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『オールドファッションカップケーキ』を見終わって(日本/テレビドラマ/2022)

私の好きなものが、たくさん詰まっていた。
スーツを着た大人の二人、相手を想うからこそ伝えられない恋心、失うくらいなら今の関係のまま隣にいられるだけでいいという切ない気持ち、抑えきれなかった告白、その告白に戸惑う恋の相手、もう一度以前と同じ何でもない日常に戻ってせめて近くにいたいという寂しい願い、そして恋の相手の決断・・・。
全5話は短かったけれど、それもよかった。

野末さんは、おそらく演じていた武田さんのもともとの雰囲気もあって(制作発表の動画をみたらちょっと天然な感じの可愛い人だった)、ふんわりと可愛いけど甘すぎて煩わしいほどではなく、どことなく脱力感が漂い、言葉遣いなどが時々妙におじさんぽかったりして、独特だった。こういう設定の人物のBLは見たことがなかったので、新鮮だった。

野末さんを愛する外川は、会社ではテキパキ仕事をこなすクールビューティーな部下で、野末さんに対してはちょっと世話焼き。まぁ、これも野末さんへの恋心のなせる技だったわけだけど、演じていた木村さんの端正な顔立ちや引き締まった雰囲気が、野末さんのふんわりキュートとのコントラストでより引き立っていた。隙のなさそうな感じでありながら、食べ方がハムスターみたいに詰め込み食べだったり、合コンで女性と話す野末さんを見てやけになって飲みすぎたり、クールに見えて可愛いところがある青年だった。

4話と5話は格別な盛り上がりがあった。
4話で野末さんが帰ろうとするのを引き止めて外川が告白するシーンは、緊迫感、切なさ、焦燥感、艶っぽさなど色々なものが絡み合って、胸がキュンというより、脳にジンときた。
あのキスシーンの、外川が野末さんの口元を指で触れて、口に指をさし挟んだのは演出?それともその場で生まれた演技?そんな状態のまま野末さんが発した「外川、ちょっと待って・・・。酔っ払ってる・・・?」は危険だった。声もいい方も呼吸も全部。見ていた私は一瞬呼吸を忘れた。久しぶりに大人っぽくて切なくて艶やかなシーンを見た。

5話では、野末さんのなかで自分の気持ちがはっきりして迷いがなくなり、外川にその気持ちを伝えた。走っていた野末さん、カッコよかった。筋肉はなくても、脚には自信あり?そういえば昔、誰かも告白のために走ってたわね・・・。あの可愛い彼を思い出した。

そして野末さんからのすごくストレートな愛の告白。外川がその告白を信じられずに否定的なことを言っても、優しくもきっぱりと説き伏せたあたりはさすが年上。可愛い風でも伊達に10年長く生きてはいなかった。

野末さんの気持ちをやっと受け入れた外川が野末さんを抱きしめて、改めて自分の気持ちを何度も伝えた時、顔が見えなくて頭のシルエットだけの野末さんが、外川が一言いうたびに外川の腕の中で「うんうん」と言いながら頭もちょこちょこ頷いていたのが妙に可愛かったなぁ。あれは台本にあったのかしら。

素敵な作品をみて、時間はかなり経ったのにまだ気持ちが落ち着いていない。全然魅力をうまく書けないのがもどかしい。
とにかくまた一つ大好きな作品に出会えたことは確かだ。

この作品をを見ていたら、なんだか『チェリまほ』もまた見直したくなってきた。
どちらも私の好きなものがたくさん詰まっているから。





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