している元素がどう動いているか」を明らかにすることで、その動きを詳細に理解し、さらにその知見を予測に役立てることができるようになります。
これまでの研究では、土壌の表層部におけるセシウムやラジウムといった元素の動きを明らかにすることを目指しました。分子レベルの情報を得られる、X線吸収微細構造(XAFS)法という実験と、スーパーコンピューターによる高精度な第一原理計算を実施したところ、環境中で発生する粘土鉱物への吸着反応について重要な知見を得ることができ、海外学術雑誌への論文出版やプレス発表を行いました。
研究のやりがいは、研究成果を論文として残せること、また研究者との議論を通して研究を発展させられることにあります。先人の残した論文によって重要な知見を得ることも多く、こういった人類の発見の積み重ねに寄与できることを面白いと感じています。

粘土鉱物の研究概要

JAEAに入社して感じたこと

JAEAは大きな組織で、予想以上に多くの分野の研究が進められていました。入社後に多くの研究者の方と知り合うことで自分自身の視野も広がりました。また、裁量労働制やテレワークなど様々な制度が充実しており、働きやすい環境であると感じています。

学生時代の専攻と今の業務との関わり

学生時代の専攻は理学・地球惑星科学であり、今の研究テーマは当時の研究の延長線上にあります。ただし、学生時代は実験によって研究を進めていたのに対し、今は実験だけでなく、分子シミュレーションも用いて未知の課題を解明することに取り組んでいます。実験とシミュレーションの間には大きな隔たりがあるので、特に入社直後はわからないことだらけで、戸惑うこともありました。しかし、実験とシミュレーションの両面から見ることで、より正確で詳細な知見を得ることができると感じています。

学会発表の様子

研究職の就職活動

就職活動では民間就職を視野に入れていた時期もあり、民間企業のインターンシップに応募したこともありました。JAEAに関しては、修士の時に夏季休暇実習生や学生実習生の制度を利用させていただき、現在所属している柏のシステム計算科学センターや東海村の先端基礎研究センターなどで研究させていただいたことが大きなきっかけとなりました。JAEAでは様々な学生受入制度がありますので、ぜひご活用いただくと良いと思います。