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『君には届かない』(日本/テレビドラマ/2023)

『君となら恋をしてみても』と同時並行で見た、こちらも高校生BL。
幼なじみのヤマトとカケル。ヤマトは眉目秀麗で頭脳明晰、女子の憧れの的。性格はあまり社交的な方ではなくとっつきにくい雰囲気だが、昔からカケルには心を開いていてずっと仲良く付き合ってきた。カケルは明るくて小動物のような可愛さのある、特に目立つ存在でもないどこにでもいる普通の高校生男子(という設定)。ヤマトはそんなカケルに恋心を抱いている。その気持ちを伝えたいけど伝えられない・・・というラブストーリー。『君には届かない』というタイトルだが、私には2話くらいからかなりヤマトの想いはカケルに届いていたように感じた。やはりドラマは時間がないからだろうか。画面を見ながら「と、届いてるやん・・・」という心の声が漏れてしまった。

ヤマト役に前田拳太郎、カケル役にダンスボーカルグループ超特急の柏木悠。二人の見た目はきれいにまとまっていてわるくなかった。
前田拳太郎は映画やドラマでも見たことがあり、何かをうちに秘めたようなミステリアスな雰囲気を持っているので、それが内向的なヤマト役に合っていた気がする。
一方柏木悠は、身長も前田拳太郎よりかなり低くて小柄、顔は童顔で毒気がなく、表情もくるくると変わり、小動物のような愛くるしさがあった。ストーリー全体的には目新しさはなったが、毒々しさがないせいか、何か昔のアイドル学園ドラマのような懐かしい雰囲気も感じた。

今の世の中で”BL”と呼ばれるようなジャンルのものに私が出会って、同じようにハマった友人達と某雑誌を見ながらキャーキャー騒いでいた10代の頃は、きっとこういうお話が大好きだったと思う。見た目も頭もいい優等生の恋の相手は平凡で愛嬌のある同級生。お互いなんとなく気付いているけど、相手のことを思いやるが故に気持ちを言い出せない(その割に時々大胆な行動に出てしまうのがちょっと笑える)。周りには言い寄ってくる女子はたくさんいるのに、脇目も振らずお互いに惹かれ合うboys。もういい加減気づいてくれ〜と視聴者をヤキモキさせるすれ違いをいくつも乗りこえ、最後は二人で仲良くハッピーエンドで見つめあってにっこり手をつなぐ。キスをしてもいやらしさはなく、主人公の二人は美しく可愛く、周りの友人たちも理解があって二人をあたたかく見守って応援してくれる。
もし10代だった当時に見ていたら、毎週学校でヤマトとタケルの言動にツッコミを入れつつ友達と大盛り上がりだっただろう。うちに秘めた恋心が時々爆発して度々大胆な行動に出てしまう割には”好き”という告白はできず、”言ってない”から”伝わってない”と思い込んでいるヤマトがカケルのことで悶々と悩む姿はツッコミどころ満載。一方早々にヤマトの気持ちに勘付いてドギマギジタバタするカケルは可愛いし、周りの友達男子の付かず離れずな言動も彼らの容姿もいいバランス。恋の当て馬女子高生や妹など女子達は絶妙に存在感が薄く、二人の恋路を邪魔するどころかその背中を押していた。

正直いろいろとBLドラマを見てきた方にはかなり物足りないかもしれない。もし私が誰かにきかれたら、同じ高校生モノならば『君となら恋をしてみても』の方が個人的にはおすすめだと答えるだろ。
ただ、このドラマには、”典型的””正統派””定番”みたいな言葉がふっとおもいだされるほどの安定感があった。BLをまだよく知らないけど興味があるという人にもし尋ねられたら、あまりびっくりしないで安心してみられる作品として紹介できるような手堅さや清潔感があった。
たくさんいろんなBLドラマを見てきたように思うけれど、実は最近この手の危なげないストーリーはあまり見ていなかったのかもしれないな、などとも感じた。

今の私にはあまりにも可愛くて甘すぎるストーリーで、正直よくも悪くもあまり心は動かされなかったが、素敵な人気若手俳優たちによるBLドラマなど望むべくもなかったあの頃のまだ10代だった私に見てほしいと思うような、ピュアで可愛いお話だった。